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あるまちの事件  作者: 大久 永里子
第二章 嵐
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第二章 第3話 再び ロウジーの家

 「マリアン?!」


 右腰にルイが抱き付いた状態で出て来たロウジーは、驚きの表情を浮かべていた。



「レベッカさんは、見つかった?」



 心を落ち着かせ、マリアンはまず尋ねた。

 押し殺された声になにごとか察したのか、ロウジーはしどろもどろに応えた。



「いや、まだ……仕事どうしたんだ?」

「足の腫れがひどかったから、お休み下さったの。」


 言いながら中に入ったマリアンは、一度部屋を見回してから訊いた。


「何、してたの?」


「外に出すのは危ないから、中で遊んでやろうと思って………」

「お兄ちゃん、もう一回!」

 口籠りながらぼそぼそと言うロウジーにしがみつく様にして、ルイがぶら下がっている。をきらきらさせて少年はなにごとかをねだり、ぴょんぴょんと飛び跳ねていた。



「追い駆けっことか、闘いごっことか、人間風車とか………」

 段々小さくなる声で、ロウジーは説明を続けた。





 なぜ一日で元の状態に戻るのか。



 マリアンは軽くロウジーを睨んだ。

 怒りを察して、青年の顔が強張る。




 まあ、擦れ違いにならなくてよかった。


 しかし部屋のこの状況は頂けない。



 マリアンはきっぱりと宣告した。


「はい、じゃあ、もうお片付けの時間!」


「ぼく、まだあそびたい!」


「坊主、逆らうな。」


 緊張をにじませ、青年は少年を制止した。






 ロウジーの父親は木工職人だそうで、別の都市まちから長期の仕事の依頼を受けて、数年掛かる見込みのその仕事のために、ロウジーの家族は今、一時的にそちらに移住しているそうだった。


 その時既にフロウラングの郵便局で働き出していたロウジーだけがフロウラング(このまち)に残り、いずれ家族が帰って来る予定のこの家の管理のために、彼は時折ここに戻って来ていると言う話だった。




 正直、管理者が戻らない方がこの家は綺麗に保たれると思う。



 マリアンは、ロウジーの母に同情した。






 その日も、ルイの母親は見つからなかった。








✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣



 自分の人生の全てが変わってしまったあの日の記憶は、途切れ途切れだ。



 主人にお茶を届けるように言われ、小さな台車に載せられたお茶のセットを、主人の部屋に運び入れた。


 部屋の卓上に、ポットと、お茶菓子と、カップを置いて、ポットから一杯分だけお茶を注いで、退室しようとした。







 突然、主人に凄い力で腕を引っ張られた。






 そのあとのことは、本当に覚えていない。


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