1.入学式
ロックフェスかと見紛うような熱気。
マスコット的な着ぐるみ、悪魔のような格好、と思えば医者のような服装など様々な服装の人々。「想像していた以上に、楽しい学校生活が送れそうだな・・・」
これが、俺、藤田正義が入学した創起学園の入学式後の光景。
入学式は実にエキサイティングだった。
某有名アーティストのライブから始まり、有名社長の感動的なスピーチ。
その後に、いきなり体育館の天井が開いてヘリコプターから降りてきたのはこの学園の理事長である孫大志。
孫理事長は、自己資産8兆円という世界一の大富豪。
情報産業、エネルギー産業、宇宙産業など、ありとあらゆるビジネスを手がけている。
この学園は、そんな彼が未来の起業家を育てるために作ったという側面もある。
度肝を抜かれる入学生の真ん中に降り立ち、マイクを掲げて一言。
「こんにちは皆さん、理事長の孫です。突然ですが質問です。私がなぜこんな登場の仕方をしたかわかりますか?」
もちろん、手を上げて答えるものなどいない。
「うーん、今年の新入生はおとなしいのかな。正解は、この状況でされた質問に答えるものがいるかを確かめるためです。”どんな状況においても自分を貫く人が成功できる”が私のモットーなものでね。はい、そこの君なにか言いたいことがあるのかね?」
孫理事長が手のひらで指した方向を見ると、一人の外国人が手を上げていた。
「レオン・ハートといいます。孫理事長、お言葉ですがこのような状況で質問をすることが成功するために必要なことだと思えません。そのようにいうのであれば、これまで質問ができたことで成功をした人はいたのでしょうか?」
「いい質問だね。えーと、レオンでいいかな?この正解は私にとっての正解であり、君たちにとっての正解ではないということを心してほしい。」
「君たちがこれから挑む、ビジネスという世界は常に弱肉強食。弱いもの、変化に対応できないもの、消費者から必要とされていないものは淘汰されていく。そんな中で必要なのは、自分で問を作り、誰よりも早くその問を解決する力だ。その力こそが世界をよりよくしてくれると私は信じている。君たちのこれからを楽しみにしているよ。今日はこのまま新入生歓迎会だ。大いに楽しんでくれ。以上で入学式を終了する。君たちの未来に栄光あれ。」
颯爽とヘリに乗り込む理事長の背中には会場からあふれんばかりの拍手が送られた。
つられてつい拍手をしてしまう。
やっていることはむちゃくちゃだし、頭ははげかかっているが、かっこいい。
「えーおほん」
いつの間にかステージ上には制服姿の男が立っていた。
「というわけで、ここからは俺たち生徒会が仕切らせてもらうぜ。俺は7年生の神無吹雪。生徒会長だ。新入生諸君、この学園のルールは一つだけ。正当なる対価を。まあこの意味はこれから身にしみるほどわかっていくだろう。今日は君たちを歓迎するためにイベントを用意させてもらった。楽しんでいってくれぇぇぇぇ」
「いぇぇぇぇぇい!!!!!」
あふれんばかりの歓声が上がったかと思えば、凄まじい数の人が入ってきた。
この体育館ことジョブズアリーナは、収容人数最高5万人という超巨大施設。
陸上競技はもちろん、サッカーの試合もできる。
なんとまあ広いところなのだろう。
いつの間にか音楽フェスのような様式へと会場は変わり、ついていけない俺はひとまず後ろ半分に用意されている立食パーティー形式の場所に移動する。
「出されている食べ物も豪華だなぁ・・・」
「正義!!」
名前を呼ばれた気がしたので振り返ってみると、見覚えのあるシルエットがこちらに近づいくるのが見える。
「なんだ。凛かよ。」
「なんだってなによ。この人ごみの中探したんだからね。」
近づいてきての名前は神宮寺 凛。
幼稚園からの幼馴染で、家も隣という腐れ縁だ。
凛の横にはもう一人、女の子が立っていた。
「その横にいる子はどうしたの?」
「紹介するね。この子は牧本 今日子。入学式の席が隣で仲良くなったの。」
