表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/202

第31話



 開店して数日が経過した。

 初日程の売り上げはさすがに超えられていないが、今のところは順調そのものだ。


「フェイク、もうお店開けて大丈夫?」

「大丈夫だ」


 返事をしながら、俺は外に営業中の看板を置いた。

 アリシアがお店の扉を開け、今日の営業も開始する。


 さすがに一日の流れも覚えてきたので、準備含めて無駄なく進められている。

 開店と同時に何人かの冒険者がやってくる。

 それらの対応が一段落ついたところで、一人の女性冒険者が入ってきた。


「へぇ、ここがフェイクの鍛冶屋ね」


 じっと店内を見ていた彼女の声が聞こえた。

 俺もそろそろ奥に入って鍛冶でもしようかと思っていたのだが、やけに彼女が気になった。

 綺麗な人、というのもあるが……どうにも他の冒険者とは一線を画する力が感じられた。


 いたって普通の女性なのだが……もしかしたら高ランクの人なのかもしれない。

 そんな時、彼女と目が合った。


「あなたがここの店主なの?」


 そうじっくりとこちらを上から下まで見てくる。


「……ああ、そうだ」

「うんうん。領主様の娘さんと婚約者って本当なのね」


 受付近くには、バーナスト家の家紋と営業許可書が張られている。

 俺がこくんと頷くと女性は店内を改めて見回した


「ここにある剣、全部あなたが造ったの?」

「そうだな。剣以外はあまり得意じゃないから取り扱っていないけど」

「……へぇ、そうなのね」


 含みのある言い方と表情だった。

 彼女はそれから観察するように店内を見ていく。


「思っていたよりも……ううん、思っていた以上の腕前ね。今までどこで鍛冶をしていたの? これだけの腕なら、王都でもやっていけるでしょ? 宮廷とかから誘われなかったの?」


 矢継ぎ早の質問だ。

 俺はどこまで答えようかと思ったが、俺の実力に対して何か探るような様子だ。

 ……この人はたぶん、それなりに実力のある冒険者だと思う。

 もしかしたら、今後依頼をされる可能性もある。

 実力を盛るつもりはないが、正直に話したほうがのちのちの仕事につながるかもしれない。


「隣国の宮廷で鍛冶師をしていたんだ。その時は、主にエンチャントなどのメンテナンスばかりだったけどな」

「隣国……あー、だから名前も聞いたことなかったのね。ふんふん、そういう可能性についてはまったく考慮していなかったわ。私反省」

「……は、はあ」


 それから彼女は笑顔とともにこちらに手を差し出してきた。

 その手に、米がついていて、彼女は舌を出して逆の手を出してきた。


「初めまして、私はベルティと言うわ。今度、剣の製作依頼を出そうと思っていてね。それで、様子を見に来たの」

「……そうだったんだ」

「詳しい話はまたあとでね。二回目の朝食まだ食べてなくて……お腹減ってきちゃったの。それじゃあ、またね」


 そう言ってベルティは去っていった。

 ……に、二回目の朝食? 朝食って一回じゃなかったか?

 俺が首を傾げていると、アリシアがじっとこちらを見てきた。


「知っている人?」

「いや、知らない人だな」

「……そうなんだ」


 むっと頬を膨らませ、アリシアがぎゅっと手を握ってきた。


「アリシア?」

「……フェイクが、何だかみんなに好かれて嬉しいような……心配なような」

「……別に、そんなことないって」

「アルメともなんだかいい雰囲気だし」


 いや、なったことないし。

 アルメは勝手にぐいぐい距離を詰めてきているだけだ。

 俺が苦笑を返していると、店の入り口から大きな声が聞こえた。


「おはようございます、フェイクさん! アリシアさん!」


 店内へと、イヴァスが元気よく入ってきた。

 今日は久しぶりに一人のようだ。

 彼の笑顔はいつも通り。


「イヴァス、どうしたんだ?」

「その、ちょっとエンチャントをしてもらいたくて……」


 イヴァスは腰に下げていた剣をこちらに向けてきた。

 魔力情報を見てみると、確かに随分と傷が目立ち始めている。


「ああ、もう。結構無茶な使い方したんだろ?」

「えへへ……昨日、普段は見かけない魔物に襲われまして……何とか討伐したんですよ」

「普段見かけない魔物?」

「はい。……確かヘビーモンキーですね!」


 イヴァスの言葉に、アリシアが反応する。


「ヘビーモンキー……Cランクの魔物。かなり強いけど、大丈夫だったの?」

「はい! ぴんぴんです!」


 イヴァスたちはDランク冒険者のはずだ。

 Cランクの魔物はDランク冒険者からすれば基本的には格上の存在だ。


 もちろん、魔物の個体や、Dランク冒険者だとしてもそれぞれ実力は違うので、なんとも判断は難しいけど。


「怪我がないならいいんだが、ウェザーやエルナも無事か?」

「はい! ただ、昨日はその激闘もあって疲れちゃったんで今日は一日休み! ってことにしたんです」

「なるほどな」

「でもいきなりだったから驚いちゃいましたよ。なんであんなところにいたんですかね?」


 アリシアが顎に手を当て、答えた。


「強い魔物……今回でいえばホーンドラゴンの影響で生態系が変わっているのかも」

「ええ!? ホーンドラゴンの悪影響ってこんなところにでもでてくるんですか!?」

「普段街に降りてこないような魔物も、ホーンドラゴンから逃げてきているかも」


 生態系の変化か。

 冒険者が魔物を討伐する理由は主にこれだ。

 その地域には、地域ごとの生態系がある。


 異常に繁殖してしまった魔物を討伐することで、生態系を守るのだ。

 冒険者がそこまで考えているわけではない。

 彼らはあくまで金を稼ぐために冒険者になったんだ。

 生態系の管理は冒険者ギルドが行っていて、依頼と言う形で冒険者に討伐を任せている。


「でも、Sランク冒険者がこっちに向かってきているんだよな? そろそろ、討伐されるんじゃないか?」

「いえ、到着はしたんですけど……かなり強い魔物みたいで、攻撃がまったく通用しないそうなんです」

「Sランク冒険者でもか?」

「一人では厳しいみたいです。威力の高い魔法を何度かぶちこめれば倒せるみたいですけど、一人だとその余裕がないそうなので……今選択肢が二つあるみたいなんです」

「選択肢?」

「はい。より頑丈な剣を用意し、攻撃が通るようにするか、冒険者を集めて魔法を貯める時間を稼ぐか。冒険者に依頼をだしていますけど、さすがに相手が相手なので……応募する人はいないんですよね」

 

 ……Sランク冒険者が苦戦するような相手だ。

 そう簡単に受けてくれる人はいないだろう。

 そもそも、この街の冒険者はそこまで高ランクが集まっているわけじゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] イヴァスとウェザーはDランク昇格済みでは…? オーダーメイドしてもらった剣で試験に挑んで(1章44話)、そのまま合格した(同46話)とあります。 魔物のランクを上げる、同ランクで普通…
[気になる点] 46話でイヴァス達はDランクになったと報告していますが、フェイクは忘れているのでしょうか? [一言] 楽しんで読ませて頂いています。
[気になる点] 「ヘビーモンキー……Dランクの魔物。かなり強いけど、大丈夫だったの?」 「はい! ぴんぴんです!」  イヴァスたちはEランク冒険者のはずだ。  Dランクの魔物はEランク冒険者からすれば…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