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聖女なのに、男です。  作者: 清水柚木
公国王選挙編
113/204

第113話 ルーベンス到着&公国王フェランの策略(2)

アーマンディとルーベンスはシェリルの机にある書類を整理している。整理しながらルーベンスはひとつひとつ丁寧にアーマンディに教えている。


「だからね、これが去年のこの月の聖女の館の決算書になるんだよ。そうすると一番高くついてるのは人件費でしょう?これは従業員の給料なんだよ。意外かも知れないけどアジタート様の時代は少数で聖女の館を回していたんだ。でも金額は多いよね。つまりそれだけ良い給金をだしてたことになるんだ。次に多いのが消耗品費でしょう?それでこれが何かな〜って見るのがこれ。月締めの決算書の明細。これを見るとアジタート様のドレスや服飾品だということが分かるよね?アジタート様は一度着たドレスは着ないって聞いているから、毎月これだけ買っていたことになるね」


「そうなんだね。えっと、ということは僕はアジタート様に比べて、消耗品費を殆ど使ってないね。ドレスも何も買ってないし、なんだか必要最低限なものしか買ってないんだね」


「そうだね、アディ兄はヴルカンから送られたドレスを着回しているからね。でもそうなると、元々聖女の館御用達ってことで商売をしていた中央都市の衣料品店がお金が入らなくなって困るよね?だからシェリル姉は、代わりに聖騎士団とかの衣装を発注したり、メイドの衣装を発注したりしてるんだよ」


「シェリルが発注するの?」


「こういう細いかことに気を配る執事が聖女の館にはいないからね。ほら、ここに注文書があるでしょ?シェリル姉が書いて、シェリル姉がサインをしてるよ」


アーマンディはルーベンスから一枚の書類をもらう。確かに全てシェリルの字だ。そしてその請求はヴルカン公爵家に行くことになっている。


「どうしてヴルカン公爵家に?」


「アディ兄が服を買ってないのに、従業員の衣装ばかり揃えるのもおかしいでしょう?アディ兄はシェリル姉にドレスいる?とか、何かいる?って聞かれてない?」


「き……聞かれてるけど、欲しい物はないって答えてた……」


「やっぱり……だからシェリル姉はヴルカン公爵家のお金で、アディ兄のドレスや装飾品だけでなく、騎士服だって買ってるんだよ。その結果、見て!これが聖女の館の運営に当てられている予算!そしてこれがこれまでに使ったお金!」


ルーベンスが掲げた2枚の書類を見ると、予算を全く使ってないことが良く分かる。


「えっと、僕はつまりヴルカン公爵家に負担をかけているんだね……」


「そこが問題じゃないんだよ。大した額じゃないし、思ったより使ってくれないって父上がぼやいていたくらいだから、それは良いの。そもそも、聖女の館の運営費は後見人である公爵家が出すことになってるからね。今の問題は聖女の館の運営費として、国に提出した予算を使ってないことなんだよ」


「え?じゃあなにが違うの?」


「予算は国に提出してる運営費だから、これを使ってないとヴルカンの怠慢ってことになっちゃうんだ。今は良いけどこのままだと決算の時に、お金つかえーって慌てることになっちゃう。だからどんどん使わないと!」


「そ……そんな、だってギネの家も作ってもらったし、それに台所だって……」


「それは聖女の館の予算から出てるよ。ほら……」


アーマンディはルーベンスが示す明細書を見る。確かに予算から出ている。だけど年間の予算から見るとわずかな金額だと分かる。


「あ……本当だ。じゃあ、僕が望んだことは聖女の館の費用から出てるんだ」


「これを見るとそうだね。シェリル姉はそれを基準に仕分けているんだね。相変わらずどんぶりなんだから。これだと後々に困るって分かっても良いはずなのにね。あ、でも一応月次決算書があるから、会計は別にいるみたいだね」


「そうなんだ……じゃあ、もっと欲しい物とか言った方が良いのかな?」


アーマンディの悩む表情を見て、ルーベンスはチャンスとばかりに声をあげる。実は両親やシェリルにアーマンディにもっと金を使わせろと密命をおびているのだ。


「もちろんそうだよ!お金はある程度は使わないと世の中にまわらないからね。ちなみにアディ兄はなにか欲しいものある?」


「欲しいもの……そうだね。えっと、シェリルの色の服がもっと欲しい……かも……アクセサリーも……欲しいって言ったら……ダメ……かな?僕って愛が……深いかな?テシオにも良く愛が深すぎるって言われてたし……うう゛……」


