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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第一章

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第32話 モルガン視点


 前回、無事エンチャントを施したオレは騎士団長様の結果待ちとなっていた。


 騎士団長様に剣の納品を終え、一週間近くが経過した。

 フェイクの奴は未だ戻ってこないがもうオレには関係のないことだな。


 今日は、鍛冶課に騎士団長様がやってくることになっていた。

 それはもちろん、オレが納品した剣についてだろう。

 さてさて、どんなご褒美があるのやら。最低でも、騎士団長様専属の鍛冶師の地位は与えられることだろう。


「……これで、モルガン様は騎士団長様の鍛冶師かぁ」

「いいなぁ」

「でも、それなら鍛冶長の枠も空くってことだよな?」

「よし、その枠でも狙うとしようか」


 同僚たちの羨ましがるような視線に、オレはふんぞり返っていた。

 オレはいつも以上に身だしなみを整え、鍛冶課の扉が開くのをじっと見ていた。


 そして、扉が開き、騎士団長様が入室してきたところで、オレはすっと彼の方へと近づいた。


「お久しぶりです、騎士団長様」

「ああ、久しぶりだな」


 騎士団長様の視線は鋭かった。それにちょっとばかり疑問を抱いたが関係ない。

 オレはにこにこと彼へと近づいた。


「モルガン、フェイクはいないのか?」

「フェイクはおりませんが……」

「また休みか? 以前エンチャントしてもらった剣についてなのだが」


 ああ、そうだったそうだった。

 フェイクにお願いしていた騎士団長様だ。他の者がエンチャントしたといっても頑なな態度を崩さない可能性がある。


 だからこそ、オレは彼が来たところでネタ晴らしをするつもりだったのだ。


「以前の剣ですが、アレはオレがエンチャントを行いました」

「……なんだと?」


 騎士団長様の声が低くなる。


「どういうことだ?」

「フェイクは現在休んでいるので、しばらく仕事には出てこないのです。ですから、彼よりも才能があるオレが、代わりにエンチャントを行いました。いかがだったでしょうか?」

「いかがだった、か」


 騎士団長様は腰に差していた剣を抜いた。それはオレがエンチャントを施した剣だった。

 彼が軽く剣を振った瞬間だった。その剣は砕けちった。


「最低だったよ」


 騎士団長様は静かに怒りで震えていた。


「ど、どういうことですか?」

「……貴様のエンチャントをオレの鍛冶師に見てもらったんだ。こんな拙いエンチャントは初めて見たと、言われたんだぞ! オレが全力でふるえば、あっさりと壊れるともな!!」

「……そ、それは――」

「貴様のような無能に用事はない! オレはフェイクにお願いしたいと言ったはずだ! フェイクはどこにいる? 休んでいるというのなら、休んでいる場所を教えろ!」


 騎士団長様の怒鳴り声にオレは体が震える。

 彼の騎士団長としての威厳に、すっかりオレは怯えきってしまった。


「ふぇ、フェイクは……この宮廷には、い、いえ……鍛冶課にはすでにおりません」

「……なんだと!? なぜいないんだ!? オレの鍛冶師もぜひ一度会ってみたいと話しているほどの逸材だぞ!?」


 い、逸材!? それは絶対にありえないことだし、このオレのエンチャントがフェイクに劣っているわけがないのだが、今それについて指摘できる状況ではない。


 騎士団長様と、そのお抱えの鍛冶師が案外無能だというのは理解し始めたが、こういった知能のない輩に指摘したところで逆ギレされるだけだ。


「そ、それは……ふぇ、フェイクはいきなり勝手に仕事を辞めたのです!」

「……何? やめただと?」

「は、はい! 勝手に私が作ってしまったことは申し訳ございませんでした! しかし、フェイクは、責任を持たず勝手に仕事をやめてしまったのです!」

「……そうか。フェイクの行き先は知らないか?」

「そ、それは……分かっておりません」


 脳裏に浮かんだのは、アリシア様だ。いずれはオレの嫁になるかもしれない女性の笑顔が脳裏にあった。


 ……しかし、もうすでにその家も追放されていることだろう。


「そうか……分かった。それと別件になるが、まだ新しい騎士剣が納品されていないそうだな。さっさときちんとしたエンチャントを施し、騎士たちに納品してくれ。このままでは剣が足りなくなりそうだ」

「……そ、それは――!」


 確かに、そろそろ予備の剣が尽きはじめる頃だろう。

 すべて、フェイクに任せるつもりだったのだが……なぜあいつはもどってこないんだ!


 オレがフェイクへの怒りを募らせていると、騎士団長様がきりっと睨みつけて来た。


「なんだ?」

「分かっています。すぐに作業に取り掛かります」

「すぐに頼むぞ。それと、もしもフェイクの足取りが分かればすぐに教えてほしい。彼とは是非、一度会って話をしたいからな」


 騎士団長様はそう言い残し、部屋を去っていった。

 ……な、なぜフェイクがあれほどまでに評価をされているんだ!

 それに対しての苛立ちがあったのだが、同僚たちは別のことを考えているようだった。


「も、モルガン……今からあの量をどうやって終わらせるんだ……?」


 作業室にぎっしりと詰まっている剣たち。

 それだけではなく、倉庫にも剣が運び込まれているはずだ。


「と、とにかくだ……作業に取り掛かるぞ。これもすべて、あの無能が勝手にいなくなったからだな」

 

 オレがそう言うと、鍛冶課の全員がこくりと頷いた。

 久しぶりのエンチャントの作業となる。……とてもじゃないが、全員でとりかかってもまったくといっていいほど進まなかった。


 しかし、エンチャントの作業をしながらフェイクに対してと騎士団長様への愚痴をこぼしていたので、いくらか怒りは収まった。




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