「あ・・・あの、こんにちは。牧本です。よろしくお願いします。」
ブラウンのでふわふわの髪、勝気な凛とは対照的な、どこかおどおどとしていいる小動物的な女の子だった。
「これの名前は藤田正義。幼稚園から一緒で家も隣という幼馴染でね、いつも突っ走って暴走するこいつを止める役目だったの。」
「よく言うよ。牧本さん、騙されちゃダメだ。俺はいつも凛の従順なるしもべです。気づいたら手足のように動かされるから気をつけて。高校からようやく離れられると思っていたのに、まさかここまで一緒とはね・・・」
「なによ。その言い方。嫌そうにして。」
「いえ、滅相もございません。凛様。これからもお仕えいたしますのでどうか宜しくお願い致します。」
「わかればよろしい。ってこれじゃ本当に私があんたをこき使っているみたいじゃない!」
二人のやりとりを見て「ふふっ」と吹き出す牧本さん。
「もうなにも笑うことないじゃない。」
そう言いながらもつられて凛と俺も笑ってしまう。
凛と一緒にいると動かされるのは確かだが、自分から動いてしまうというのが正確な表現だ。
責任感が強く、思いやりがあり、困っている人をほっておけない彼女は、いつの間にかリーダーをしていることが多い。
人当たりも良いので誰からも好かれるタイプに思える。
そんな彼女だからこそ、おれのことも放っておけないのだろう。
「キョンキョンはね、同じ学校からこの学園に来た人は誰もいないんだって。」
「へえーそうなのか。まあARTで選ばれた人しかここには入学できないもんな。」
全世界のその年に15歳になる人が受けせられる能力適正テスト。それがART(Ability Reasonable Test)。
これを受けることで、自分にあった仕事はどのようなものかがわかり、その中から学びたいと思えるようなものがある学校を選ぶというのが今の時代の常識だ。
社会には約3万ほどの職業があるが、それを大分類9分類、中分類80分類、小分類379分類、細分類2167分類というくくりに分けられている。
俺たちが通うこの未来創造学園は、ARTで適正ありとみなされた大分類9分類の中でそれぞれ上位0.01%が入学する資格を得ることができる。
「牧本さんは、何科なの?」
「私は、事務的職業科の総務事務員コースです。」
「事務的職業科か・・・すごいなぁ。俺の苦手そうな分野だ。ちなみに俺は管理的職業科の経営者コース。学科の違う知り合いができたのは本当に嬉しいよ。これからよろしくね。」
「は・・・はい。」
「もう、そうやってすぐグイグイ行くんだから。きょんきょんも気がついたら正義に巻き込まれている場合があるから気をつけてね。適度に距離をとることをおすすめするよ。」
「おいおい・・・」
「ちょっとぉ〜そこのヤングボーイ&ガールズ、盛り上がっている?」
いつのまにか丸テーブルの向こう側に、胸が見えるか見えないかまではだけたショッキングピンクのシャツと、真っ白の細身のパンツを履いたお近づきにならない方が良さそうな雰囲気の金髪の男がいた。その横には、モデルかと見紛うような赤のドレスを着た女性も立っている。
「・・・・」
「ちょっとぉ〜若いっていうのにはっきりしないわねぇ。あんたたち名前はなんていうの?」
「あ・・・あの〜お姉・・・いやお兄さん・お姉さまは一体何者ですか?」
「ごめんね。人の名前を聞く前に自分から名乗るべきだよね。あたしは礼奈。そしてこっちの強烈な人が「Culab新宿二丁目」の咲矢さん。実はね、ここに出ている料理は私たちの店のシェフたちが腕をふるって作ったのよ。」
「ちょっと咲子ママってよんで〜」
「そうだったんすね。この料理本当に美味しいです。特にこのエビチリが私は好きです。私は凛っていいます。管理的職業科の一年生です。よろしくお願いします。」
「孫正義です。管理的職業科です。」
「牧本今日子です。事務的職業科です。よろしくお願いします。」
