第27話
次の日から、俺は在庫を増やすため、鍛冶工房に向かった。
とりあえず、ナイフを作ろうか。
次の市までまだ時間があるため、質を高めることに力を入れようか。
まずはイーレア魔鉱石を溶かし一枚の板を作っていく。
ナイフ程度のサイズになるようにいくつかのイーレア魔鉱石を溶かし、一枚の板が出来上がった。
次はその板の質を高めていく作業だ。小槌を使って板を叩いていく。
今やっている作業は鍛錬と呼ばれるものだ。
イーレア魔鉱石の内部には無駄な不純物が多く入っているため、鍛錬によってそれを追い出していくというわけだ。
小槌で板を殴りつけきちんと熱を与えていく。燃えるような赤色を持つ板を何度も何度も殴っていく。
これで、板自体の強度を高めていく。ある程度終わったところで、俺は内部の魔力情報を解析していく。
鍛錬が終わってからやるのはこの魔力情報の調整だ。内部情報はまだまだよくないため、その調整を行うように小槌をふるう。
魔力情報は線のようになっているのだが、左右に曲がってしまっている。これを一本のまっすぐな線にしていくのだ。
ここでしっかりと強化しておかないと、うまくエンチャントが行えないのだ。
何度も何度も小槌をたたき上げ、最高の板が出来上がったところで次にナイフの作製を開始する。
金床に板を移動させ、それから熱を加える。
ナイフの形になるように、叩いていき作りたい形に整えていく。
ある程度の形がなったところで、水魔法を用意する。熱を持っていたナイフを球体の液体に突き刺すとじゅわっと音を上げる。
焼き入れの作業が終わり、ナイフを軽く見る。
刃部分は15㎝ほどだ。少し長かっただろうか? でもだいたいナイフというのはこのくらいだろう。少しだけ刀身部分に反りがある。試しに土を硬化させて切ってみたが、すっと切れた。切れ味は問題ないな。
グリップ部分に魔物の革を巻き付けて完成だ。
戦闘にも使えるし、解体用としても使えるな。
作製にかかった時間はおおよそ3時間ほどだ。鍛錬に時間がかかるが、その分イーレア魔鉱石では本来出せないような質となっている。
鍛錬をしっかりとやれば、一つ、二つくらいは上のランクの魔鉱石を使ったときのような鍛冶が行える。だから、鍛錬に時間をかけるのは決して無駄なことではない。
あとは、市が始まるまでにナイフを量産していくだけだな。
俺は途中休憩を挟みながら、どんどんナイフを作製していった。
それから一日かけて、三本ほど作製した。
鍛冶をすること自体は好きだったので、非常に楽しいのだが……さすがにやりすぎると、アリシアに心配されてしまう。
昼食と夕食の時間にそれぞれアリシアが迎えに来てくれたのだが、来ていなかったらもしかしたら気づいていなかったかもしれない。
「体、壊さないでね?」
夕食を頂くため、アリシアとともに食堂へと向かって歩いていたのだが、アリシアからはそんな言葉を言われてしまった。
「まあ、その……宮廷にいた時よりも勤務時間は少ないからさ。問題ないって」
「……そうなの? でも、それ基準じゃダメ」
アリシアがぷくーっと頬を膨らませる。
「ああ。むしろ健康的に過ごせているおかげで調子がいいくらいだ」
「それならうん、無理しないで頑張ってね」
アリシアがにこりと微笑む。鍛冶工房から屋敷に向かうだけであるが、彼女とは手を繋いで歩いている。
屋敷内から食堂目指して歩いていく。一日も終わりに近づいているが、まだ使用人たちは忙しそうに歩いている。
こちらに気づくと、わざわざ足を止めて一礼をしてくれる。自分の仕事に集中してくれれば、と思うけどそれ含めて彼らの仕事なんだよな。
とはいえ、俺はまだただの鍛冶師だからわざわざ礼をされる立場でもない。
とりあえず、礼をされても問題ないくらいの鍛冶師目指して、頑張らないとな。
アリシアのためにもな。
1位目指して頑張ります!
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