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【完結】詰将棋と緋色の恋  作者: フクダ アキヒロ
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~プロローグ~

 車窓から眺めていた川の幅が随分と広くなっている。海に近づいている証拠だ。その海の手前にある小さな港町が、僕の目指している場所だった。港町の外れには神社があり、その神社のお手伝いを一年間、勤める事になっていた。

 僕は今までの人生で、神職に関するような仕事は一度も経験が無いし、ましてや親戚に神社を管理している人物がいるということも無かった。内心は不安が募っていた。けれども、僕は変わらなければならない。怠惰な生活から脱却する、そう誓ったのだから。


 左手を見渡せば山の緑が広々と、辺り一面を覆っていた。右手からは流れる水がザワザワと音をたてている。僕は列車の窓の取手を引き上げて、外の空気を思いっきり吸い込んだ。森が作り出した、新鮮な酸素が肺を潤す。そこには、工場や車から排出された、澱みのようなものは一切無い。この偉大なる大地で、僕はきっと成長できる。湧き上がる油田のように、闘志が体の内側からみなぎっていた。


 やがて、列車は渓谷を抜け、集落を通り越し、遂に終着駅へとたどり着いた。目まぐるしく変わる景色の中で、ただ一つ、澄んだ青空だけは不変のものであった。だが、そんな空の模様とは違い、僕の高揚感は長くは続かなかった。

 感情とは液体だと思う。周りの振動で形を変え、絶えず流動的だ。冷やせば個体になり、一定の形を保てるが、熱せば液体に戻る。いずれにしろ、外的要因で簡単に変化する。そのうえ、掴もうとしてもするりと逃げてしまう。人の心も、簡単に制御できるものではないのかもしれない。


 駅に降り立ち、バスの停留所へと向かう。爽やかな風が吹き、微かな潮の香りを鼻で感じる。外の花壇には、雛菊のような美しい白い花が咲いていて、しばらく見とれていた。そうこうしているうちに、白い車体に赤い線の入ったバス車両がやってきた。僕は行き先表示を何度も確認し、乗車する。一番後ろの広い座席に座り、手に持っていた大きな鞄を横に置く。五人を乗せたところで定刻となり、車道を走りだした。


 どうしてこうも心配性なのだろう。目的の場所にたどり着くまで、いつも心の中がそわそわする。要するに自信が無い。僕は心を落ち着かせるために視線を外へ向けた。窓に映る小さな繁華街の街並みが、やがて広々とした団地へと変わっていく。途中で、赤子を抱えた女性が降りていった。丘を登り始めた所で、放送が流れた。

「次はヒノモリジンジャ入口です」

 僕は窓の隣にあるボタンを押し、降車の意志を示した。停留所で停止し、扉が開く。目の前に見えたのは砂利の敷かれた大きな駐車場だ。そして、道路を超えた反対側には森があり、細い小道が一本通っている。小道には立て札があり、緋の森神社入口と書いてあった。間違いない、ここだ。

 携帯で保存しておいた画像と、何ら変わりのない景色がそこにある。後はこの細い道を登っていけばいい。だが、木々は黒々と生い茂っていて、得体の知れない恐怖感を醸し出していた。僕は勇気を出して足を動かす。


 森を貫く細道は延々と上り坂だった。上空では杉の葉が生い茂り、地上に向けて暗闇を作る。耳を澄ませると微かに鈴虫の鳴き声が聞こえた。空気は清浄だが、かえって疎外感を感じ、三日分の服の入った大きな鞄と、日用品の入った背負い鞄が一段と重い。先の見えない道に途方に暮れていると、突然、突風が吹いた。

 風邪にあおられた葉と葉が衝突しあい、森が騒ぎ始める。木々の影は、死に際の虫の如く、じたばたともがき苦しんでいた。まるで、ここはお前が来る場所ではないと強く訴えかけているようだった。僕は余りの騒音に思わず足を止めてしまった。