「あら〜みんなかわいいし、しっかりしてるじゃないのお〜。そんな子達にはサービス。飲んで飲んで」
どこから取り出したのか手には高級そうなワインのボトルが
「すみません、私たち未成年なので飲酒はちょっと・・・」
「あら〜真面目ねぇ。益々気に入ったわ。でも大丈夫。これはぶどうジュース。ノンアルコールよ。はいどうぞ」
またどこからだしたのか、一人一人にワイングラスを手渡してそこにワインしかりジュースを注ぐ。
「では、今日という出会いに。ルネッサーンス!!」
「ルネッサーンス!!」
一昔前に流行ったというのを聞いたことがあるネタで、乾杯。
それにちゃっかり乗っかる凛。
こういうところがさすがだなぁ。と思いながらしぶしぶ乾杯をする俺。
牧本さんは恥ずかしながらも消え入るような声でちゃんと言っていた。律儀な子だなぁ。
「それで、あんた達は入るカンパニーは決めてるの?」
「いえ、まだなんですよ。これから色々見て回って決めようかなぁと。」
未来創造学園は、世間一般で言う高校・大学・大学院までが一緒になっており、9学年で全生徒数が7万人というマンモス学校だ。
カンパニーとは、世間一般で言う会社のことで、公認・非公認で合わせると千個以上のカンパニーがある。そして、学生は一つ以上のカンパニーに所属することが義務付けられている。
普通の高校や大学だと部活やサークルだが、この学園ではカンパニーとして存在し、実際に利益を上げることを目的としているのも特徴だ。
カンパニーは、世の中の一流企業と遜色のないものまで存在し、時価総額が1000億円を超えるという噂があるカンパニーまであるという。
「あら、それなら今度うちにも遊びに来なさいよ。レセプションパーティーもやるから楽しみにしていてね。」
そう言って渡された名刺を見てみると、”HOSPITAS 役員 紅 咲矢”と書かれていた。
「えっ」
「咲子ママってあのHOSPITASの役員なんですか?」
俺たちが驚くのも無理はない。HOSPITASといえば一部上場も果たしている、この学園でも屈指の有名カンパニーだ。
世界に200店舗をもつうどんチェーン”さぬき魂”、レジをタブレットでできる”sumartレジ”、食品の移送に革命をもたらした輸送用ケース”新鮮BOX”などなど、飲食を中心に俺でも知っている商品やサービスをやっている。
「あら〜。しってくれているのねぇ、うれしいわ〜。」
「もちろんですよ。さぬき魂が中学校の近くにあったので、学校帰りとかよく行きました。」
「あら、中学校の近くということはあなたたち武蔵野中?あそこは一号店だったから感慨深いわ〜。私も一時期あそこでしこしこうどんをこねていたのよ。もう、ママうれしい。このままあなたたちお持ち帰りしたい〜」
と言いながら凛の手を握る咲子ままもとい咲矢さん。
凛もあながち嫌そうな顔をしていない。
あのHOSPITASの代表から手を握られたらうれしいだろうな。
でも初対面の男にそんなにベタベタされるのはどうなんだろうか。
「こんにちは。君が藤田正義君だよね。」
突然呼びかけられ振り向くと、そこにはジャニーズ系のさわやかイケメンが立っていた。
「はい、僕がそうですけれど。どこかでお会いしましたか?」
「突然声をかけて悪いね。俺は田中昴。Rスペースの代表をやっている7年生だ。よろしく。」
これまた有名人の登場。
Rスペースといえば、「地球の人たちを火星に移住させる」といっている集団だ。
実際にこの間ロケットの打ち上げを成功させたというニュースを見たことがある。
「ちょっと昴〜。私より先に声をかけるなんて嫉妬しちゃうわ〜」
「咲矢、お前新入生相手にいきなり咲子ママで行くとか攻めすぎだろ。」
「なにいってるのよ。こっちが本当のあ・た・し。ありのままのあたしを見て欲しいの。」
「わかった。わかった。また新宿2丁目に遊びにいくからその時はよろしくな。」
「きてくれるのね。さすが昴。あっそうだ!よかったらこのまま新宿2丁目に行かない?もちろん新入生はサービスするわよ。」
