第39話
次の日。約束通り冒険者ギルドへと到着すると、イヴァスとウェザーが掲示板前にいた。
二人はこちらに気付くと、無邪気な様子で近づいてきた。すっかり懐かれたようだ。
「おはようございます!」
ぺこりとイヴァスとウェザーが頭を下げてくる。俺とアリシアも同じように返した。
アリシアはいつもと同じ仮面をつけていたが、今日は腰に剣を下げている。
俺が作製したロングソードだ。
「おはようございます。それじゃあ、早速冒険者として活動しましょうか」
「分かりました! あっ、それでしたら普通に接してくれていいですからね? 敬語とか、僕たちに必要ありませんから!」
「……そう、か? それなら、イヴァスも普通に話してくれてもいいけど……」
「僕は生まれつきこれなんです! それでは、行きましょう。今日は近くの森で魔物狩りを行う予定なんです」
「ああ、分かった。俺とアリシアは二人についていく形になる。頑張ってくれ」
「はい!」
すぐにイヴァスとウェザーが依頼を受注し、俺たちは彼らとともに街を出て北の森へと向かった。
「北の森、主にいる魔物はゴブリンとウルフ、それにハイウルフがいるはず」
「そうなんだな」
「ただ、奥に行くとオークが出てくるからちょっと注意が必要。それ以外は強い魔物じゃない、かな?」
なるほどな。アリシアとそんな話をしていると森に到着した。
「これから、ゴブリン、ウルフ、ハイウルフを狩っていきますね」
「ああ、了解だ」
イヴァスとウェザーが先頭を歩いていく。
俺は自分の左胸に右手を当て、自分の状態を確かめる。
「……どうしたの?」
隣にいたアリシアが首を傾げてくる。……まあ、傍目からすると心臓を押さえているように見えるため、心配させてしまったようだ。
「今、エンチャントを行っているんだ」
「……え? 自分に?」
「ああ。効果時間はそれほど長くないが、バフ魔法のような感じだな。今は肉体の強化を行っているところだ」
自分の体の状態を確かめ、強化を施していく。
一時的にプログラムを書き換え、体に異常が出ない程度に強化していく。
ある程度強化が終わったところで、体を動かす。ああ、問題ないな。
これで、何かあったときもすぐにアリシアを守れる。
「アリシア、俺の近くにいてくれ」
「……う、うん」
アリシアをいつでも守れるように周囲を警戒する。
近くの落ちていた小石などを拾いながら歩いていると、
「ウルフが近づいてきている、気をつけてくれ」
ウェザーが俺たちにそう言って間もなくだった。
ウルフが出現した。……なるほど、獣人だから鼻が利くのだろう。
数は三体だ。
イヴァスとウェザーは視線を一度かわした後、動き出した。
イヴァスが一気に距離を詰める。……速い。本人も話していたがかなり速度を重視した動きが得意なようだな。
ウルフがイヴァスに噛みつこうとしたが、その攻撃は空をきる。イヴァスはすでにウルフの側面へと回っていて、剣を振りぬいていた。
その脇腹を斬りつけ、ウルフ一体を仕留めた。二体のウルフたちがイヴァスに注意を向けたところで、ウェザーが二体へと駆け出した。
彼の動きは見た目以上に重量が感じられた。そして、彼は持っていた剣を叩きつけた。
ウルフの体はあっさりと両断された。
……獣人は人間よりも力が強いことが多いが、ウェザーもそうなんだろう。
スピードのイヴァス、そしてパワーのウェザー。
イヴァスが敵を引き付けている間にウェザーが仕留める。それが、この二人の基本戦術なんだろう。
……なるほどなるほど。
なんとなくどのような武器を作るべきか見えて来たな。
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