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ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
12/21

11. 11才のはなし

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 これはいまから、6ねんほどまえはなし。そしてここは、市内しない中心部ちゅうしんぶ



 ふゆの、土曜日どようび昼過ひるすぎ。このまちるのも何度目なんどめだろうか。

大丈夫だいじょうぶさむくはない?」

 うん、それは大丈夫だいじょうぶだ。

 厚着あつぎをしたおんなの、かたげたキャリーバッグからかおして・・・ええと、ここは?そして『あるじ』、どうして電柱でんちゅうかくしているんだ?

「ごめん、しずかにしてて」

 クゥン?いったいなにをしているんだろ?

「――ふむ。おにいちゃんは、男同士おとこどうしでおひるはん、と」

 ん?イサムがいるのか?・・・ああ、すこはなれたところにいるな。あれは高校こうこうのジャージかな?それと何人なんにんか、おなじジャージをおとこがいる。なんだ、だったらコソコソかくれてないでいにけばいいのに。おーいイサ、グムッ!?

しずかに。気付きづかれたら、ダメ」

 く、くちをふさぐのはやめてくれ・・・。

「・・・。」

 そしてなにわずにあるす『あるじ』。コッソリと、気付きづかれないように。もしかしなくても、これってあやしいヤツなのでは?

なにってるの?いもうとなんだから、これぐらいはしていいでしょ?」

 ・・・まあ、『あるじ』がなにかやらかすのはいまはじまったことではないから、なにうつもりはないけれど。無茶むちゃなことだけは、するなよ?


 『あるじ』のおにいちゃんこと、イサムをこっそりいかけて。

 イサムはほか男達おとこたちわかれて、1人(ひとり)になった。もしかして友達ともだち一緒いっしょにいたからはなしかけるのをやめたのか?だったらいまならこえをかけてもいいのでは?

「うーん。それでもいいけど・・・それより、さきに」

 そううと、『あるじ』はイサムからはなれて、べつのところへとあるいて・・・ああなんだ、イサムがらすアパートか。さむいからここでっておくつもりか?

ちがちがう。調しらべたいことがあるの」

 玄関げんかんのドアをけて、おじゃまします。・・・ん?この、におい、は。

「すぐもどるから、ちょっとっててね」

 わたしはいったままのキャリーバッグを玄関げんかんいて、『あるじ』はおく部屋へやへとかう。わたしかおして、クンクンとにおいをいで・・・うん、間違まちがいない。

「おまたせ。・・・らかっているから、出直でなしたほうがいいね」

 『あるじ』の様子ようすは、なにいやなことでもあったのかな?というかんじ。なにがあったのかは、ふかくはかないでおこう。

 そのかわり、わたしからはっておく。以前いぜんから命令めいれいされていたからな。このうちで、こういうにおいに気付きづいたら、すぐにらせるように、って。

 ・・・『あるじ』。イサムや父親ちちおやとはちがだれかが、何度なんどもここを出入でいりりしたような。そんな、においがする。しかもこれは、女性じょせいのにおいだ。おとこではない。

「うん、ってる。よくかったね」

 これぐらいは余裕よゆうけられるよ。・・・それで、どうする?


 アパートをて。適当てきとう公園こうえん時間じかんをつぶす。

 『あるじ』は公園こうえんのベンチにすわって、スマホ片手かたてなにかをやってらっしゃる。もう片手かたてはリードをって、そのさきっぽはわたし首輪くびわけられている。

 わたしはキャリーバッグからて・・・まあ、のんびりしている。ちょっぴりえるけど、普段ふだんから外飼そとがいだからこれくらいは平気へいきだ。ふくなんぞいらん。

 近所きんじょのワンコどもはどいつもこいつもふくている・・・というよりは、ぬしふくせられているが。わたし断固だんことして拒否きょひしている。あれマジできらい。

「――そろそろ、かな。こっか?」

 はいはい。キャリーバッグにはいって、『あるじ』のかたかつがれる。

 そしてふたたびイサムのいえって、インターホンをらす『あるじ』。

「おう、カギはいているから遠慮えんりょせずにはいってくれ」

 ん?今日きょうのイサムは、なんだか気分きぶんがよさそうだな。

「はーい。おジャマするね、おにいちゃん」

 われたとおり、遠慮えんりょなくいえはいる『あるじ』。イサムは部屋へやなか掃除そうじしていたようだ。ようイサム・・・って、どうした?そんなにおどろいちゃって。

「――そっちかよ!?」

 そっち?どういうこと?


