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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第28話






 鍛治工房へと向かうため、俺は屋敷の入り口でアリシアを待っていた。

 しばらくすると、アリシアがこちらへとやってきた。


「フェイク、それじゃあ行こうか」

「ああ、別にいいけど……」

「どうしたの?」

「いや、まだ時間早くないかって思ってさ」


 店を開ける準備は昨日の閉店のときにほとんど済ませている。

 あとは店に行って最低限の確認をすれば、すぐにでも開けられる。

 だから、もう少し出発が遅くても大丈夫ではないかと思っていたのだが……。

 しかし、俺の問いかけにアリシアは苦笑とともに首を横に振った。


「たぶん途中結構足止めをくらうはずだから、このくらいの時間のほうがいいと思う」

「足止め……?」

「うん。フェイクは、私とフェイクが結婚するっていうのが街の人たちにも伝えられているのって知っている?」

「ああ、昨日訪れたイヴァスから聞いたな」


 いきなりだったから驚かれたものだ。

 俺の言葉に、アリシアは頷いていた。


「それから、私外出てないし、ましてやフェイクと一緒に出てない」

「そういえば、そうだな」

「だから、たぶん領民の人たちに色々と聞かれると思う」

「……なるほど。それで、多少足止めをくらうってことか」


 領民の人たちは、俺の顔まではまだ覚えていないかもしれないが、アリシアのことはよく知っているだろう。

 そのアリシアと俺が並んで歩いているとなれば……そりゃあ、領民は声をかけてくるだろう。

 他の街の貴族はどうなのかわからないが、アリシアは領民にかなり近い立場で接することが多いのは知っている。

 アリシアの役目は領民の声を拾い上げ、当主に届けることだ。

 だから、アリシアが街に出るときは領民と話をしながら町を歩いていく。

 今回の目的は店での仕事だが、それでも結婚式の話を聞いた領民たちが何もアリシアに声をかけないということはないだろう。


「一応、お店の開店時間前には間に合うようにするし、あんまり時間がかかる場合はそれを理由に歩いていくこともできるけど、ある程度街の人たちと交流をとるのも大事だから」

「……そうだな」

「迷惑かけちゃうかもだけど、ごめんね?」

「いや、全然大丈夫だ」

「それじゃあ、いこっか」


 アリシアがそう言って手を握ってきたので、俺も軽く握り返してからアリシアとともに屋敷の外へとでた。


 俺たちの移動を妨げないようにといった様子で、背後からは護衛の人々がついてくる。

 俺たちのすぐ近くでは、日傘を持ったレフィや使用人が少し後ろを歩いている。


 アリシアとともに街を歩いてくと、道行く人たちの注目を集めた。

 ……昨日俺が一人で行動したときよりも、反応は多い。

 たぶん、その理由はアリシアだろうな。


 しばらく歩いていると、こちらへと人が集まってくる。

 街の人たちから頭を下げられ、アリシアが頭を下げ返す。

 俺もアリシアに合わせるように、遅れて頭を下げる。


 これが、アリシアが言っていた領民の対応というものだろう。

 まだ結婚したわけではないので、少しばかり俺としては立場が浮ついているため、どのくらいの態度でのぞめばいいのか判断が難しい。

 あんまり下手に出すぎても問題だろうし、横柄に振る舞えばそれはそれで問題だよな。


 ……とりあえず、今の所はアリシアに任せながら様子を見よう。


 俺たちの周囲に街の人たちが集まってくるのに合わせ、念のためとして兵士たちも集まる。

 兵士たちは俺たちの左右につきそい、それから街の人たちが声をかけてきた。


「アリシア様。ご結婚されるんですよね?」

「うん。こちらにいるのがその予定の相手のフェイク」


 すっとアリシアが俺のほうに手を差し出してきた。


「フェイクです。よろしくお願いします」


 下手に出過ぎないようにしながら、俺は丁寧語で答えた。

 このくらいのほうがいいか? という様子でアリシアの顔色を伺うが、特に問題なさそうだ。


 俺が短く自己紹介をすると、一部から声が漏れた。


「フェイク様って確かあれよね!?」

「この前、魔物を追っ払うために力を貸してくれたとか!」

「そうそう。Sランク冒険者様のお手伝いみたいなことしたんだよな?」


 そんな感じの会話が聞こえてくる。

 今目の前にいるのは主に一般人というか……戦闘とは無縁そうな人たちだ。

 俺のことは、冒険者には結構知れ渡っているようだが、さすがに一般の人となると本当に名前くらいしか知らないという認識で良さそうだ


「それにしても、アリシアちゃんが結婚かぁ……」

「それもこんなイケメンくんとなんてねぇ……」


 アリシアは昔から街の人たちと交流があるのか、そんな声が漏れ聞こえてきた。

 俺のことを褒めてくれたのはお世辞も入っているだろうな。

 こうして褒められても、苦笑を返すくらいしか俺にはうまい返しが思いつかない。


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