第28話
市の日となった。
以前と同じ場所を確保するため、朝早くに家を出る。
荷車に必要な荷物を入れ、俺はアリシアとともに市が開かれる中央広場へと来た。
先週と同様、入り口で代金を支払い、中へと入る。
そして、先週と同じ場所から少しだけ離れた場所に店を構えた。
というのも、前回よりも人目に付きやすい場所がまだ空いていたので、そこを使わせてもらうことにした。
この前とそれほど離れていないため、先週の少年も気づいてくれるだろう。
開店準備のために商品を並べる。今回用意したのはロングソードとナイフの二つだ。
ロングソードに関しては前回と同じものだ。ナイフは、どれもかなり上等品のつもりだ。
とはいえ、ロングソードほどイーレア魔鉱石は消費していないため、値段的には2万から3万ゴールドで売りたいと考えていた。
旗を置けば、店の準備は完了だ。
市に段々と人が増え、賑わっていく。
前回同様俺のお店に人は来ない。
「いらっしゃいませー! こちらロングソードとナイフ売っていますよ!」
仮面をつけたアリシアがその透き通るような美声で接客をしてくれているため、人の注目自体は集まるのだが中々購入までは至らない。
一時間ほど特に動きはなかったのだが、その時少年がこちらへとやってきた。
「あっ、お兄さん!」
彼は先週俺のロングソードを購入していった少年だ。笑ってやってきた少年の隣にはもう一人、冒険者らしい子がいた。
獣人だろうか?
人間の頭部分から二つの猫耳が生えていた。かなり大柄な子だ。猫耳、と思ったが獣人族の中では虎とかそういった種族の子なのかもしれない。
「今一緒にパーティーを組んでいる冒険者のウェザーっていうんだ。あっ、そういえば、僕も自己紹介していませんでしたね! 僕はイヴァスって言います!」
「そうなんですね、俺はフェイクって言います」
軽く自己紹介をする。元気な少年――イヴァスは以前よりも服装もマシになっている。冒険者としてある程度の稼ぎがあるのだろう。
反対にウェザーはじっと俺のロングソードを見ていた。
「このロングソード……見せてもらってもいい、か?」
「はい、いいですよ」
俺がウェザーにロングソードを渡していると、イヴァスが笑顔を浮かべた。
「そういえば、フェイクさん! フェイクさんにもらったロングソード滅茶苦茶使いやすいです! 切れ味は前に使っていたロングソードとは比べ物にならないですし、軽くて、よく手に馴染む……もう最高です!」
そう笑顔で言ってくるイヴァスにこちらも頬が緩む。やはり実際に使った人が喜んでくれている姿を見るのが、一番嬉しい瞬間だ。
「ありがとうございます。お気に召したようで良かったです」
「この一週間で、なんとEランクに上がれたんですよ! ギルドからは異例の速度のランクアップだって、ちょっとした有名人なんですよ!」
「それはおめでとうございます。でも、上がれたのはキミに実力があったからではないですか?」
「そんなことありませんよ!」
あははーと笑顔で頭をかいていたイヴァス。満更でもないと言った様子だ。
「このロングソード……欲しい……いくら……するんだ?」
俺のロングソードを見ていたウェザーが問いかけてきた。
「こちら……そうですね。四万ゴールドでどうですか?」
「……さ、三万ゴールドで買えない、か?」
「三万、ですか。……分かりました。その代わり、もしも使い勝手が良かったらお友達にも紹介してくださいね?」
「あ、ああ! もちろんだ!」
「ありがとうございます。それではこちら商品になりますね」
俺はゴールドを受け取り、代わりにロングソードを差しだした。
ウェザーは何度かロングソードを振り、感触を確かめていた。
するとイヴァスがこちらを見てきた。
「今日はナイフも売っているんですね」
「はい。どうですか? かなり頑丈に作ったもので、解体用にも戦闘用にも使えますよ」
「あっ、確かに解体用ナイフは欲しいと思っていたんですよね……ずっとロングソードでやっていたし……これっていくらですか?」
「こちら三万ゴールドですね」
「……さ、三万かぁ。うーん、も、もう少し安くなりませんか?」
今回はどうやら多少交渉術を学んできたようだ。
三万ゴールドはこちらも最高額だと思っていたので、もう少し下げることは可能だ。
「そうですね……それでは、今回はお友達紹介していただきましたし、仕方ありませんね。二万ゴールドでどうですか?」
「分かりました! ありがとうございます!」
イヴァスにナイフを渡し、こちらは二万ゴールドを受け取った。
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