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第9話


「こちらが屋敷内にある鍛冶工房になります。こちら、アリシア様の婿様に使用してもらうための鍛冶工房となっております」

「そうか……」


 俺はレフィに案内してもらった鍛冶工房を改めて確認する。

 といっても、鍛冶が出来る環境が整っているくらいで目新しいものがあるわけではない。


 珍しいといえば、炉などがしっかりと用意されていることだろうか。

 現代の鍛冶師は、あれらの道具を使わずに鍛冶が行える。そういった特殊な魔法の才能を持っているため、実物を見たのは久しぶりだ。


「必要なものがあればお申しつけください。私が用意しますので」


 レフィの言葉にこくりと頷く。

 ひとまず、道具などは問題なさそうだ。素材も隅に置かれた箱にしっかりと入っていた。


「とりあえずは問題ないな」

「そうですか。それでは、次にフェイク様の自室にご案内いたします。こちらの鍛冶工房の二階にも暮らせる空間を準備してありますのでそちらもご自由にご利用ください」

「分かった」


 鍛冶工房から再び俺は本邸へと戻ってきた。

 高級そうな絨毯の通路を歩いていくと、レフィが一つの部屋の前で足を止めた。


「こちら、フェイク様のお部屋となっております。先ほど同様。何かございましたらお申しつけください」

「……分かった」


 案内された部屋へと入る。

 それまで自分が利用していた部屋とは比べ物にならないサイズの部屋だ。

 これまた高級そうなベッドには天蓋までもついている。……あんなベッド使ったことがない。逆に高級すぎて寝付けないかもしれない、なんて思いながら部屋を見回す。


 窓ガラスから外が見える。ちょうどそこでは騎士たちが剣の訓練を行っていた。

 今は関係ないだろう。俺は視線をレフィへと戻した。


「特に、今すぐ生活に困るようなことはなさそうです」

「そうですか。それは良かったです。何かありましたら、いつでもお申しつけください」

「分かった」


 その日の夜。俺は用意された自室の窓から空を眺めていた。

 

 ここ数日で本当に状況が一変した。

 ……もういつ死んでもおかしくないような状況で仕事をしていたにも関わらず。

 あくまで、偽装結婚とはいえ、俺にとって悪いことは何もない。


 あれほど綺麗で可愛く優しい子を、表向きとはいえ妻と言うことが出来るのだ。

 これだけでも、この話を引き受けた意味があっただろう。


 何よりも……俺は大きく背中を伸ばしたあと、ベッドへと倒れこんだ。


「……この状況だよな」


 仕事がなくなったということの解放感が、今もっとも俺の中では大きい事態だった。


 次の日の朝までに終わらせなければならない、とか。

 睡眠時間二時間はとれるだろうか、とか。


 そんな悩みを持つことがなくなったのだ。


 ここでなら、毎日休むことだって出来るだろう。さすがにそんなことをしてしまうと、結婚の偽装も難しいどころか、俺の評価も地の底まで落ちる可能性もあるのでそうはしないが。


 ベッドでごろごろと転がっていると……今度は逆に何もしていないことへの違和感のほうが大きくなってくる。

 毎日仕事をしていた分、この何もしていない時間というものに不安を感じてしまうのだ。


「……何もしなくていい、何も仕事がないっていうのもちょっとアレだな」


 ぼーっと何もせずに天井を眺める。以前、仕事が終わる気がせず、現実逃避のように天井を眺めていた時とは何もかも状況が違う。

 これからのことについてじっくりと考えていた。


 とりあえず、明日から早速鍛冶を始めようか。……最近、まったく鍛冶をしていなかったしな。


 そんなことを考えながら、俺は目を閉じた。


ここでプロローグ部分が終了になります!

次回から本格的に鍛冶師としての活動を開始していきます!


ここからの主人公の活躍に期待したい、鍛冶師たちの落ちぶれを見たいという方は


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