「いいんですか?ぜひ私は行きたいです。正義はどうする?」
「俺もいってもいいかな」
「私も・・・」
「じゃあ、きまりね。さっそく行きましょう!!」
咲夜さんに連れられてスタジアムの外にでると、そこには黒塗りのリムジンが待っていた。
運転手のような人がドアを開けてくれる。
中にはいると、そこは車の中とは思えないような空間が広がっていた。
高級そうなソファに、大型の液晶ディスプレイ、そして紫と赤色のライト。テーブルにはシャンパングラスがセットされている。
「私、こんなの乗るの初めてだわ。」
「凛ちゃんのはじめていただいちゃいました〜。10分くらいで着くけど、ひとまずみんなグラスをとってとって。」
そういって流れるような動作でシャンパン風のジュースを注いでくれる。
「それじゃ、改めまして今宵の出会いに・・・かんぱーい!!」
車で談笑すること10分。
この学園は一つの島がそのまま学校になっている。
そして、学校というよりは一つの街みたいだ。
学校の施設などが入っているところを抜けると、ひときわネオンが輝く飲み屋街の雰囲気に。
車は、銀座の高級クラブのような店の前で止まる。
「着いたわね。さあ行きましょう。」
新宿2丁目という店の名前から、場末のスナックを想像していたので度肝を抜かれてしまった。
白色の大理石を基調とした店内は、豪華絢爛かつどこか落ち着く雰囲気がする。
高校生の頃までは地方の田舎で育っていた自分からすると別世界すぎる。
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。ほらくつろいで。あなた、最高級のノンアルコールシャンパンをよろしく。」
咲子ママがまたテキパキと注いでくれ、3度目の乾杯。
「それで、凛ちゃん、今日子ちゃん、正義君はなんでこの学園に入ったの?」
「いろいろな理由があるけれど、一番の理由は正義が行くからです。正義と私は生まれた頃からの腐れ縁で、生まれた日も同じで家も近所。幼稚園〜中学校までずっと一緒でした。いつも暴走する正義を助けるのが私の役目です。だから高校も同じところに来ました。」
「ひゅ〜。やけるわね。あんたたち付き合っているの?」
「そ、そんなんじゃありません!!」
「あら〜怪しい。じゃあ、私にもチャンスはあるってことね。」
「咲矢、お前はどっちを狙っているんだよ・・・」
「あら〜、両方に決まっているじゃない。だってこんなんいかわいいんだもん。」
「私は・・・親に勧められたからです。実家が会社をやっていて、将来そこで働けたらいいいなと考えていました。でも私は社長という器ではないし、何かみんなの役に立てるようなスキルを持てればと思っていました。そんなときに、この未来創造学園に合格しました。私なんかがついていけるのかと迷ったんですけれでも、せっかくの機会だから行っておいでと両親に背中を押されたので行くことにしました。」
「あら〜。親孝行娘ねぇ。あなたは私の娘にしちゃいたいわ。」
そういって牧本さんに抱きつく咲子ママ。牧本さんはどうすればいいのかわからない様子で顔を赤くしている。冷静にそれを引き剥がす礼奈さん。
「俺は・・・世界的に有名な起業家になるためです。小学1年生のころ聞いたある人のスピーチが忘れられなくて、その人みたいに世の中を変えられるような人間になりたいと思ってここにきました。」
「わぁ、ドリーマーね。そういうの好きよ。」
「新入生って眩しいですね。」
「なるほど。正義君はもうここでどういうことをやりたいというのはあるのかい?」
「いえ、それをまだ探し中です。」
「ふーん。高校のときは何かビジネスはやっていたのかい?」
「ビジネスというほどのことなのかはわかりませんが、お祭りで屋台をやったり、おじいちゃんおばあちゃん家への弁当宅配サービスをやったり、塾に通えない子供たちへの勉強教室をやったりなど、やってみたいなと思ったことはなんでもしていましたね。」
