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ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
16/21

15. 14才のはなし

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 これはいまから、3ねんほどまえはなし。そしてここは、わたしの・・・ふん。



 平日へいじつ昼過ひるすぎ。のんびりするわたし

「・・・アンタもすっかり、大人おとなしくなったわね」

 いえ玄関先げんかんさきで。犬小屋いぬごやなかっころがるわたしと、わたしをじっとている女性じょせい犬小屋いぬごやまえでしゃがんでいるこのひとを、わたし母親ははおやんではいる。

「もう14さいなんだろ?人間にんげんでいえばおばあちゃんの年齢ねんれいだから・・・って」

 ――ガルルルル。おとこにらみつける。

「・・・あのさぁ、だからどうしてぼくには、そんな態度たいどなの?」

 わたしばあさんなのはみとめる。年齢ねんれいもそうだけど、ここ最近さいきんむかしくらべて、めっきり体力たいりょくちたからな。むしろいままでが元気げんきすぎたのかもしれないけれど。

 ・・・『あるじ』がなにもかもをあきらめてからは、トレーニングをする必要ひつようくなったから。いまわたしにはもう、だれかにみついたりするきないよ。

「うーん・・・ねぇ、だから仲良なかよくしようよ?」

 ふん。できるだけ不機嫌ふきげんこえしてやる。わたしなにがあっても、おまえを父親ちちおやだとはおもわない。おまえなんかを家族かぞくだとはおもわないからな。

「まあ、このはもともとアサミにしかなつかなかったからねぇ。唯一ゆいいつ例外れいがいはアサミの彼氏かれしぐらいかしら?本人ほんにんいわく、ってはいないらしいけど」

 うん、それだけは同意どういする。だれからても、アレってカップルだよな?

「・・・ただいま」

 そしてうわさをすればなんとやら。おかえり、『あるじ』。


 『あるじ』は学校がっこうがえりなので、制服せいふく姿すがた。それとには学校用がっこうようのカバン。

「・・・あれ?アサミちゃん、ずいぶんはやいね。部活ぶかつはどうしたの?」

 『あるじ』は中学生ちゅうがくせいだから、学校がっこうでは勉強べんきょうとはべつに、部活ぶかつだとかいうものをやっていた。・・・すこまえ、まではな。

「えっ、ってなかったかな?とっくのまえめたよ?」

「えっ・・・、ハアッ!?」

 おおう、母親ははおやよ。なんだそのマヌケなこえは。だけど『あるじ』は何事なにごとかったかのように、わたしのキャリーバッグを用意よういしている。

「ちょっとアサミ!?どういうことなのよ!?」

 よいしょっと。くさりはずしてもらって、キャリーバッグにはいる。

「どうしてってくれなかったの!?アンタって部活ぶかつでは一番いちばん活躍かつやくしてるって、近所きんじょひとってたのに・・・ねぇ、どうしてってくれなかったの?」

「だって。いえかえっても、わたし1人(ひとり)だけだもん」

 ・・・どうした?母親ははおや父親ちちおやも、なにってみろよ。

 そりゃあ、馬鹿ばか親共おやどもらないよな。かるわけがないよな。むすめ1人(ひとり)いえいたまま。夫婦ふうふ夕方ゆうがたからかけたり、旅行りょこうったりで。こうやって『あるじ』とはなすのも数日すうじつぶりというクソおやっぷりよ。

 ・・・そもそも。むすめ活躍かつやくを、本人ほんにんからではなく、ご近所きんじょからいているという時点じてんで。むすめとロクにおしゃべりをしていない時点じてんで、わってるんだよ。


 『あるじ』の片手かたてにはキャリーバッグ。もう片手かたてには、いぬ散歩さんぽをするための道具どうぐ服装ふくそう制服せいふくのまま。そして両親りょうしんはポカーンとったままだ。

「ね、ねぇ。今日きょうはせっかくだから、一緒いっしょにどこかにかけない?」

「いつもみたいに2人(ふたり)けば?わたし一緒いっしょだったらジャマになるでしょ?わたしだってもう中学生ちゅうがくせいなんだから、それぐらいはかってるよ」

 『あるじ』は、こえけてきた父親ちちおやようともしない。

「ね、ねぇ、アサミ?なやか、なやみがあるなら、おかあさんに」

なにいよ?・・・しいてえば、むすめほうったらかしにして浮気うわきばっかりする母親ははおやいやだなぁ、っておもってたぐらいかな?もう過去かこはなしになるけどね」

 もちろん、母親ははおやにもわせない。

 ・・・これもまた、『あるじ』のおもき。

 わたしだってもう中学生ちゅうがくせいなんだから、わたし1人(ひとり)でも大丈夫だいじょうぶ。だから2人(ふたり)はやりたいようにやっててよ、と。両親りょうしんう。ただ、それだけ。

