第40話
それからさらに狩りをしていたが……正直言って危険なことはなかった。
イヴァスとウェザーの動きは軽やか、力強く、この森にいる魔物相手ならば苦戦するようなことはない。
そんなこんなでずっと見ているだけだったのだが、さすがにそれでは少し退屈な部分もある。
「次は俺も少し戦わせてもらってもいいか?」
「え? いいですよ」
せっかく久しぶりに外に出たのだから、俺も少しくらいは戦いたい。そう思って提案すると受け入れてもらえた。
ウェザーがゴブリンを発見したため、そちらへと向かう。
数は二体。ゴブリンは醜悪な顔をきょろきょろと左右に向けていた。
こちらに気づいている様子はないな。
俺は腰に下げていた剣を確認する。とりあえず、拾っておいた小石を使おうか。
持っていた小石にエンチャントを施した後、ゴブリンへと投げつけた。頑丈になった小石がゴブリンの体へとめり込んだ。
「があ!?」
小石だろうがエンチャントを施せばこれほどの威力を出すことが可能だ。
怯んだゴブリンへと接近し、その首へと剣を振り下ろした。あっさりと仕留めることが出来たな。
もう一体がこちらへと飛び掛かってきた。持っていた棍棒の一撃をかわし、背中を斬りつける。
倒れたゴブリンの首へと剣を突き刺して仕留めた。
「フェイクさん、滅茶苦茶強いじゃないですか!」
「強いかどうかはともかく……昔から自分で素材とかとっていたからな」
「それなら、一流の冒険者だって目指せますよ! どうですか! 一緒に冒険者やりませんか!?」
「いや、俺は鍛冶の方で忙しいからさ」
やんわりと断りながら、再びアリシアとともに歩いていく。
「凄い強い。かっこよかった」
「……ありがとな」
アリシアが嬉しそうな様子でそう言ってきてくれる。もっと戦って彼女の笑顔を見たいという気持ちもあったが、目的をたがえてはならない。
今回はイヴァスとウェザーにあった武器を作るためにここにきているんだからな。
二人の戦いをじっくりと観察していく。
……確かにイヴァスは素早さを完全には活かしきれていない。かといって、ナイフでは短いという感じか。
ウェザーももっと破壊力のある剣の方がいいよな。あとは、二人の体に合ったサイズや重さなどだな。
それについては、武器屋を見て回って確認していこうか。
「フェイクさん、どうですか?」
「十分わかった、ありがとな。この後は武器屋にでも行ってどんな武器が欲しいか調べに行きたいんだが、もう狩りは大丈夫か?」
「大丈夫です!」
イヴァスとウェザーがこくりと頷いた。俺は彼らとともに、森を後にした。
森での狩りを終えた後、俺たちは武器屋に来ていた。
冒険者通りの中でも大きな武器屋だ。扱っている商品も多くあり、それらには値札がついているのだがどれもなかなかのお値段だ。
とはいえ、値札は向こうの希望している金額だろうし、交渉の余地はあるかもしれない
まあ、今日は購入しにきたわけではない。
イヴァスとウェザーに色々な武器を見てもらう。
イヴァスが手に取った剣を持ってみる。
「そうですね……この剣の長さくらいですかね……。ただ、ちょっと重いですね」
「そうか、このダガーとかはどうだ?」
「……うーん、ちょっと短すぎる気もしますけどうーん、難しいですね。重さはこのくらいの方がいいかもしれないですね」
……段々とイヴァスの欲しい武器が見えてきたな。
「基本は剣とするが、もう少し短め、か。なるほどな、分かった」
イヴァスの方はそれで良いだろう。
おおよその長さが分かったところで、次はウェザーだ。
「ウェザーはどうだ?」
彼にも武器を見てもらっていた。ウェザーが見ているのは背負って運ぶようなサイズの長剣だ。
「この剣は……うん。しっかりと重量もあって……どんな相手も破壊できそうだ」
ウェザーは長剣を片手で軽々と振っている。見た目以上に力があるな。
「グレートソードと呼ばれる種類だな。そんな感じでいいのか?」
「……ただ、ちょっと長いかも。もう少しだけ短いほうがいいかな」
それなら……俺は近くにあった長剣を手に掴む。
「こっちのツーハンドソードはどうだ?」
「うん、このくらいならちょうどいいな。ただ、もう少し重量があってもいいかも……色々言ってごめんなさい」
「いや、いくらでも要望は言ってくれ。こっちも二人にあった完璧な武器を作りたいんだからな」
こちらもある程度わかってきたところで武器屋を出た。
「二人とも付き合ってくれてありがとな。だいたい分かったから、早速作ってみるよ」
「ありがとうございます! 代金はどのくらいになりますか?」
どうしようかね。ある程度は安くしてやりたいものだ。
あまり情を入れすぎても商売人としては問題だったが、初めてのお客様だしな。
「まあ、見てから購入するかどうかは考えてくれればいいが、イヴァスの方は4万ゴールド、ウェザーの方は6万ゴールド位はどうだ?」
「……あれ? 思っていたよりも安いですね」
俺はちらと、彼らの剣を見た。
「今のは、二人が持っている剣を下取りした場合の金額だな。下取りに出さないのなら、どちらもさっきの金額にプラス4万ゴールドくらいだな」
「なるほど、分かりました! 今の剣を渡すだけでそんなに安くなるなら、ぜひとも下取りしてもらいます!」
「了解だ。それじゃあ、今日一日ありがとうな。次の市までに用意しておくよ」
「分かりました!」
「それじゃあな」
「はい!」
すっとイヴァスとウェザーは頭を下げて去っていった。
……さて、頑張らないとな。
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