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あるまちの事件  作者: 大久 永里子
第三章 嵐のつめあと
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第三章 第8話 母親の尋問

 ベッドにぶら下がる様にして自分の方へ身を乗り出しているルイの頭を撫でてやりながら横たわっていたレベッカは、ノックの音を聞き、ゆっくりと体を起こした。


 ベッドの上に座ると向かい合う壁面の右端が戸口で、そこにの中で光がきらめいている様な、美しい女性が立っていた。彼女の後ろに、金髪と黒髪の背の高い青年達がいて、ひらいたままの扉に、女性の右手の甲が当てられていた。



 レベッカは、深々と頭を下げた。



 飴色の瞳の女性に「話せますか。」と尋ねられ、レベッカはうなずいた。


 三人は女性を先頭に、金髪の青年、黒髪の青年の順で部屋に入って来た。

 彼らはベッドの横に並んで立ち、ルイがレベッカの脇で、彼らと向き合う様にベッドのふちにちょこんと腰掛けた。



 口火を切ったのは、ロウジーだった。



 ず自分の名を告げ、ここが自分の家であることを説明してから、青年は本題に入った。


「あの四人は、警察に引き渡すことにした。」


 その言葉に栗色の髪の女性はちょっと目をみはる様にしたが、おびえる様子ではなかった。

 「今警察を呼びに行っている。」と続けられた青年の言葉を、レベッカはただうつむいて聴いた。



 少しの沈黙のあと、ロウジーは改まった口調で尋ねた。



「…事情を訊いてもいいですか。」



 青年にすぐには応えず、レベッカは躊躇ためらう様にルイを見やった。



「この子の、前では―――――――――――――――――」


「―――――――――――――――――――――――――」



 ロウジーはマリアンと目交ぜしてから、ちょっと陽気にルイに呼び掛けた。


「ルイ、一緒に遊ぶか?」


 だが少年は、少し考えると後ろを向いて、母に抱き付いた。


「ぼく、おかあさんと一緒がいい!」

「あら!じゃあお姉ちゃんとは?」


 今度はマリアンが尋ねる。


「うーん…今はおかあさん!」

「まあ!」


 お手上げである。


 マリアンは苦笑を浮かべてロウジーを見やった。

 レベッカが我が子を抱き止めながら、ひどく恐縮している。


 母とはぐれたまま四日も過ごし、挙句連れ去られそうになった子供が、母親と離れ難いのは無理もなかった。一見普通に笑っている様に見えても、心の中は不安で一杯なのだろう。



 遠慮がちに、「あとでいいですか?」と問う女性にうなずいて、ロウジーが諦めて退出しようとした時。


「ちょっと待って下さい。」、とレベッカが青年を引き止めた。

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