「だからわたしも、やりたいようにやるの」

 『あるじ』は、わらっている。表情ひょうじょう、だけは。

 ・・・これでもし、『あるじ』のわれるがままではくて。いやいや夜中よなかにアサミちゃんだけだと心配しんぱいだよ、とったりだとか。もっとまえから、一緒いっしょかけよう、とでもえば、まだゆるしたのかもしれないけれど。

 つまりは。『あるじ』が親達おやたちに、テストをしたんだ。これに正解せいかいしたら、もう過去かこのことはわすれて家族かぞくとしてみとめる、というテストだ。

 ――そして、おまえらは不正解ふせいかいだったから。もう、家族かぞくではいんだよ。


 親達おやたちなにっていたが、『あるじ』は何事なにごとかったかのようにいえる。

 ここ最近さいきんわたしは、気分きぶんによってはあるいたりもするが、こうやってキャリーバッグにはいったまま散歩さんぽをすることも・・・これって散歩さんぽでいいのかな?

「あっ・・・アサミ、ちゃん」

 どうも、オバサマたち。『あるじ』もあたまげている。

「あ、あの、アサミちゃん。あたらしいおとうさんとは、仲良なかよくやれてる?」

 オバサマたちは、おそおそる、といった様子ようすだ。

仲良なかよくもなにも、いっつもおかあさんとあそんでばかりだから、わたしにはかんないよ。浮気うわきしてたときから、ずっとそうだったからね」

「い、いや、アサミちゃん、そんなことをうのは」

「おとうさんはおとうさんで、愛人あいじんきにやってるみたいだし。あぁあ、唯一ゆいいつマトモなのはおにいちゃんだけかぁ。最近さいきん連絡れんらくがないけど、元気げんきかなぁ。それと・・・」

「ご、ごめんなさい。私達わたしたち用事ようじがあるから。じゃあね!」

 オバサマたちは、このからげるようになくなった。

 ・・・すまんな、オバサマたちこまらせてしまって。

「――ふん。そんなてくるな、オバサマどもが」

 オバサマたちは、『あるじ』を心配しんぱいしてくれている。だが、それが『あるじ』にはらない。だからこうして、まずい雰囲気ふんいきにさせたんだ。いまの『あるじ』にはだれ近寄ちかよれんよ。せめてボーイさえいてくれたら・・・ああ、まだ部活中ぶかつちゅうか。


 ・・・となると。やっぱり、わたし頑張がんばらないとダメか。

 ――ガルルルル。

「えっ?ひさしぶりに、トレーニングしたいの?」

 おう。まだまだわかいワンコにはけんよ。

「ふぅん。だけど、ダメ。おまえもそろそろ、としだからね」

 ふぅん。『あるじ』は、わたしけるのがこわい、と。

「――は?」

 人間にんげんとワンコがいかけっこをしたら、ワンコがつにまっているよな。それに『あるじ』は部活ぶかつめたから、体力たいりょくちてるだろうし・・・って。

 どうした?そんなくらかおをして。

「・・・おまえまで、わたしをつかうのは。やめてよ」

 ・・・バレたか。

たりまえでしょ?おまえのことは、なんでもかるんだから」

 それはこっちのセリフだな。『あるじ』のことは、なんでもかるんだぞ?

「・・・そう。だったら、ってくれる?」

 われるまでもい。どこまでもいてくよ。

 ・・・となると。やっぱり、すこしは運動うんどうしたほうがいいかな?もうすこしだけ、長生ながいきしたいんだよ。せめて『あるじ』に、彼氏かれしができるまでは、な。

「やめろ。それ、にしてるんだよ?わたしだっていいかげんに彼氏かれししいけど、やっぱりおにいちゃん以上いじょうおとこはそうそうつからないというか――」



 近所きんじょの、ちいさな公園こうえんにて。ふ、ふひぃ、つかれた。

「・・・おい、アサミ。なにやってんだよ」

 お、おう、ボーイか。・・・ああ、もうこんな時間じかんか。

なに、って。ればかるでしょ?あそんでるのよ」

「かわいそうだろ、こんなに運動うんどうさせるなんて。コイツのとしかんがえろよ」

「・・・わたししつけに。文句もんくでも、あるの?」

いたいたいたいたい、ギブギブギブギブ!」

 あぁあ、まただ。このやりりも、これで何度目なんどめになるのやら。だけどやっぱり『あるじ』には、ボーイがそばにいてくれたほうが――。

アサミは何部にすればよかったの・・・?

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