 神職の方々と上手くやっていけるのだろうか。とんでもない失敗を再び、起こしてしまうのではないだろうか。心の奥底に隠していたはずの不安が、顔を出し始めた。

 眼鏡を指で押さえながら、後ろを振り向く。あるはずの無い帰り道に、心が傾きそうになった。だが、ここで引き返しては今までの努力は無駄になる。前へ進むしかなかった。今までとは違う場所を必要としていた。僕は歩を速めながら、今までの事を思い返していた。


 それは丁度、一年前の事だった。僕は大学を辞め、近所の居酒屋で、非正規雇用労働者として働いていた。大学生活が順調だったのは一年生の時までだろう。

 二年生に進学すると、当時、猛威を振るっていた新型の感染症は、一定の治まりをみせ、世間では復興の気配が漂っていた。大学も自宅学習中心だった授業方針を変え、生徒を学舎まで通学させる。つまり、以前の形態に戻す事に踏み切った。僕は、新しい生活様式の始まりに大きな希望を持った。しかし、それは簡単に打ち砕かれる。

 僕は大学で孤立していた。どうやら周りは、再開前から、携帯の通信機能を使って、友好関係を構築していたらしい。

 そうして出来た集団は、僕に対して分厚い壁を築いていた。高校時代も友達と言える存在は、たいして居なかったが、学生服という存在が、奇妙な一体感を与えてくれていた気がする。大学の私服制度は、僕の孤独感を助長させていたと思う。


 それから、授業も退屈だった。元々、消去法で選んだ学校であり、そもそも進学という選択肢も、周りがそうしていたから決めた事だった。その決断の裏には、皆と同じように大学に入り、同じように一般企業に務める。大衆に乗り遅れないようにしたい。そういった主流派に属していたいという感情が元になっていた。

 一年生まで保っていた授業に対する情熱は、通学を機に生まれた孤独とともに、急速に冷めていった。もしかしたら、電子機器の映像を見ながら学ぶ、授業形式の方があっていたのかもしれない。大学生活を乗り切るために必要な、能動性が僕には足りなかったのだろう。


 結局、朝に自然と発する眠気に身を任せるようになり、大学を休みがちになっていた。周りが就職活動の準備に取り掛かろうとしているときに、留年は確実のものとなった。退屈な時間をもう一年増やすということは耐えられない。僕は自分から退学を申し出た。

 こうして、僕が描いていた普通の人生という物語は、幕をおろした。


 何故、居酒屋という職種を選んだのかは、今でも不思議に思う。おそらく、大学時代から引きずっていた停滞感を、活気溢れる居酒屋の雰囲気で払拭したい。そんな気持ちがあの頃の僕にはあったはずだ。それに若い男女が織りなす、きらきらとした職場空間に、多少の憧れと嫉妬が僕の中で共存していた。

 実際に、若くて元気があり、顔も可愛い女性店員が居て、僕の心は弾んだ。さらに、年下の男性店員もかっこよく、気さくに、時に丁寧に、僕に業務について教えてくれた。確かに最初は僕も期待感に満ちていた。


 しかし、それも長くは続かなかった。居酒屋で接客をこなすには、僕は余りにも機転が利かなかった。おまけに記憶力も足りなかった。そのことがきっかけで、料理の提供の誤りや、注文の聞き間違いを頻繁に生み出し、周りの仕事を増やしていた。

 周りの空気が悪くなり、僕はお客や店員の目線ばかりを気にしてしまう。面接の時に「お客様は神様だけど、邪神もいるから気をつけな」と軽口をたたいてくれた店長も、怒りの表情しか見せなくなった。気が付くと、僕の口から出る言葉は挨拶と謝罪ばかりになった。初出勤の時に元気を与えてくれた店内の活気は、もはや恐怖でしかない。


 九月の最初の週末だった。店内は混み合っていて、料理の提供が遅れている。僕は尿意を感じ、早く便所に行きたかったが、労働はそんな暇を与えてくれなかった。入り口近くの大広間を通った時、僕は半袖を着た大柄な男に呼び止められた。

