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ワンコはいつも寝てばかり  作者: レゲーパンチ
11/21

10. 9~10才のはなし ②

【『ふゆ童話祭どうわまつり2024』ようつくった連載文章れんさいぶんしょうです】

【この物語ものがたりはフィクションです】

登場とうじょうする人物じんぶつ団体だんたい名称めいしょう架空かくうであり、実在じつざいのものとは関係かんけいありません】

【メスのワンコ視点してんでの物語ものがたりです】

 日本にほんのどこかの、とあるまちにて。

 これはいまから、7~8ねんほどまえはなし。そしてここは、父親ちちおやのアパート。



 父親ちちおやといっても、わたしではなくて。わたしの『あるじ』のおとうさんが、んでいるところ。キャリーバッグにれられて、電車でんしゃって・・・ここにるのも何度目なんどめかなぁ。ちなみにいま休日きゅうじつ午前ごぜんだ。ごろごろごろ。

「よしよし。そこで大人おとなしくしててね?」

 うん。それはいいんだ。

 リビングとばれる部屋へやなかの、そのすみっこに。新聞紙しんぶんしかさねて、ひろげた場所ばしょ。ここがわたし居場所いばしょ。『あるじ』がうには、わたしのようにいえそとわれているワンコを室内しつないに入れるときは、こうするのがマナーなのだとか。

 ついでにうと、あまりウロウロしてはいけない。部屋へやなかよごれたり、わたしゆかちてしまうから。これについては理解りかいはできるので、わたし大人おとなしくしている・・・けど。ええと、その、なんうべきか。

「どうしたの?トイレは、そこのシートでやってね?」

 うん。それもいいんだ。

 わたしっころがっている新聞紙しんぶんしのすぐそばには、またべつのものがひろげられている。それと散歩用さんぽようの、はこびができるみずもある。『あるじ』はこういうところがしっかりしているから信頼しんらいできる・・・けど、その、

「――ふむ。おんながいた様子ようすし、か・・・」

 わたし番犬ばんけんなので、なかにはこういう人間にんげんがいる、というのはっている。だれもいないいえにコッソリはいって、いえなかをウロウロするあやしいヤツ。人間にんげん世界せかいでは、ドロボーだとばれているもの。

 ・・・いまの『あるじ』って。もしかしなくても、ドロボーなのでは?


 このアパートには、2人(ふたり)人間にんげんらしている。

 1人(ひとり)は『あるじ』の父親ちちおや。しかし、やすみの何度なんどもおじゃましているのに、父親ちちおやえることはすくない。仕事しごといそがしいのは相変あいかわらずのようだ。

 それと、もう1人(ひとり)は・・・午前ごぜんにはいない。午後ごごにはいる。あんなヤツなんて、これ以上いじょうはなすことなんてい。

 ・・・そして、いま。このいえには、私達わたしたち以外いがいだれもいない。

「うーん。おにいちゃんの部屋へやも、とくにわりはし、と」

 そんないえなかを、ウロウロして、ウロウロして。どこをどうても、あやしいことをしている小学生しょうがくせいおんな。このわたしの『あるじ』です。

「ねぇ。本当ほんとうに、おんなひとのにおいはいの?」

 いね。それどころか、父親ちちおやのにおいがうすくなっている。

「ふむ。洗濯機せんたくきなかもおにいちゃんのばかりだから・・・やっぱり・・・」

 『あるじ』はなにやらかんがえている。

「まあ、いいや。今日きょうはここまで。ちょっとっててね」

 そううと、『あるじ』はまたウロウロしはじめた。なんとなくだけど、わかる。あちこちをウロウロしてらかしてしまったから、元通もとどおりにしているのだろう。やっぱり『あるじ』は、こういうところはしっかりしている。

「よし、おわり。・・・いい?私達わたしたちは、いまさっき、ここにた」

 はいはい、そういうことにしておこう。だけど『あるじ』、どうせわたしっていることはイサムにはからないのだから、わざわざそんなことをわなくても・・・と、ツッコむのはやめておこう。いつものことだし。


 しばらく、のんびり。『あるじ』は座布団ざぶとんすわって、リビングのなかいてあるちゃぶだい両手りょうてせて、スマホをている。それと部屋へやにはテレビがあって、そこからは見知みしらぬひとこえこえてくる。

 これらはここ最近さいきんになって『あるじ』におしえてもらった。つくづくおもうけど、人間にんげん世界せかいには様々(さまざま)道具どうぐがあるんだなぁ。

「――なんだ。また勝手かってにウチにがってやがるのか」

 ・・・なんかへんなのがはいってきたけど、わたしたフリをする。

「あ、おかえり。いいじゃん、ここはわたしのウチなんだから」

 『あるじ』は、スマホをたままだ。

「あのなぁ、何度なんどっているだろ。おまえのいえはここじゃなくて」

じつ家族かぞくんでいるところなんだから。ここも、わたしいえでしょ?」

 ・・・ためいきをつくイサム。あせくさい。これはたしかジャージだとかいうふくで、『あるじ』もわたし散歩さんぽをするときることがあるものだ。おにいちゃんのおさがりだとかっていたがする。

