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あるまちの事件  作者: 大久 永里子
第一章 春の日の事件
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第一章 第6話 自警団

 ロウジーがドアを開けると、家に入る前に二人に声を掛けて来た男が、同年輩の男を三人連れて外に立っていた。


「母親捜しどうする?」


「今頼みに行こうと思ってたとこだ。」


 マリアンはちょっと驚いて、玄関先の男達を見やった。


 彼らは玄関に立ったまま、ロウジーが告げる母親の名前と、髪の色、瞳の色、髪型ついて聴き、不審な四人の男達が母子おやこを追っているという話を聴いていた。



 マリアンはすぐに状況を察した。


 警察が当てにならない分、ガーランドの街では自警団的な集まりがよく作られる。

 どうやら彼らはそういう青年達であり、母親を捜してくれる様だ。


 見ず知らずの母子おやこのためにすぐに人を集めて動いてくれるなんて、警察の一万倍頼りになると思った。



 ふと気が付くと、玄関前に集まった四人の青年達が、ちらちらと家の中を覗き込み、こちらを見ていた。


 マリアンが笑い掛けると、彼らは満面の笑みを浮かべ、なぜかお互いにど突き合った。




 ロウジーが振り返った。




「坊主、お母さん捜してくるな。」




 そう言ってルイを見て、にかっと笑ったその表情に、マリアンは、ちょっとどきりとした。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 五人の青年達はマリアンがルイとぶつかった場所まで戻り、マリアンから聴いた、ルイがやって来た方向へと向かった。


 そして適当なところで散開し、ばらばらに街を捜した。



 向こうもはぐれた我が子を必死に捜しているだろうと思うのだが、そんな様子の栗色の髪の女性に五人の誰も出会えぬまま、時間が過ぎた。



 母親だけ捕まってしまっているのだとしたら、彼らにももうちょっとどうしていいのか分からなかった。



 この辺りは住宅街で、近くには宿はない。

 母子おやこフロウラング(ここ)に来てから、どこに滞在していたのだろう。

 骨が折れそうだが、宿をしらみ潰しに当たることになるかもしれない。

 突き止めるのは大変だろうが、宿泊先が分かれば、何か手掛かりが摑めるかもしれない、とロウジーは思った。



 追っ手を警戒しながらでは、不用意に名前も叫べない。


 それらしい女性を見つけられないまま時が過ぎ、昼が過ぎた所で、ロウジーは仲間の一人と行き会った。



 「昼飯持って行ってやった方がいいんじゃないか?」と言われ、ロウジーは自分だけ一度引き返すことにした。




 肉や野菜を挟んだ細長いパンを、三つ買って戻った。




 自宅に帰り玄関の扉を開けて、ロウジーは絶句した。

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