「その年でいろいろ手がけてきたんだね。」
「昴さん、ほとんど正義が突っ走って、それを実現するために私が助けるというパターンでしたからね。騙されちゃダメですよ。」
「凛ちゃんも凄いね。いろいろやってみてどうだった?」
「どれも楽しかったですね。屋台でも工夫すれば一回のお祭りで50万円の利益が得られるし、おじいちゃんおばあちゃんへの弁当宅配サービスは1万人の人に使ってもらえました。塾に通えない子供たちへの勉強教室では、子供たちの成長する姿を見ることができたのが嬉しかったですね。」
「すごくいいね。それで、本題になるんだけども、君、宇宙産業が世界を変えるって知ってる?」
「知らないですね・・・。そもそも宇宙にあまり興味がないかもです。宇宙飛行士の漫画を読んで面白そうだなと思ったくらいですね。」
「そうか。君が本当に世界的に有名な起業家になりたいのなら、これからは宇宙だぞ。」
そういって、昴さんは宇宙ビジネスの魅力を語ってくれた。まとめるとこうだ。
宇宙ビジネスの市場規模は現時点で38兆円。種類は「宇宙利用」と「宇宙基盤」に分かれている。宇宙利用とはその名の通り宇宙を利用して何かをすること。例えば人口衛星の位置情報サービス。これによって、スマートフォンやカーナビなどでいつでも好きなところまで迷わずに行くことができるようになった。それに対して宇宙基盤サービスは人工衛星を打ち上げるなどそもそもの宇宙利用のために必要なインフラを整えるために必要なものだ。宇宙分野への民間参入はまだ始まったばかりであり、宇宙をつかうからこそできることはまだまだ可能性に満ち溢れている。今後、宇宙をビジネスとして利用することが当たり前になる社会になることで、地球で生きる私たちの生活もより豊かになってくる。そしてそれだけじゃない。「宇宙や他の星に行く。子供のころに憧れていた世界を大人になった自分の力で作ることが夢だ」そう熱く語ってくれた。
その話を聞くと、宇宙には何か大きな可能性がある気がしてくるし、やってみたくなる。ただ、実際にそれがどれくらい人々の生活を変えるのかという点があまりピンとこない。
「昴さんは、これから宇宙産業によってどういうことが可能になると考えているんですか?」
「50年後には100万人が火星に住めるようになると考えている。俺がそれを実現させる。」
なんてぶっ飛んだ話だろう。まさにSFの話ではないか。空気も水もない。そんな星に人類が住めるようになる日がくる。しかも30年後に。今目の前にいるこの人はそう言い切った。
「なぜ、俺を誘ったんですか?」
「君のことを面白いと思ったからだ。最初に興味を持ったのは、君が経営者コースだからという理由だけど、その後話してみてこれまでにも自ら社会課題を解決しようと考え、行動してきているのがわかった。口だけでなく、行動に移せる人間はそういない。」
「過大評価しすぎですよ。俺以上の人はこの学園にはもっといると思います。」
「君以上とはなにを基準にいっているの?」
礼奈さんからの質問に口をつぐむ俺・・・
「人間に上も下もないんじゃないかな。年齢も、能力も、才能も関係ない。君のことをこれだけ買ってくれる人がいるんだからそれは素直に受け止めてもいいんじゃないかな。」
「ありがとうございます・・・」
「まあ、いきなり来いと言っても難しいだろう。よかったら明日うちの事務所に来ないか?いろいろ考えて決めといい。ただ、これだけは言っておこう。君は将来的に何か世界を変えるようなことができるよ。俺の直感。」
「そうだと嬉しいです。ありがとうございます。明日遊びにいきますね。」
その後は咲子ママのこれまでの恋愛遍歴などを聞き、大いに盛り上がった。やはり大人は一味もふた味も違うな。
寮に帰ると、すでに時間は深夜0時。
「今日はいろいろあったなぁ。やっぱりこの学園には凄い人が沢山いる。そんな人たちに負けないよう明日から頑張ろう。」
そんなことを思いながら泥のように眠った。