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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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201/202

第42話


 今度はレフィだ。


「フェイク様。ただいま、アリシア様の着用が終わりましたが確認しますか?」

「……分かりました。確認に向かいます」


 緊張、してきたな。

 ドキドキとした気持ちとともにそう返すと、レフィが笑みとともに頷く。


「何か違和感があればご指摘していただきたいですし、リガード様もご一緒に確認お願いします」

「分かった。フェイク、行こうか」


 俺はリガードさんに頷き、席を立った。


 リガードさんとともに歩いて行ったのは一つ隣の部屋となる。

 入り口には護衛として使用人が立っていて、こちらに気づくとすっと扉の前から動いてくれた。


 俺が扉を開けて中へと視線を向け……思わず固まる。

 そこには、ウエディングドレスに身を包んだアリシアがいたからだ。


 白を基調とした全身を覆うウエディングドレスは、アリシアの全身を覆っている。

 扉の音に気づいたのか、アリシアもこちらを向く。

 落ち着いた表情からこちらへと視線を向けてきたアリシアは、普段とは別種の美しさを兼ね備えており、見惚れていた。

 しばらく扉を開けたままで呆けていると、アリシアが微笑を浮かべた。


「フェイク、すごい似合っている」


 その言葉ではっとして我を思い出す。

 あまりにも、見とれすぎてしまっていた。

 アリシアは女神のように……いや、女神を超えた美しさでそこにいて――とにかく俺は何か言わないといけないと思い、口を開いた。


「アリシアも……その、凄い似合ってて、見とれたよ」

「そう、かな? ……ありがとう」


 アリシアは朱色に染まった頬を隠すように掻いていた。

 赤色とウエディングドレスの白が溶けあうようにして、アリシアの美しさをさらに数段上げる。

 ……ダメだ。直視しているとぶっ倒れそうだ。


 嬉しそうに微笑みアリシアから、わずかに視線を外す。

 アリシアにウエディングドレスは……凶悪すぎる。

 想像していたとはいえ、その想像の何倍もアリシアは美しかった。


 それにしてもさっきの自分は恥ずかしいことこの上ない。

 リガードさんがニヤニヤとした顔でこちらを見ていることからも、自分がどんな風に見られているのか想像できてしまう。


「どこか気になる場所はありますか?」


 レフィの言葉で、俺たちがここに来たことを思い出す。

 言われてから改めてアリシアへと視線を向ける。アリシアもまた俺の方を観察するようにじっと見てくる、


 ……駄目だ。可愛い、美しい以外の言葉が思いつかない。

 全身を眺めてみたが、素人目にはおかしな部分はなさそうに見えた。


「特に、問題ないと思います」

「そうですか。アリシア様はどうでしょうか? フェイク様の服装で気になる点はございますか?」

「ううん。私も特に問題ない、と思う」


 アリシアはわずかに照れたような調子でそう言って、視線を外す。

 ……俺の服装が似合ってくれている、と感じてくれているのならうれしい限りだ。

 小さく深呼吸をしてから、俺はレフィを見る。


「とりあえず……これで」

「はい。大丈夫です。フェイク様も一度着替えていただきますので、お手数ですがもう一度更衣室に戻って頂いてもよろしいですか?」

「わかった。それじゃあ、アリシア。またあとで」

「うん」


 呼びかけると、アリシアが小さく手を振った。

 俺はまだどこかドキドキと高鳴る胸を悟られないよう、足早に部屋を後にした。

 リガードさんとともに廊下へと出たところで、深呼吸。

 ……凄い、という言葉しか出て来ないくらいには、アリシアの姿は美しかった。

 おそらくだが、あのアリシアを見て。そう思えるほどの美しさだと自負していた。


「フェイク、なんだか緊張していたな」


 にやにやとからかうように笑うリガードさんに、苦笑を返す。


「……そりゃあ、そうですよ。好きな人のウエディングドレスなんですから」

「確かに、アリシアは美しかったな。ウエディングドレスがあそこまで似合う人もそうはいないだろう。少なくとも、シーフィには無理だな」

「……いや、シーフィさんも似合うと思いますが」

「世辞はいいぞ、世辞は。シーフィのようながさつな女に似合うはずがないだろう」


 そう思っているのはリガードさんだけだろう。

 まあ、なんだかんだ言ってリガードさんもシーフィさんが着ている姿を見れば、別の反応を示すだろう。

 ……あー、でも、「意外と似合うな……」とか平然と本人の前で言って怒られている姿も浮かんでしまうな。


 ひとまず俺は自分の更衣室へと戻り、そこでタキシードを脱いだ。



 脱いだ瞬間は、どこか解放感があった。

 体にはぴったりと合っていたのだが、やはり正装を身に着けているという部分から、体が強張っていたのかもしれない。


 俺のタキシードを受け取った使用人が嬉しそうに微笑む。


「フェイク様。いよいよですね」

「……そう、だな」

「我々使用人一同もお二人の結婚式、楽しみにしておりますから」

「恥をかかせないよう、頑張るよ」


 苦笑しながら使用人にそう答え、部屋を出る。

 廊下で待っていたリガードさんが口を開いた。


「これで、あとは本番を迎えるだけだな」

「そうですね」

「どうだ? 心境的には落ち着いたか?」


 リガードさんの言葉に、俺は小さくうなずいた。


「もちろん、緊張もありますが……精一杯、楽しみたいと思います」


 俺の回答に、リガードさんは笑顔を浮かべる。


「ああ、そうするといい。楽しみにしているからな」


 ……いよいよだ。

 衣服の最終調整はほぼ必要ないのだから、あとは式場の設営準備さえ終われば俺たちの結婚式が開かれることになる。

 あと、一ヵ月もないだろう。

 先ほどリガードさんに言った通り、心持ちとしては不安や緊張はある。

 だが、それ以上に……笑って終えたいと思った。



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