 2人(ふたり)仲良なかよくリビングのコタツにはいって。わたしにはいつものように、新聞紙しんぶんしおおめにかれてある。ふあぁあぁ、室内しつないあたたかいなぁ・・・ぐう。

「えっと・・・なんようだ?」

なんよう、ってわれても。ウチにたらダメなの?」

 イサムはるからに不機嫌ふきげんだ。

「あのなぁ。おまえはここじゃないだろ?」

「えー、ここもわたしのおうちだもん。だからいいでしょ?」

 まあ、いつものやりとりだな。あとはとくうことは――。

 ・・・る、か。だれかが、このうちにやってくる。かるんだ。玄関げんかんのドアしでも、ちかづいておとと、においでかる。ほらた、インターホンがった。

 わたしはたまらずがって、玄関げんかんっすぐかう。間違まちがいない、このにおいは玄関げんかんだけでなくリビングにもついている、見知みしらぬおんなのにおいだ。

 ・・・『あるじ』の両親りょうしんは、別居べっきょをしている。離婚りこんはまだしていないが、そうなるのも時間じかん問題もんだいだと『あるじ』はっていた。その理由りゆうの1つは、父親ちちおやには母親ははおや以外いがいの、そういうおんながいるからだ。

 ・・・このにおいのおんなが、そうなんだろ!?こんなのえるにまっている!おいテメェ、どのツラげてこのいえ出入でいりしてやがんだアアッ!?

「イサム、おジャマするね・・・って。これ、は」

 なんだ、ずいぶんわかいな。イサムと同年代どうねんだいぐらいか?服装ふくそうはロングコートにジャージと、まるでスポーツでもやってきたかのようなだ。これだとまるで、イサムのような部活ぶかつわりの学生がくせいみたい・・・。

 って。あれ?と、いうこと、は?

「――いても、いい?」

 ・・・とりあえず、えるのはやめておこう。近所きんじょ迷惑めいわくになるし。


 またリビングにもどって。

「ふふん、おねえちゃんもいぬきなんだね」

「まあ、それなりには?ちなみにこの・・・何才なんさい?」

「11さい。ついでにうと生年せいねん月日がっぴわたしおなじ。だからウチでうようにした、っておかあさんがってた」

 『あるじ』と客人きゃくじんたのしそうにおしゃべりをしているが、いまわたしはそれどころではない。あうううう、こ、このおんな、デキる・・・!

「あ、そうだ。アサミちゃん、ウチのてみる?写真しゃしんだけど」

「ほぉう、ゴールデンレトリバーとはイイ趣味しゅみをしてらっしゃる」

「ふっふっふ、可愛かわいいでしょ?それでね――」

 いまわたしは、客人きゃくじんひざうえせられて、あたま背中せなかやさしくでひゃああうう、ななななにそのうごき、そんなのらないぃ、気持きもすぎるぅ・・・。

「ところで、いまさらだけど。おねえちゃんは、なにしにきたの?」

「えっ。え、ええと、その・・・あ、あはは」

 ――断言だんげんできる。このおんないぬのプロだ。

 これまでいぬっている人間にんげん何人なんにんてきた。というより、わたしいえ近所きんじょは、それなりにいぬっているおたくおおい。わたしおなじく、ちっちゃいワンコがほとんどだが・・・。

 そして近所きんじょのオバサマたちも、それなりにワンコを大事だいじ可愛かわいがってはいるが。そんなのとはワケがちがう。このひとかおていると安心あんしんできる。いぬとのせっかた、というのをかってらっしゃる。このひとになら、さわられてもいいと。素直すなおに、そうおもえる。はじめてったひとなのに、ここまで安心あんしんでき・・・ぐぅ。



「――そろそろわたしはおジャマするね。あとは兄妹きょうだい同士どうしで、ね?」

 新聞紙しんぶんしうえに、やさしくかされる。

「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!?いやかえるのはおまえじゃなくて、っておおい!?そんな足早あしばやかえることはいだろ!?」

 なんだ、いたのかイサム。まあわたしねむいからどうでもいいけど。

「ハァ、どうしよ。ジャマするはなかったのに」

 『あるじ』がなにっている。だけどわたしには・・・。

 えっと?あのおんなは、ここに何度なんど出入でいりしている。それは間違まちがいない。しかもイサムとはそれなりになかがいいようだが――。

 ああ、なるほど。これはつまり、彼女かのじょとかいう・・・ぐぅ。

彼女の名前くらいは出した方がいい・・・?

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