第24話 モルガン視点
騎士団長様の言葉に、オレは固まってしまった。
フェイクに、エンチャントのお願いをしたい、だと? い、一体何が……。き、聞き間違え、だよな?
「聞こえなかったか? フェイクにエンチャントをお願いしたい。フェイクはどこなんだ?」
騎士団長様が再びそういって、オレははっとなって目の前の状況を分析した。
その結果は、やはり驚きだった。
な、なんだと!? 一体何がどうなっているんだ!?
「ど、どうしてそのような……?」
「いや、なに。オレはエンチャントに書かれた魔力情報を見る才能はないのだが……この剣に施されたエンチャントが素晴らしいとオレの鍛冶師が言ったんだ。ならば、一度会ってみたいと思い、こうしてきたのだが……どいつがフェイクなんだ?」
この場にフェイクはいない。
騎士団長の言葉に一瞬驚いたが、すぐにオレは笑顔を返した。
「フェイクはあまり才能がなく、ただいま休暇を取っているんです」
「何? それに才能がないというのはどういうことだ?」
「はい。恐らくフェイクのエンチャントを褒めているのはたまたまよくできたものだったのではないでしょうか?」
フェイクには数十本、数百本という単位で作らせている。たまたまうまくできたものがあってもおかしくはない。
フェイクのエンチャントなんて興味がなくてまったく見ていないので、彼のエンチャントがどの程度のものかは知らないが、恐らくオレの発言は大きく外れることはないだろう。
「……まあ、そういう可能性もなくはないが。まあ、いい。今回はフェイクとやらにお願いしてみたい。とりあえず、この剣をお願いする。休み明けで良いので、エンチャントを頼んだぞ」
受け取ったオレはすぐに笑みを浮かべた。
「……代わりにオレが作りましょうか? オレはこの鍛冶課の鍛冶長です。もっとも才能がありますよ。もちろん、フェイク以上の腕前でございます」
「休みといっても、二日、三日程度だろう? 急ぎではないし、復帰してからで構わないさ。フェイクによろしく頼むよ」
「……」
気に食わない。しきりにフェイクの名前をあげる騎士団長様に思わず舌打ちをしたくなったが、仕方ない。
「承知いたしました。フェイクにお願いしますね」
「ああ、頼んだぞ。それじゃあ、忙しいところすまなかったな。出来上がったら近衛騎士に伝えてくれ」
騎士団長様はそう言い残し立ち去って行った。
……まったく。脳筋が。
まさか、あそこまでしつこくフェイクを推すなんてな。魔力情報を見ることも出来ないくせに、何を言っているのだか。
それと、騎士団長様のお抱えの鍛冶師というのも怪しいものだな。
フェイクが優秀だなんて言うなんて……。フェイクのエンチャントが優秀だというのなら、オレのは何て言うんだ? それこそ、歴史に名前を残すエンチャントとでも言うのだろうか?
……ああ、良いことを思いついたな。
オレのほうにセイターがやってくる。
「どうするんですか?」
「どうするも何も、簡単だ。こんなチャンス二度とないのだからな」
「……そ、それでは何を?」
「フェイクの代わりにエンチャントはオレがやろう」
「えぇ!? だ、大丈夫ですか!?」
「ああ。フェイクのエンチャントで優れたものなら、オレがやればまず間違いない。そうなれば、騎士団長様お抱えの鍛冶師にオレはなれるというわけだ」
見事な作戦を披露すると、セイターが目を見開いた。
他の鍛冶師たちはそんなオレを羨ましがるように見てくる。
「ずるくないか?」
「そうだ。依頼は鍛冶課に持ってきたんだぞ?」
「フェイクごときのエンチャントなんて誰でも超えられるだろ?」
「ああ。オレたちでは見ることが出来ないくらい使い物にならないエンチャントだったからな」
何かうるさくわめく彼らに、オレは首を横に振った。
「このチャンスをつかむのは、この鍛冶課をまとめ上げてきた人間のものだ。おまえたちに今回の仕事は譲らんよ」
この仕事はオレのものだ。
騎士団長様のお抱えの鍛冶になれれば、それこそ歴史に名前を残すような存在になれるだろう。
……オレは伯爵家の五男として生まれ、大した立場も与えられなかったがまさかここに来てこんな大チャンスが生まれるとはな。
騎士団長様お抱えの鍛冶師になって、それから――。
バラ色の生活を想像し、笑みを抑えきれない。
羨望のまなざしを向けてくる同僚たちに見せつけるように、オレは剣を握る。
オレは騎士団長様から渡された剣へのエンチャントを開始した。
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