両手で顔を覆いながらアーマンディは恥ずかしくなり、声が段々を出せなくなっていく。


シェリルの色で全てを飾りたいと言ったら、テシオに愛が重くてヒくと言われた。ジェシカは良いわねと言いながら、内心では呆れている。シェリルはありがとうございますと言いながら、少し迷惑そうだ。歓迎してくれるのはノワールだけだ。ルーベンスはどうだろうと思い、指の間からチラリとその顔を覗くと、口がぱっかり開いている。これは呆れているんだろうと思ったら、アーマンディは泣きたくなってくる。


だが、そんなアーマンディの思いとは裏腹に、ルーベンスは不思議そうに覗き込む。


「アディ兄はシェリル姉のどこがそんなに良いの?確かに周りは美人って言うけど、凶暴だよ?俺なんか、良く首根っこ掴まれて、やれ魔獣退治だ、やれ魔物が現れたとか言ってあちこちに連れて行かれたんだよ?」


「どこって……確かに鈍感だし、僕の気持ちなんて分かってくれないし、僕を揶揄ってばかりだし、男の僕より遥に男らしくて困っちゃうけど、それでも好きなんだよ。考えてみればいつだって僕の目はシェリルと追っていた。初めて見た時からずっと、なんて綺麗な人なんだと思っていたよ」


「ふーん、なんか良いね。じゃあさ、弟から提案して良い?」


「提案?なにを?」


「シェリル姉の色を着たいのも分かるけど、それだけじゃなくて、シェリル姉が好きな色とか、好きなデザインの服を着るってのはどう?シェリル姉はああ見えて淡いピンクとか、淡いオレンジ色とかが好きなんだ。でも自分には似合わないから着ないんだよ。でもアディ兄は似合いそうだし、どう?」


「そんなんだ!教えてくれてありがとう、でもそれはヴルカン公爵家の後見を受ける僕が着ても良い色なのかな?」


「そっか……じゃあ今言ったのは私服で買ったら。俺はシェリル姉にどんなドレスが好きか聞いておくから、それをアディ兄がシェリル姉の色で着たら良いんじゃないかな?そしたら聖女の館の予算を使えるよ」


「ルーベンスは頼りになるね。じゃあ僕はもうちょっと欲しいものを考えるね」


「うんうん良いね。欲しいものをどんどん教えてね!」


これで使命のひとつは終わったとルーベンスは安堵する。次はシェリルに言われたことしなければいけない。


「じゃあ次は……アディ兄と俺は、まずこの申請書を処理をしようか」


丁寧に分けられている書類の山のひとつをルーベンスが指さす。


「申請書……」


アーマンディは一番上の書類を取って読む。一番上の書類はマーシーの字で書かれている。


「購入依頼……えっと、包丁セット?」


「はい、却下!」

ルーベンスは書類を棄却と記入した箱に入れて、次の書類を手に取る。


「な……なんで、だってお金は使ったほうが良いんでしょう?」


「だからと言ってなんでも買って良いわけじゃないでしょう?マーシーは新しいものを見つけたらすぐ買おうとするから却下。次は……ああ、これはアディ兄に決めてもらおうかな?」


ルーベンスから書類を受け取りアーマンディはじっと見る。信女長のソニアから上がってきた書類だ。


「稟議書……信女の増員……確かに今はソニアとルージュしかいないんだよね。これはふつうじゃないって聞いてるから承認かな?」


「ちゃんと2枚目見た?」


「2枚目……あ、入館予定者の経歴書と推薦状」


「そう、公爵家の推薦状、ウンディーネとヴルカンだね。あとは大神官様の推薦状もあるね。となると断れないよね?俺でも承認するよ」


「うん、そうだね。そしたらここにサインをするの?」


「そうだよ。俺は聖女の館での権限はないから、サインは書けない。だからアディ兄が書くんだよ」


「うん、分かった……」

アーマンディは承認欄にサインをする。終えたらルーベンスは完了と書かれた箱に書類を入れた。


「ねぇ、ルーベンスが用意したその、棄却と完了と承認の箱って……」


「俺はサインができないから、こうして箱に仕分けるの。そしたらシェリル姉が帰ってからサインができるってわけ。でも今はアディ兄がいるから、どんどんサインしちゃって。なんならマーシーの購入依頼書に棄却って書いてよ」


「分かった……じゃあ、僕の仕事は申請書を処理することだね。ルーベンス、付き合ってくれる?」


「勿論だよ、そっちの方がシェリル姉も助かると思うよ。じゃあ、早速やっていこう!」


そしてふたりは書類と格闘し始めるのだった。

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