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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第34話




 ちょうど、オーダー依頼のあった短剣を作り終えた俺は、額の汗をぬぐいながら一息をついた。

 まだまだたくさんあるんだよな。

 これだけオーダーしてもらうのは嬉しいのだが、あまりにも多すぎてすぐに対応できないのだけがネックだ。

 オーダーが多く、俺に武器を作ってほしいという人たちに、素早く届けられないんだよな……。

 いくら俺でも、さすがにそんな高速で作り上げることはできないからな。

 そんなこんなで今は店の営業をアリシアに任せつつ、俺は店の方の鍛冶工房で鍛冶を行っているという状況だ。


 ちょうど出来上がった武器の確認をし、問題がないのを確認したところで店の方へと持っていく。

 その途中だった。店の手伝いをしていたレフィがこちらへと向かってきていた。


「フェイク様。レベルト様が来られていますが、どうしましょうか?」

「レベルトが? ちょうどそっちに行く予定だったからこのまま対応するよ」

「かしこまりました」


 レフィがすっと礼をし、俺の背後についた。

 それにしてもレベルトか。

 わりと頻繁的に顔を出してくるなんて、レベルトって案外暇なのだろうか?

 まあでも長男ではないと言っていたし、自由が利く立場なのかもしれない。


 そんなことを考えながら店へと向かうと、ちょうどオーダーの品を受け取りに来ていた冒険者と目が合った。

 レベルトも同じフロアにいて目が合ったのだが、彼はすぐにこちらに声をかけてこず冒険者のほうを指差していた。

 ……後でもいいよ、ということだろう。会釈だけをしてから俺は冒険者のほうに近づいた。

 向こうもこちらに気づいたようで声を上げる。


「あっ、フェイク様! お疲れ様です!」


 その人は、オーダーの品を受け取りにきた冒険者だ。

 ただ、ちょっと早い。


「お疲れって……結構早いね。受け取り予定は午後の予定だったと思うんだけど……」


 オーダーに関しては余裕をもって、一日十本程度にしている。

 ただ、俺の調子次第にもよるがそれ以上に作れることもあったので、早く作れた場合は受け取りに来てもらうように連絡していた。

 ……まあ、あんまり作ってばかりだと「ちゃんと休んでね」とアリシアからの注意が入るんだけど。

 俺の指摘に、冒険者は申し訳なさそうに頬をかいていた。


「そ、その……待ちきれなくて」

「なるほどね。ちょうど出来上がったところだったから良かったよ。冒険者頑張ってね」


 まだ彼は見習いに近い冒険者だ。

 魔物とは何度か戦ったことがあるそうだが、どれも先輩の冒険者とともに行っていたそうだ。今回、俺の武器を使って初めて一人で魔物と戦う、と話していた。

 夢を聞いたところ、まずはEランク冒険者を目指したいと話していた。


 だから、使用した魔鉄は彼に合わせてのイーレア魔鉄だ。

 俺の持てる力を注いで作った長剣だが、彼が過信しすぎないように最善の注意を払った一品だ。

 ……鍛冶師はただ良いものを作るだけではない。相手に合わせて、適切な武器を届けることが鍛冶師には大事だ。

 まだまだ気づかされることがたくさんあるんだよな。


「は、はい!」


 彼の思いを込めた長剣を手渡すと、嬉しそうに頷いてくれた。

 鞘に収まった剣に頬ずりをしながら店を立ち去っていく彼の背中を見ていると、レベルトが気さくに手を挙げた。


「フェイク、久しぶり。元気そうで何よりだよ」

「まあな。レベルトも元気だったか?」

「ふふん。聞いて驚くなよ? この前領内に現れたAランクの魔物とそれはもう死闘を繰り返してね。もう凄い戦いだったんだよ。キミにもぜひとも見てもらいたかったよ」


 ……さすがに、その現場にいたらひやひやしてしまったと思うので、見せられなくて良かったかも。


「そうだったのか。それで、どうだったんだ? 怪我とかはしてないか?」

「はは。キミの剣のおかげで無事討伐できたよ。五体満足さ」


 まさか死んでしまってここにいるのは幽霊……だなんてことはないようだ。

 レベルトが笑みとともに腰に差した剣をアピールしてきた。

 結構前に俺が造った剣がそこにはあった。

 当時と今では俺の技術も変わっているとは思うが、それでも俺の自信作の一つであるのは間違いない。


「それなら良かったよ」

「そのときに討伐に参加した冒険者たちにフェイクの剣をアピールしたからか、結構色々な街から冒険者も来ているんじゃないかい?」

「……あー、いたかも」


 「別の街から来ました!」という人も何名かいたと思う。レベルトのおかげでお客さんが増えたというのなら、嬉しいことではある。

 俺が頷いていると、レベルトはにやりと口元を緩めた。


「ふふんっ、感謝したまえよ。っとと、その話をしにきたわけじゃなかったな。キミ、何やら面白いことになっているね」

「面白いこと?」

「結婚、するんだろう?」

「……まあな」


 すでにレベルトの耳には入っていたか。

 俺が冷静に頷くと、レベルトは「あれ?」という様子でじーっとこちらを見てきた。


「なんだ。思ったよりも落ち着いているんだな」


 ここまで落ち着けるようになったのは、最近なんだけどね。

 どうやらレベルトはからかう気満々だったようで、少し不満そうである。

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