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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第一章

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第41話


 次の日。

 俺は二人の剣を作るため、鍛冶工房へと来ていた。

 まずはイヴァスからだな。


 イヴァスの剣はダガーとロングソードの中間あたりだ。ただ、なるべく軽めの剣にする必要がある。

 軽くするにはそれだけ魔鉱石の量を減らす必要があるのだが、そうすると耐久性にも問題が出てしまう。


 イヴァスとウェザーはまだ二人で活動をしている。イヴァスも無茶な戦いをすることも多いだろうと思うので、なるべく頑丈な剣にしてやる必要がある。


 そのためにも、とにかく鍛錬に力を入れてやらないとな。

 イーレア魔鉱石を取り出し、溶かして小槌を叩きつけ、板金を作り上げていく。

 その上からさらに新しく魔鉱石を溶かし、叩いてを繰り返す。目的の長さになったところで、一度エンチャントを行う。


 ここでエンチャントを挟むことによって、内部の魔力情報を修復する。

 小槌で叩けばまたすぐに破損してしまうのだが、それをすぐに修復していく。


 これを繰り返すことで、内部の魔力情報自体も強化されていく。人間の筋肉と同じだ。傷つけ、再生すると成長するんだ。

 何度もたたき、剣の形となっていった。

 熱されていたそれに、水魔法を当てるとじゅわりと水蒸気が生まれた。


 剣の状態を確かめるように、何度か振る。……うん、問題ないな。


 イヴァスの剣は片刃剣とした。イメージしたのはファルシオンだ。

 イヴァスは両刃を使っていなかったからな。ならば、片刃で十分だろうと思ったわけだ。


 程よい長さだが、ロングソードほどではない。重さはナイフよりは重いが、ロングソードよりも軽い。

 まさにイヴァスの要望通りの性能とすることが出来たな。


 あとは、本人に実際に使ってみてもらう必要があるが。

 俺は風魔法を準備し、その剣の刃を研いでいく。

 いつもはわりと感覚的に行っていた作業だが、これも丁寧に行う。


 完成した剣で試し切りを行う。いつものように土を固めたものを作りだし、剣をふるう。

 すーと斬れた。……俺の想定以上に切れ味が鋭いな。


 まだこれで、エンチャントも行っていないんだ。俺は剣の内部の魔力情報を確認し、それからエンチャントを施していく。

 イヴァスの冒険者道を切り開いていけるような。彼の無邪気さと明るさを引き延ばしてくれるような。そんな願いをこめながら、丁寧に丁寧に強化を施していく。


 ――出来上がった。

 俺は一度息を吐き、額の汗をぬぐった。


 ……かなり集中していたようだ。どっと疲れが体に出てきた。

 ここまで一度の鍛冶で疲労したのは初めてだ。


 このままウェザーの剣も作りたかったが、この疲労が残った状態では完璧な剣は作れないな。


 俺はイヴァスの剣の鞘を作っていく。

 最後に、持ち手部分も負担の少ないように調整して、完成だ。


 部屋の時計を見たときだった。鍛冶工房入り口の扉がノックされた。


「アリシアか?」

「うん。出来た?」

「ああ、出来たよ。とりあえず、イヴァスの剣だ」


 そういって鞘から抜くと、アリシアが目を見開いた。


「……力強さがある。それに、魔力情報も凄い綺麗。まるで、芸術品みたい」

「ありがとな。今回かなり頑張って……さすがに疲れたよ」

「……そうなんだ。お昼、来ないから心配して見に来たんだよ?」

「……ああ、確かにもうそんな時間だな」


 見れば、昼を過ぎていた。

 作業を開始したのが8時くらいだったので、5時間ほどは没頭していたようだ。

 疲れた体を休ませるように俺が横になろうとすると、アリシアがこちらへとやってきた。


 そしてアリシアは鍛冶工房の床へと座り、とんとんと膝を叩いた。

 なんだ?


「膝枕。疲れたのなら、休んで……い、いいよ?」


 アリシアの頬は少し赤い。たぶんきっと俺も同じくらい赤くなっているだろう。

 

「いや……その」

「休んで」


 有無を言わさない迫力だった。

 俺は観念して彼女の膝に頭を乗せた。柔らかい……じっと目を開くと、こちらを覗き込むようにアリシアの顔があった。

 俺は少し緊張して、体が強張ってしまった。


 ……本当に体は休めているのだろうか。そう思ってしまう。


 大きな瞳はくりくりとこちらを覗き込んできていた。白く透き通るような肌は少し赤らんでいたが、彼女の桜色の唇が嬉しそうに緩んでいた。


「今日は、この後どうするの?」

「……とりあえず、市に向けてナイフか剣でも作って終わりにしようかなって感じだな」

「そっか。それなら、ゆっくりしても大丈夫、だね」

「……ああ、そうだな」


 応援したい人間のために鍛冶を行い、偽装ではあるがこうして婚約者もいるこの状況。

 ……世界で一番幸せなんじゃないかと思えるような時間だった。



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