ブーム
ある日、議員が殺害された。国会でも居眠りばかりしており、何か仕事をしているようではとてもなかった。犯人はすぐに逮捕された。若い少女だった。動機は世直しだと少女は語った。大々的にメディアは取り上げた。
その後、模倣犯が数人現れた。必ずしも狙いは政治家ではなかったが、世間からよく思われていない人間が標的になっていた。それらの事件は何度も新聞の一面を飾った。
政治家などはイメージが下がることを恐れながら誠実に行動するようになった。
少し、その国は良くなったように見えた。見えてしまったのだ。
陰謀論が唱えられ始めた。当然だ。数度の殺人によって国家が良くなったように見えているのだから、裏に国家があると勘ぐり始める者が居てもおかしくはなかった。
こじつけが始まり、事件はすべて陰謀と結びつけられるようになって行った。
しばらくするとメディアもその陰謀論についての報道を始めた。
それらしい本を出せば売れ、ニュースで取り上げれば視聴率が伸びた。陰謀に無駄にこじつけるだけで良いことが起きるようになった。
ブームというものは過ぎ去っていくものだ。
証拠のない状態は長く続き、すっかり陰謀論は僅かな人間に囁かれるのみとなった。イメージを大切にしたがる思いが睡魔に負ける人間が増えた。
日常がすっかり日常へと戻ったある日、居眠りばかりをしている議員を狙った殺人未遂事件が起こった。
犯人は、昔世直しを理由に殺人事件を起こした少女だった。
その事件は次の日の朝刊に載った。
それだけだった。




