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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第26話



「え、えーと、それで大丈夫ですか?」


 イヴァスが不安そうに問いかけてきて、俺は急いで頷いた。


「ああ。大丈夫だ。イヴァスならきっとSランク冒険者にもなれるはずだ」


 イヴァスを戸惑わせてしまったな。

 俺の言葉にイヴァスが驚いたようにこちらを見てきた。


「あ、ありがとうございます! そんなふうに真面目に言われたことなかったので、とても嬉しいです!」

「そう、なのか?」

「はい……他の冒険者の人と組むこともあるんですけど、やっぱり馬鹿にされることが多いですかね。だから、嬉しいです! ありがとうございます!」


 だから、少し口にするのに迷っているような気がしたのか。

 確かにSランク冒険者はそう簡単になれるものではない。

 だが、人の夢を馬鹿にする権利が他者にあるわけがない。夢を否定できるのは、きっと自分以外にはいないはずだ。


「……まあ、無茶はしないようにな?」

「分かってます! それで短剣はどのくらいかかりますかね?」

「今夜作るから明日取りに来てくれ。それまで仮の短剣でも貸し出そうか?」


 持ってきた武器の中には短剣もあったので問いかけると、イヴァスは首を横に振った。


「大丈夫です! 今日は一日休みにする予定でしたから!」

「そうか。それじゃ、まあ明日な」

「分かりました! よろしくお願いします!」


 イヴァスがぺこりと頭を下げ、元気よく立ち去っていった。

 イヴァスは誤魔化すような口調でSランク冒険者になりたいと言っていたが、それでも彼の目は本気だった。

 彼の覚悟に負けないような立派な短剣を作らないといけないな。

 屋敷に戻れば、ビイレア魔鉄もあるだろう。


 あとはこの素材とイヴァスの覚悟を剣に込めて作れば……うん、明日には確実に間に合うな。

 そんなことを考えながら、店内の椅子に座りお客さんを待っていると。


「イヴァスの言ってた通り、フェイク様帰ってきてたんだ!」

「マジかよ! 早くオーダーしないと!」


 ゾロゾロと冒険者たちが店へと訪れてきた。

 訪れた冒険者たちの話を聞くに、早速イヴァスが皆に話してくれたようだ。

 本当イヴァスには何かと助けられてるな。

 わざわざ休みの日に宣伝までしてくれて、感謝しかない。

 店内へと入ってきた冒険者に、俺は微笑を返す。


「いらっしゃい。今日はそんなに商品ないけど、自由に見ていっていいからね」

「あっ、イヴァスから聞いたんですけどオーダーもいいんですか!?」

「ああ。大丈夫だよ」

「それなら、オレもお願いしたいんですけど――」

「分かった。それじゃ一人ずつ対応していくからこっちに並んで」


 そういうと、訪れた冒険者たちが皆、俺の前に並んでいく。

 これは、今後はオーダーでの仕事をメインにした方がいいかもな。

 そんなことを考えながら、俺は皆の依頼を受け参考に今持っている武器を預かっていった。




 それからも嬉しいことにお客さんはゾロゾロときたため、対応できる範囲で話を聞いていった。


 明日までの製作が難しい人は予約という形で引き受けていった。

 武器を預かるのは前日にしておけば、冒険者の人もぎりぎりまで活動しやすいだろう。


 それらの作業を終え、俺は屋敷に戻ってきた。

 とりあえず、食事までに今日受けてきたオーダーのいくつかを製作しておくか。

 そんなことを考えながら鍛治工房へと向かおうとすると、屋敷に入ったところでアリシアに声をかけられた。


「おかえりフェイク。店の方いけなくてごめんね」

「いや、別に気にしないでくれって。それより、これから夕食までの間にオーダーを受けた武器の製作をするから」

「そうなんだ。もうそんなに依頼来たの?」

「まあな。とりあえず明日の朝までに5本くらい作ろうと思ってる」


 俺が答えるとアリシアは驚いたように目を開いた。

 それから苦笑とともに頷いた。


「そうなんだ。無理はしないでね?」

「分かってるよ」


 アリシアに心配をかけるようなことは絶対にしない。

 俺の言葉を受け、アリシアは頷いた。


「それじゃ、夕食の時間になったら迎えに行くね」

「了解」


 別に迎えがなくても夕食の時間には戻れる……とは思ったが前科があるからな。アリシアは俺が熱中しすぎると思ってそう言ったに違いない。

 ……必ず、夕食までに戻ってやろうじゃないか。

 頷きながらそんな決意をした俺は、それから部屋に一度寄って服を着替え、屋敷内の工房へと向かった。


 工房へとついた俺は早速、鍛治を開始する。

 今日はさっきも言ったが五本程度作る予定だ。

 借りてきた武器とそれぞれのランクや金額と相談して準備された素材たち。


 依頼を受けるにあたり、俺は皆になぜ武器のオーダーを頼むか聞いてみた。

 それは自分の儀礼剣のためでもあったがより相手の求める剣を作るためでもあった。


 夢はそれぞれごとに違うし、それぞれごとに夢の大きさも違う。

 それは当然のことだろう。


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