「注文したビール、全く来ねーけど。何時間待たせるつもりだぁ、コラ」

「申し訳ありません。今すぐ持ってまいります。」

 声を荒げた男は、髪も眉も無く、右腕には刺青が施されていた。隣と向かいの座席には、髭を生やした、子分のような男も座っている。僕は急いで調理場の先輩に要件を伝えた。

 大広間の反対側では、これまた、注文を待たされた客の怒鳴り声が響く。こうしてみると、僕ら店員は、資本主義に飼われる奴隷のようだった。


 麦酒の入った大きな取手付き容器を持っていく。だが、僕は恐ろしいことに、自分の靴紐がほどけている事に気づいていない。大柄な男が座る席の前まで来た時、僕は誤ってほどけた靴紐を踏んでしまう。体勢を崩し、容器が傾いた。そして、こぼれた麦酒が彼の着ていた半袖を思いっきり汚した。

 男の腹は煮えくり返っていた。僕は胸倉を掴まれ、恐ろしい怒号を浴びせられる。あまりの剣幕に頭が真っ白になり、何を言われたかでさえ覚えていない。店員はみな忙しく、誰も助けには来てくれない。何もかもがどうでもいい気がした。瞬間、気が緩んだ。


 僕は客の目の前で失禁した。


 僕は絶望していた。尿が制服を滴り落ちていく。周囲の客が異変に気付き始める。近くに座っていた男女が慌てて会計の準備をし始めた。尿は強烈な匂いを発し、僕の後ろに座っている学生達のせせら笑いが聞こえる。大柄な男は僕の胸元から手を離し、くせーきたねーと罵りながら、金も払わずに店を出ていった。

 僕は眼鏡の奥底から湧き出る雫を、抑える事は出来なかった。そのまま、膝から崩れ落ち、尿の水溜まりを覆い隠すようにして泣いた。傍から見たら土下座しているように映るだろう。けれども、関係ない。僕はもう誰の顔も見たくなかった。


 暫くして、客足も少なくなってきた頃、僕に向かって、無造作に雑巾が投げつけられた。

「お前、もう邪魔だから何もするな。黙って床でも拭いていろ」

 店長だった。その目はまるで、虫けらを見ているかのようだった。

 翌日、僕は職場を無断欠席した。居酒屋から電話が掛かってくる事は一度も無かった。


 こうして、僕は無職になった。何もかもを失い、身軽になった最初の日々は楽しかった。僕は、折角、時間があるのだからと読みたかった本や、見たかった映画をたくさん借りた。それは、将来にもつながる教養にもなるだろう。だから、時間を失ってしまう怖さも、あまり感じなかった。なにより、誰にも怒られなくて済む。僕は、仕事の失敗に対する重圧からの解放感と、時間を自由に使える事を思いっきり楽しんだ。


 半年程が経ち、公園では、満開の桜が春を散らしていた。僕は、当初の習慣だった読書や映画鑑賞を、一切やらなくなっていた。毎日、太陽が一番空高く昇るころに目が覚めると、自然と私物の電子機器に手が伸びる。電源を入れ、暗号を入力する。最初の画面が映し出されると、僕はその中から、情報通信網に接続できる検索装置の図形を押し、項を開いた。項には一番上に検索窓がある。その中に、脳内で浮かんだ言葉を打ち込んでいく。

「仕事 したくない」

「就職 出来ない」

「人生 失敗」

「世の中 おかしい」

 僕は、検索装置が引っ張りだした人々の意見を眺め、同調する。僕が変な訳ではない。これは、誰もが思っている事だ。僕の心は安心感で満たされた。だが、何故だろう。その安心感は徐々に退屈へと変わっている。すきま風が僕を呼んだ。それは全てではない。お前だけの世界だ。分かっているだろう、と。


