2.-目覚め-
陽の光は人に活気を与え、同時に目を眩ませる。
政府公認対十字教会対策組織「聖銅連盟」。
十字教会からの被害者を救う為に結成された同盟。様々な国の軍隊、個人参加など、形はそれぞれ。
そしてそのギルド、任務の依頼を受ける場所、報酬を受け取る場所。
ここは酒場、飯屋が併設されており、常に賑わっており、物静かな街中とは裏腹に喧騒に包まれている。
・・・
ハルヤ
「戻りました〜」
アカツキ
「俺も〜」
受付員
「おお!おかえりぃ〜!今回はどうだった?」
二人は息をそろえて声を発する。
アカツキ/ハルヤ
「疲れたぁ。」
・・・
? ? ?
「おや、浪合隊の。」
アカツキ
「おお、ラルド!お前も終わったとこか?」
ラルド
「そうだ。お前達もか。」
ハルヤ
「ええ。」
アカツキ
「そっちは何の依頼だったんだ?」
ラルド
「巡回だ。」
アカツキ
「巡回?珍しいな。そういうのは紅やホルスさんがやると思ってたんだが。」
ラルド
「それがどうやら、最近謎の動きが増えているらしくてな。」
アカツキ
「謎の...動き?」
ラルド
「謎の組織が区域を取り仕切っているという情報が出てるんだ。これはまだ公には出ていないから内密に頼む。」
アカツキ
「もちろん。」
ハルヤ
「それで、謎の組織ねぇ...」
アカツキ
「んー...。十字教会ならすぐに分かるだろうし、そもそも軟弱な組織であれば聖銅連盟の存在上、即刻消すことができると思うし...。謎、か。」
ラルド
「では、私は早めに失礼するよ。」
アカツキ
「もう行くのか。」
ラルド
「久々に鍛錬を習慣付けようと思ってね。」
アカツキ
「今度手合わせしてやろうか?」
ニヤついた顔で、自慢げに話す。
ラルド
「お前じゃ相手にならん。それよりそっちの盾兵の方に相手になってほしいものだ。」
ハルヤ
「いつでも待ってるよ。」
アカツキ
「ちぇ、ともかくじゃあな!紺莱天の隊長!」
無言で手を掲げる。振り返らず、颯爽と去っていった。
ハルヤ
「私達も戻ろうか。」
アカツキ
「そうだな。」
・・・
擬似的な憲兵である聖銅連盟。
参加の形が自由であるが故、多くの賛同者がいる。
アカツキ達の"浪合隊"、ラルド率いる"紺莱天"も賛同組織の一員である。
その他百を超える団体、個人の戦士などが存在している。
・・・
アカツキ
「戻ったよ〜ん。目は...覚ました?」
リサト
「全然。」
アカツキ
「し、死んでないよな...?」
ハルヤ
「なわけ。」
リサト
「今、ミルダが看病してくれてる。お前の部屋で。」
アカツキ
「俺の部屋で!?」
リサト
「お前が連れてきたんだからお前が面倒を見ろ。」
アカツキ
「ま、まあ、それもそうか...。」
階段を登る、部屋の扉を開ける
アカツキ
「ってお前も寝とるんかい。」
ミルダ
「いやぁ〜ねてないょお〜...」
アカツキ
「腑抜けすぎだろ。お前は自分の部屋で寝てろ。」
ミルダ
「うん〜...」
緑髪の少女を部屋まで運ぶ。
アカツキ
「さて...。」
物静かな部屋に、穏やかな白昼の陽光が差し込む。
・・・
? ? ?
「ん...」
目を開く。
光に慣れず、幾度か目を瞑る。
? ? ?
「こ、ここは...」
アカツキ
「目が覚めたみたいだね。」
驚愕した、畏怖を含んだ瞳を向ける。
? ? ?
「あ、あなたは...」
アカツキ
「あ、自己紹介...俺はイツカ、暁 一華。聖銅連盟所属、浪合隊隊長だ。」
? ? ?
「は、はぁ...。」
アカツキ
「って言っても分かんないか。まあでも、もう大丈夫。十字教会に見つかるまではここで匿ってあげるから。」
? ? ?
「十字...教会?」
アカツキ
「君を捕えてた悪い人のいるところだよ。」
? ? ?
「そうだ!私、捕まってて...それで...ぁあ...」
息を荒げ、声にならない音を上げる。
アカツキ
「だ、大丈夫だよ!ここには君に酷いことをする人はいないから!」
・・・
アカツキ
「それで...君の名前を教えてもらってもいいかな...?」
? ? ?
「私の名前は...アルフェリア...アルフェリア・ラナシエル...です。」
アカツキ
「アルフェリア...綺麗な名前だね。」
アルフェリア
「あ、ありがとう、ございます?」
困惑した様子に、どこか恥じらいがある。
アカツキ
「あ、あぁ、いや、今のは気にしないで...」
くぐもった空気が漂う。
アカツキ
「それで...と、話より先にメシにしよう。みんなにも君のことを知らせないといけないし。」
アルフェリア
「あ、あの...!」
アカツキ
「ん?」
アルフェリア
「少し、考える時間を下さい。」
・・・
アカツキ
「だってさ。」
ガリュード
「...聞いたことないな。」
アカツキ
「そりゃそーだろ。天使だって有名人じゃない限り名前なんて知れてないだろうに。」
ミルダ
「でもあの子、そんなに重要な子なのかな?確かに綺麗な子ではあるけど、特別魔力が凄いみたいな気配はしないんだよねぇ。」
ガリュード
「(いつの間にかいる...)」
ハルヤ
「そう容易に推し量れるものではないだろう。例えば、魔力とは違う力を持ってる...とか。」
リサト
「俺たちとは存在自体が違うモノだ。仮説は幾らでも立つ。」
ミルダ
「ふーむ、確かにねぇ...」
アカツキ
「まあ俺らも彼女にとっては赤の他人だ。下手に詮索するのは良くないだろう。」
ハルヤ
「同意だ。」
ミルダ
「アカってそういうところはちゃんとしてるよね〜」
アカツキ
「んだよそういうところって...」
誰かが階段を降りてくる。
リサト
「んでどうするんだ?このまま匿うわけにはいかないだろう。」
アカツキ
「でも...このままじゃ天回石が無いから帰るにも帰れないだろうしな...。
・・・あ。」
目が合う。紅い瞳と翡翠の瞳、互いに未知のモノを見たかのように。
・・・
アカツキ
「と、いうわけで...うちで匿うことになったアルフェリアさんです。」
ガリュード
「本人の承諾はないけどな。」
アカツキ
「しっー!」
アルフェリア
「あ、あの...」
全員が一人の天使に目を向ける。
アルフェリア
「この度は助けて下さり、ありがとうございます!」
アカツキ
「・・・えぇ...ああ、うん...。」
・・・
ハルヤ
「もっと素直に喜んだら?君が助けたんだろ?」
アカツキ
「ま、まあ、そりゃそうだが...」
ミルダ
「あれ?もしかして照れてる?」
アカツキ
「う、うるさい...」
顔がほんのりと赤みがかる。
リサト
「それでなんだが...」
物憂気に目線を下げる。
リサト
「これからの君の待遇についてだ。」
To be continued.
目覚めた天使、名を「アルフェリア・ラナシエル」。彼女の存在はどの様な意味を持つのか。