表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

178/202

第19話


「もちろんです」


 俺が答えるとゴーラル様は僅かに首を縦に振る。


「ありがとう。……それにしても、フェイクがリガードにそう感じたということは、相変わらずの部分はかなりあるようだな。アリシア、どうだった?」


 ちらとゴーラル様がアリシアを見る。

 アリシアはゴーラル様の問いかけに、苦笑していた。

 その表情から、ゴーラル様は色々と察したようで、アリシアと似たような顔になっている。


「ちょっと激励はしてきたし、シーフィがいるから改善してほしい……って感じかな」

「シーフィも残ったままか。オストルア家のほうも話をしてきたが、まあリガードと一緒にいてくれたほうが安心か」

「うん、安心」


 シーフィさんのことというよりもリガードさんに対して言っているのだろう。

 もちろん、シーフィさん自身がリガードさんと一緒にいたほうが、精神的な面で落ち着けるというのもあるかもしれない。

 しばらくそんな話を和やかにしていると、ゴーラル様が改めて真剣な目つきとともに俺たちを見てきた。


「さて、リールナムから戻ってきてもらった理由だが……二人とも手紙は確認してくれたか?」


 もちろんだ。

 俺にとっては、これが本題だった。

 俺とアリシアは顔を見合わせた後、ゴーラル様を見た。


「うん。私たちの結婚式の話、だよね?」

「ああ、一応結婚式の詳しい日程については六か月後程度と考えている。二人の服に関してはすでに作り始めてもらっていて、それの出来上がり次第で前後はするだろうが、そのつもりでいてくれ」


 事前に聞いていたとはいえ、六か月後か。

 ……長いようであっという間だよな。

 俺が宮廷鍛冶師をやめてから、すでに三か月ほどが経過しているが、その間だってあっという間だった。

 残り六か月なんて、準備をしていればすぐに来るだろう。


「分かりました」

「うん」


 俺とアリシアはゴーラル様の言葉に合わせて頷いた。

 俺の表情が強張っていたのだろうか。

 ゴーラル様が言葉を続ける。


「まあ、安心していい。何か特別なことをするということはない。結婚式の当日に向け、事前に段取りの確認をするとはいえ、それも早くて二か月前か、一か月前にでも始めればいいだろう。来客の予定も、バーナスト家と近しい家の者だけにする予定だから、そう緊張しなくとも大丈夫だ」


 ……もしかしたら、俺のことを気遣っての対応なのかもしれない。

 反射的に頭を下げる。


「ありがとうございます」

「いや、もともと誰と結婚するとしても、規模はそのくらいになる予定だ。気にするな」

「はい」


 頷くとゴーラル様も同じように首を縦に振った。


「話は以上になる。二人とも、今日は旅で疲れているだろう。もう休んでいいからな」


 元々、俺たちにこの話をするために呼んだのだから、これで話は終わりなのだろう。

 ただ、俺も話したい事があった。

 一段落がついたのを確認したところで、俺は小さく手を挙げた。


「あの、ゴーラル様。一つだけいいでしょうか?」

「なんだ?」


 俺はそこでこほんと一つ咳ばらいをする。

 ……わずかばかりの緊張を胸に抱きながら、俺はゴーラル様をじっと見た。


「まだ、俺は直接ゴーラル様に話をしていなかったので、改めて言わせてください」

「改めて? 一体何の話だ?」


 ゴーラル様が首を傾げ、アリシアも同様にこちらを見てきた。

 この話はアリシアにもしていなかったので、疑問といったところだ。

 俺はそんな二人の視線を受けたところで、すっと頭を下げる。


「俺はアリシアのことが好きです。だから、俺とアリシアの結婚を認めてください」


 俺はそう宣言してから顔を上げる。

 ……すでに結婚式の話も出ているのに何を言っているんだ、と思われたかもしれないが、俺としてはまだそれを正式には伝えていなかった。

 これまでの関係はすべてアリシアが主導であったり、ゴーラル様が進めていって出来上がったものばかりだ。


 だから、改めてゴーラル様に伝えたかった。

 自分の気持ちが本物であることを。

 俺の言葉を受けたゴーラル様はじっとこちらを見てきた。


「鍛冶師としてももっと成長します。何より、アリシアへの想いは本当です。ですから、お願いします」


 事前にいうことは色々と考えていた。もっとかっこいい言葉も考えてはいたのだが、いざこの場になって俺の口から出てきた言葉は、支離滅裂なものだったかもしれない。

 自分の想いのままに、伝えてからだ。

 今更訂正するほうが情けないだろうと思い、俺はすっと顔を上げてゴーラル様を見た。

 視線があったゴーラル様はいつもの厳しい表情とともに黙ってこちらを見ていた。

 それから、ふっと息を吐いて口を開く。


「貴族の結婚に――」


 そう前置きをしたゴーラル様は、じっとこちらを見てきた。


「愛などはあまり優先される要素じゃないことが多い……いや九割以上はそうだろうな」


 ゴーラル様の言葉に、俺は頷いて答える。


「……そう、なんですね」


 もちろん、そういった話は良く聞いていたので知っているが、自分が経験したことはないのであくまで受け身な返答を行う。


「平民からすれば馴染みは薄いだろう。貴族は家同士の関係が大切で、その関係の構築に最適なのが子同士の結婚だからな」

「はい」

「だが、今回は少し違うな」


 そう言った後、ゴーラル様の目つきが鋭くなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