 外は茜色に染まり始めていた。僕は退屈をしのぐ為に、卑猥な動画を探し、実にいやらしい目つきで観覧した。僕と同じくらいの歳をした裸の女の子が、親子ほど年の離れたおじさんに、体を支配され、汚され、一緒に堕ちていく。僕は背徳的な光景に快楽を感じ、響き渡る淫らな喘ぎ声に合わせ、射精した。鼻紙の上に出された精液を包んで、ごみ箱に捨てる。そして、激しい後悔と虚脱感に見舞われた。


 街では、同級生たちが企業との面接を終え、背広を身にまといながら帰宅の徒についている頃だろう。僕は何をしていたのか。実体の無い情報と映像に踊らされ、無益に時間を消費しただけだ。一日が終わってしまう。

 焦りを感じて履歴書を準備した。だが、書けない。僕の経歴は高卒で、空白は六カ月にも及んでいる。そして、なにより志望動機というものが一切、浮かんでこなかった。自分を激しく呪った。卑屈な感情が激しく荒波立つ。周りとの距離は、空気が汚れた都会の夜空のように何一つ見えない。そして、暗さだけが生気を蝕み続けていた。僕はこんな事を何度も繰り返した。


 太陽の見えない梅雨の日の夜だった。遂に僕の体に異変が生じた。いつもなら、日付が変わり始めれば自然に眠りにつくが、今日はいっこうにその気配が無い。感情は凍り付いているはずなのに、脳の熱によって精製された鉄槌が、心を砕いていった。そうして、粉々になった得体の知れない幻想に、僕は一晩中、蝕まれ続けた。


 イツマデコノセイカツヲツヅケルノ。イチネン、ジュウネン、イッショウ。アタエラレタセカイヲナガメ、アタエラレタモノヲセッシュシ、ハイセツシ。ユメモコイモカゾクモスベテマボロシ。オトギバナシ。クウソウノナカデ、ノゾムモノイッパイ。カラダハオトロエ、ナニモデキズニシンデイク。

 デモ、ダイジョウブ。リンネテンセイデウマレカワルヨ。ゼンセモキットソウダッタカラ。ソシテ、フタタビ、アタエラレ。ナニモデキズニシニ。アタエラレ。エイエンニ、エイエンニ。クリカエスノ。


 気が付くと朝になっていた。僕はそのまま、駅へと向かう。そこで、無料の求人広告雑誌を手に取り、帰宅して床に就いた。


 目が覚めると、僕の枕元には就職募集の冊子がある。それは昨夜までに無かったものだ。僕はそれを手に取り、ページを開いていく。その中の短期募集の欄に、神職のお手伝いさん募集中と書かれている。履歴書、職歴書一切不要。未経験者大歓迎ときていた。僕の気を楽にさせる条件だ。

 しかし、この場所で働くには余りにも実家から遠すぎた。いくら住み込みとはいえ、未開の地で順応して生活できるとは思えない。諦めた気持ちで目を横にやろうとしたときだった。


 奇妙な数字を見つけた。電話を掛ける際の番号だ。080、ここまでは普通だ。だが、その先は20020802となっている。おかしい、これは自分の西暦の生年月日とまるっきり一緒だ。僕は、少し戸惑った。だが、冷静になり、自問自答をした。僕の居場所は大学では無かったし、居酒屋でもなかった。では、このぬくぬくとした自室だけが正解なのだろうか。違うはずだ。

 そもそも人生は一度きり、いや、この一瞬一瞬でしかない。ずっと、外界から目を背けていても、楽しいと思える瞬間はやってこなかった。浸かっていたぬるま湯はとうに冷め切っている。冷えた体に情熱の勇気が灯った。であるならば、動け。


