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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第二章

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第33話


 その反応で自分の発言がどんな意味を持つのかを理解した。


「いや、その……へ、変な意味とかないからな?」

「……フェイクは子どもとかどのくらい欲しい?」

「……え?」


 顔を赤らめながらそんな問いかけをしてきた。

 こ、子どもかぁ。

 アリシアの言葉に、俺は少し考えてみる。

 

「そうだな、二人……くらい?」


 明確な数字は思い浮かばない。

 なんとなく、一人よりは二人の方がいいかなと思っただけだ。

 具体的な想像なんて、まったくできていない。

 しかし、俺の言葉にアリシアは頬を赤らめた。


「そ、そっか……それじゃあ、頑張らないとね」


 一体何をだ。

 いや、もちろん分かっているのでその問いかけはしなかった。

 ただ、口を閉ざしていると、アリシアはどこか嬉しそうに独り言を呟く。


「子どもができたら……私たちの子どもも……きっと……ふふ」


 ……こ、子どもか。

 アリシアはすでにそこまで見えているようだった。

 いずれは俺たちも親になるんだよな。


 まだまだあまり想像ができない世界だ。

 その時俺は何をしているんだろうか?




 午前中ずっと店を開けていた俺たちだったが、一度昼休憩を挟むということで店を閉めた。

 

「フェイク様。昼食の準備できましたよ」


 レフィの声が聞こえた。

 先程、アリシアとレフィは昼食の準備のために二階に上がった。

 俺はさっきまで鍛冶工房で剣を造っていたのだが、今は店に来ていた。


「レフィ、ありがとう。今行くよ」

「はい。私はアリシア様の手伝いに戻りますので、早く来てくださいね」

 

 レフィは一礼を残し、それから上に上がっていく。

 午前中。俺はアリシアとレフィに店を任せ、奥の部屋で鍛冶を行っていた。

 俺が店番に参加する必要はない、とアリシアとレフィが言ったからだ。


 確かに、この店の商品は俺が鍛冶をした物だしな。

 店を守るカプリたちもいる。

 俺がアリシアの隣に立つよりもよっぽど彼らの方が実力的には高いとは思うが……。

 自分の目で見れないとなると、心配になってしまうものなのだ。。


 俺は出来上がった新しい商品たちを木の籠に入れてから、階段を上がり二階へと向かう。


 部屋にはトマトの匂いが充満している。そういえば、新鮮なトマトがたくさん買えたとかそんな話もしていたと思う。

 テーブルには湯気を上げたトマトスープがすでに並んでいた。

 今日はトマトスープか。トマトは好物だ。

 部屋の匂いに自然と口元が緩んだ。

 席に座り、俺は


「アリシアが作ってくれたのか?」

「レフィと一緒に……だけど。……どうかな? トマトスープを作ったのは初めてだったんだ」

「そうか。レフィは一緒には……さすがに食べないんだよな」

「そうみたい。屋敷じゃないし気にしなくてもいいとは言ったけど」


 まあ、アリシアがそういっても気にしないわけにはいかないだろう。

 アリシアとともに昼食を食べ終えた俺が、食器などをキッチンへともっていっていると、レフィがやってきた。


「後片付けはこちらで行いますので、気にしないでください」

「……あー、分かった。任せる」

「ありがとうございます。それと、先ほど屋敷から連絡がありまして……どうやらSランク冒険者の方が街に入っているようで、今日から屋敷に泊まる予定ですね」


 イヴァス達も話していたな。


「ホーンドラゴン討伐のためだよな?」

「はい、その通りです。それと、どうやら向こうは鍛冶師に会ってみたいと話をしていましたので、夕食の際にゴーラル様とともに顔合わせも行いますのでご準備していただければと思います」


 鍛冶師って……つまり。


「……俺だよな?」

「はい。何でも、ホーンドラゴンを倒すために剣を打ってほしいと考えているそうです」

「ホーンドラゴン討伐のためにか? その人は剣を持っているんだよな?」

「ええ。私もこれ以上の詳細は聞いていませんので、あとは直接確かめるしかありませんね」


 ……まさか、剣を持ってくるのを忘れたわけではないだろう。

 なぜ、俺を名指しで依頼なんだろうか?

 疑問がつきないでいると、レフィは言葉をつづけた。


「夕食の際にはアリシア様の婿、として対応していただきますので、よろしくお願いします」

「……分かった」


 一応、隙間時間にアリシアやレフィから教育してもらっているのだ。

 少なくとも、ただ接するだけなら問題はないだろう。

 それでも、多少は緊張するな。


 


 午後に店を開いていると、アリシアが工房へと入ってきた。

 ちょうど製作の終えた剣を鞘にしまいながら、俺はアリシアへと視線をやる。


「どうしたんだ?」

「イヴァスが戻ってきた。フェイクに挨拶したいみたいだけどどうする?」

「分かった。ちょうど終わったところだし会いに行くよ」


 俺は出来上がった剣を片手に、店へと向かう。

 そこにはイヴァスと今朝方会った三人の新人冒険者たちがいた。

 彼らはこちらに気付くと、ぺこりと頭を下げてきた。


「フェイクさん! この剣滅茶苦茶使いやすかったです!」

「オレも、これでいいです!」

「わ、私もです!」


 ……おお、そうか。

 三人とも今朝購入した武器で満足したようだ。


「それなら良かった。長く使っていると剣に施したエンチャントが崩れるから、必ず持ってきてくれ」

「分かりました。め、目安とかありますか?」

「切れ味が悪くなった、とかなんか使いにくくなったと思ったら持ってきてくれ。エンチャントの補修には費用がかかるけど、確認だけならタダで受けるからな」

「……わ、分かりました! 何から何までありがとうございます!」


 新人冒険者たちは顔を見合わせ、微笑みあっている。


「フェイクさん、ありがとうございます。皆大満足でしたよ」

「それなら良かったよ。イヴァスの剣も問題なかったか?」

「はい、ばっちりです! それじゃあ、また今度きますね!」

「ああ、怪我しないように……みんな頑張ってな」


 新人冒険者たちにそういうと、彼らは笑顔とともに頭を下げた。


「はい! オレたちも頑張ります!」


 イヴァスや新人冒険者たちは店を去っていった。

 彼らが去ると、店の人もいなくなった。

 外を見れば夕陽が差し込むような時間だ。


 もうお客様もいないし、店を閉めてもいいかもしれない。


「そろそろ閉めようか」


 今夜はSランク冒険者の人との食事もある。

 早めに移動した方がいいだろう。


「うん、そうだね。それじゃあ、閉めてくる」


 アリシアが入口へと向かい、看板などを片付けながら扉を閉める。

 夕食か……。Sランク冒険者ってどんな人なのだろうか。

 それが、少し気になっていた。



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