「ねぇねぇ、おにいちゃんは高校こうこうはどうするの?」

「どうするもなにも、このちかくの高校こうこうにするにまってんだろ。市内しないなんだから。・・・これも何度なんどっているが、おれ実家じっかかえるつもりはない」

「ええぇ・・・だけど、このまえウチにかえってきてたじゃん」

「あれはおふくろ用事ようじがあったからだ。おやのサインが必要ひつようなプリントがあって、だけど親父おやじ遠出とおでしてて・・・ハァ、まったく。ウチの家族かぞくは、どいつもこいつも勝手かってにしてやがる。おれ気持きもちもらないで――」

「ふーん。ところでおにいちゃん、おなかすいた。おひるごはんはなに?」

 ・・・ためいきをつくイサム。これで何度目なんどめだろうか。


 『あるじ』とイサムは、ちゃぶだいはさんですわって・・・あれはチャーハンだとかってたな。それを2人(ふたり)べている。ちなみにわたしもジャーキーをんでいる。これがあるうちはイサムをむつもりはない。

 母親ははおや近所きんじょのオバサマは、わたしのことを老犬ろうけんだとか、もうそろそろとしだからとってやがるが、食欲しょくよくはモリモリあるんだ。『あるじ』のいつけで、毎日まいにちうごまわっているし。運動能力うんどうのうりょくみのワンコよりはうえだとおもっているよ。

「なあ、アサミ。このまえ、アイツからいたんだが・・・」

 イサムのうアイツとは、おそらくはボーイのことだろう。

「おまえ。おふくろのおきゃくさん相手あいてに、なにやってんだよ」

「えっ?・・・あぁ、えっと。どこまで、いたの?」

「ウチの玄関先げんかんさきで、ズボンをズリおろして、人前ひとまえずかしいにあわせた、とはいている。おまえ、いくらお子様こさまだからって、やっていいこととわるいことがあるだろうが。どうしてそんなことをしたんだよ?」

「・・・このに、イジワルしたから。それで、つい」

 イサムはわたしてくる。やめろよ、みつきたくなるだろうが。

「あ、ああ。そうか。そういう理由りゆうなら・・・いやでも、うーん」

 イサムはなにやらかんがえている。またためいきをついてしまった。

 ――本当ほんとうは、イジワルなどされていない。むしろあのおとこは、『あるじ』と仲良なかよくしようとしていた。なにもわるいことはしていない。

 ・・・だけど、そもそも。ウチに勝手かってにおじゃましやがったのが、ゆるせなかったから。ウチに二度にどとジャマすることがいように、ああしてやった。

 わたしあしみついて、そのスキに『あるじ』がズボンをがせて・・・あのおとこ二度にどと、ウチの近所きんじょちかづくことはできないだろうな。



 これが、『あるじ』の作戦さくせん

 まだ『あるじ』が、お子様こさまとしておもわれているいまだからこそ、できることをする。なにらない、子供こどものフリをする。

 子供こどもだからしょうがない、と。大人達おとなたちに、そうおもわせて。もし大人おとなだったらゆるされないようなことでも、ゆるされるようにするために。そういう演技えんぎをしていた。

 ・・・あのころの『あるじ』は、まだ子供こどもだったけど。そういう知恵ちえは、みの大人おとなよりもうえだと、わたしおもっている。

 それでいて。おんなながら、ちから男子だんしよりもつよい。これは幼稚園ようちえんころから、わたし一緒いっしょあそんだり、いかけっこをしてたから、もともとの体力たいりょくがあった、という理由りゆうもあるだろうが・・・小学生しょうがくせいになってからは、な。

 だから、『あるじ』の命令めいれいにはなんにでもしたがった。『あるじ』がもとつづけたもの――両親りょうしんと、あにと、みんな一緒いっしょに、らせるようにするために。

 もうあんな『あるじ』のかおなんてたくない。だからわたしは、できるかぎりのことをした。なにつらくはなかった。『あるじ』のこころ奥底おくそこにあるいかりやかなしみをることのほうが、よっぽどつらかったから。

 ヤンチャ、という言葉ことばではゆるしてはいけない、わるいこともした。ドロボー相手あいてならまだしも、ひとみつくだなんて、あってはいけない。

 ・・・もしかしたら、あなたにも。そういうことを、したかもしれないんだ。



 そんな、あなたが。いまでは研修医けんしゅうい――獣医じゅういとなって。

 わたし最期さいごを、看取みとることになるとはな。

「・・・おねえちゃんは。かって、くれる?」

 病院びょういん一室いっしつで、くずれる『あるじ』と。そのすぐそばに、女性じょせい

「いいのよ。おんなくのは、けっしてずかしいことじゃないんだからね」

 ・・・このひと出会であったのは、6ねんまえか。11さいの、ふゆごろ。

 なつかしいなぁ。『あるじ』の命令めいれいで、あなたに全力ぜんりょくみつくようにわれたときは、どうしようかとおもったよ。どっちの味方みかたをすればいいのか、からなくて。

 ――わたしおもは。ゆめはまだ、わりそうには、ない。

過去に書いたものを、別キャラ視点による別の物語として書き直すのって変かな・・・?

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