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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第二章

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第9話




 ベストルの鍛冶工房を見終えた後、俺たちは別の候補へと向かう。

 まず、四つの候補だが……どこも鍛冶工房として使うには点数が低い。

 立地が悪いのだ。


 冒険者通りから離れた場所になってしまっているため、お客さんが来づらいだろう。

 それでは、売上が悪くなり、最終的には店を閉めることになるかもしれない。

 もちろん、実力があればお客さんは来てくれるだろうが……新規の人は中々訪れてくれないはずだ。

 この街に初めて訪れる冒険者がお客さんとして来やすいのは、やはりベストルの鍛冶工房だ。


「フェイク。ベストルの鍛冶工房が一番お気に入り?」

「まあ、そうだな。アリシアは心配か?」

「……だって、なんだか変な感じだし。ゆ、幽霊とか出てきたら? ほ、ほらベストルが亡霊になって出てくる……かも」

「……それならむしろどんな気持ちで鍛冶をしていたのか聞きたいな」


 伝説の鍛冶師として後世に語り継がれるような人だ。

 どんな考えで持って鍛冶に臨んでいたのか、心意気なども知りたいものだ。 

 アリシアは苦笑を浮かべていた。


「それじゃあ、もうちょっとしっかり調べてみる」

「ベストルの鍛冶工房についてか?」

「うん。安全なのを確認できれば、購入したい。……私も、あそこの立地とかはいいと思ってる。フェイクにはできるかぎり良い条件でお店を開いてほしい」

「……アリシア」

「フェイクの実力なら、きちんとした条件で挑めば誰にも負けないお店になる、から」


 アリシアの自信に溢れた表情での言葉に、俺は唇をぐっと噛んで頷いた。


「ありがとう、アリシア」

「うん。とりあえず、もう一回ベストルの鍛冶工房に行ってみる?」

「そうだな」


 話し合い、もう一度ベストルの鍛冶工房に行くことになった。

 ベストルの鍛冶工房へと向かうと、庭などの掃除をしている女性がいた。

 その人は商人リグの弟子であるアルメだ。


 向こうもこちらに気づいたようだ。

 目が合うとアルメはにこーっと微笑んだ。


「お久しぶりですねフェイクさん! もう紹介は終わったとリグから聞いていましたけど……どうしたんですか?」

「やっぱりここが一番いいと思って……もう一度少し見てみようかなと」

「なるほど! そういうことでしたか! どうぞどうぞ、何でも聞いてください! 案内しますよー!」


 別に案内してもらわなくてももう内部構造は理解していたが、アルメは笑顔とともに隣に並んできた。

 ていうか、掃除はいいのか?


「そういえば、アルメはどうしてここにいるんですか?」

「ふふん、それはどうしてだと思いますか?」


 アルメが胸を強調するように腕を組み、俺の方に顔を寄せてくる。

 じとーっとアリシアが睨んできているのが分かる。

 べ、別に、胸とか見てないからな。


「いや、考えても分からないな」

「簡単な話です。本来、ここの管理はアルメに任せようと思っていたのですが、寝坊したからです」


 その時、店の方からリグの声が聞こえた。

 声の方を見ると、彼は不機嫌そうな様子でアルメを睨んでいた。


「アルメ。婚約者のいるフェイクさんにまで色仕掛けを行うのはやめなさい」

「えー。色仕掛けなんてしてないですよー。えー、お父さんは色仕掛けだって思うんですかぁ? えっちぃですね」


 そう言ったアルメに、リグがため息をついた。


「まったく……申し訳ありませんアリシア様。アルメにはきつく言っておきますから」

「う、ううん……大丈夫だから。フェイクだって、別に興味ないもんね?」

「ああ、もちろんだ」

「えっ? 本当ですかぁ? いった! 頭殴るなんて酷いよお父さん!」

「黙りなさい。ほら、口を閉ざして静かにしていなさい。今日はオレがやるから」


 リグが睨むと、アルメは「はーい」と言ってリグの後ろに控えた。


「……娘さんだったんですか?」


 先ほどアルメがお父さんと呼んだことが気になり、問いかける。

 リグは苦笑気味の表情で頬をかいていた。


「義理の、ですが。旅の途中で捨てられていたところを拾ったんです」

「優しいのですね」

「そうではありませんよ。ただ単に、お金で困る子を見捨てられなかったんです」

「それが優しいんだと思いますよ」

「違いますって。オレが昔、お金に困っていた孤児だったからです」


 そこまで話したところで、リグが頭を下げた。


「関係のない話をしてしまい申し訳ありません。それで、どういった御用ですか?」

「……いくつか候補の店を見てきたけど、やっぱりここが一番だと思いまして。この店舗を購入の方向で検討しています。ただ、色々と調べてからにしようとも思っていたので、もう一度この目で確かめようと」


 ゴーラル様にも確認する必要があるので、確定ではない。

 俺の言葉に、リグは驚いた様子だった。アルメもだ。

 アルメがちらとリグを見ると、彼は不安そうな表情ながらも頷いた。


「……分かりました。前向きな検討、ありがとうございます。ただ、体に異常が出る場合はすぐに店から離れた方がいいですよ」

「分かりました」


 そんなに警戒するほどなのだろうか?

 という疑いはあったけど、信頼できるリグの指摘なので黙って受け入れた。


 それから俺とアリシアはもう一度ベストルの鍛冶工房について見て言った。

 ……やっぱりいいよなぁ。


「レフィ、この鍛冶工房についての情報集められる?」

「ええ、数日もあれば可能です」

「分かった。それじゃあ、詳細について調べてみて」


 後ろでアリシアとレフィがそんな話をしているのを聞きながら、俺は鍛冶工房を子どものように見て回っていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 物語によくあるのは亡霊(に見えた暴走したブラウニー)とか、ご主人(前の)を待つ精霊(ブラウニー)とか、 本人(亡霊本物)とか いずれにせよ主人公の鍛冶の腕前に惚れ直し明け渡す流れがw…
[一言] アリシア、よく貧乳キャラになってますがイラスト見る限り割と普通ですよね〜 割とある、『周りが大きいから小さく見えるだけパターン』
[一言] 早く、不審な点を排除して お店を開業できるといいな 最初はアリシアの家から通って 慣れてきたら、店の居住スペースに アリシアと同棲かな?
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