 僕は携帯電話を手に取り、電話番号を入力し、聞こえてくる声に耳を澄ます。

「お電話、ありがとうございます。緋ノ森神社でございます」

 鼓膜に響いたのは、意外にも女性の声だった。

「お忙しいところ失礼します。カシワ コトブキと申します。」

 それから、僕は広告を見て、そちらの神社で働きたいという趣旨を伝えた。こちらの連絡先と住所、それにこれまでの経緯を聞かれたので正直に答える。大学や居酒屋の事も話した。彼女の対応は優しかった。


「それは、とても辛かったですね」

「大変な思いをなされたのでしょうね」

 久しぶりに聞く、家族以外の声だった。正確には、最近は家族ともほとんど口をきいていないから、誰かと話す事自体、新鮮に感じたかもしれない。とにかく、その音色は温かった。僕の凍り付いていた感情を溶かしていくのには、充分だ。まるで、野山に積もった雪を解かす、春の日差しのようだった。最後に、

「私はあなたと日々を過ごせることを楽しみにしております。一緒に頑張りましょう」

 そうかけられた励ましの声に、よろしくお願いしますと返し、感謝の意を伝え、電話を切る。もしかしたら運命は決められているのかもしれない。しかし、それを選んだのは間違いなく自分の意志だった。僕の人生は動き始めた。


 永遠の暗がりを登っていく。いくら進んでも景色は変わらない。僕は何かとんでもない所に閉じ込められたのでは、と疑心を持ち始めていた。他に選択肢もないため、半ば諦めのような気持ちで足を動かす。

 だが、希望が僅かとなったその時、前方から輝きを放った何者かがこちらに向かってくるのが見えた。凝視すると、大きな牛のような影をしていたが、毛先は金色に光っており、獅子のようでもあった。堂々と進んでいる。不思議な生物を先導にするような形で、日向と日陰の境目が移動してきた。生き物から放たれる光はだんだんと強度を増し、僕は思わず、目を瞑った。


 煌めきが弱くなったのを見計らって目を開ける。先程までいたはずの、牛のような獣は気配すら感じなかった。そのかわりに僕の頭上には、朱色に染まった大きな鳥居が出現していた。まだ杉林の影はあったが、それ以上に強烈な西日が、この山を照りつける。茜色に染まる夕焼けを横目に前へと進んだ。

 二つ目の鳥居が見えてきた。鳥居の奥に影はなく、辺り一面が緋色で照らされていた。鳥居をくぐると、光の靄がかかり視界がぼやける。僕は視力を確認するため、眼鏡を一旦外す。けれども、変化は無い。然すれば、陽炎なのだろうか。

 とにかく、水の中にいるような感覚に陥った。奥の赤く塗られた本殿はまるで竜宮城のようだ。その城から目線を手前にやると、参道に箒を持った女性の後ろ姿が見えた。箒を掃く、ゆったりとした佇まいは、何かの舞を踊っているように映った。僕は亀を助けたりした訳ではない。

 けれども、この湧き出る高揚感は一体何なのだろう。しかし、そんな感覚をよそに、前方から再び強風が吹いた。


 僕は顔の前に腕を交差させ、倒れないように踏ん張る。葉っぱが擦られる音も無く、風の轟だけが耳に届いた。暫くすると風は止み、それと同時に、陽炎も消え去っていた。目の前の景色がはっきりとする。

 白い上衣に浅葱色の袴を着た女性がおもむろに振り返った。漆黒の髪は風になびき、辺りに薄い桃のような、甘い香りを漂わせる。穢れなき純白の顔がこちらを向く。真紅の唇が僅かに開き、彼女は言葉を発した。


カシワ寿コトブキさん、ですよね」

 少し、緊張が感じられたが、確かにあのときの電話口の声音だ。

 僕は息を吸い、はっきりと答える。

「はい、初めましてカシワコトブキと申します。本日から一年間、よろしくお願いします」

 僕の返事に、彼女は薄っすらと笑みを浮かべた。

藤沢フジサワ夏海ナツミと言います。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」


 これが、僕と彼女の最初の出逢いだった。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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また、感想や誤字脱字など間違いの指摘も受け付けています。

宜しくお願い致します。



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