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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第16話



 思えばこの街にも一ヶ月近くいたことになるのだが、短いようでとても濃い時間だったなぁとか考えていると、


「ほ、ほらアリシア。このままだとお兄ちゃん、シーフィにいじめられちゃうぞ」


 だんだんと情けなくなってきてしまったリガードさんにアリシアは首を横に振ってこたえた。


「大丈夫、シーフィなりの愛情表現だから」

「ちょ、ちょっとアリシア! 変なこと言わないで」


 アリシアの発言に、シーフィさんがたまらずと言った様子で声を張り上げる。

 シーフィさんはそう言っているが、おそらくリガードさん以外の皆がアリシアに同意見だろうと思う。


「変なことは言ってない。事実だけ、だよ」

「あ、愛とかそ、そういうのじゃなくて……! ああ、もう!」


 シーフィさんはアリシアに言い返すかわりに、リガードさんから離れた。


「まったく……騒がしい奴だ。お別れの時間くらい、しんみりとはできないのか?」

「……あんたねぇ。しんみりってほどの場面じゃないでしょ? どうせまたすぐに会えるし、あんたにとっては義理の弟になるのよ?」

「だとしてもだ。寂しいものは寂しいものだぞ」


 リガードさんがちらちらとシーフィさんへ視線を向け、それから呟くように言った。


「……フェイク。どうだ? シーフィも一緒に連れて行ってやってはくれないか? アリシアも一緒にいたいだろう?」


 リガードさんはぼそりといいながらも、俺とアリシアに伝えるような大きさだったため、シーフィさんにもしっかりと聞かれたようだ。

 アリシアの呆れたような顔とは裏腹に、シーフィさんは腕を組み、不満げに唇をつんと尖らせる。

 一見すれば怒っているようにも見えるが、寂しそうな雰囲気だった。


「あんた……あたしと一緒がそんなに嫌なわけ?」

「察しがいいな」

「……本当に嫌なの?」


 シーフィさんが再度問いかけると、さすがにリガードさんもシーフィさんの様子がおかしいことに気づいたようだ。

 慌てた様子で両手と首を横に振る。


「い、いや……その。別に本気で本当に嫌というわけではなくてな……。ほ、本当にアリシアと別れてしまったら寂しいだろうと思ってな?」


 リガードさんの言葉も、すべてが嘘というわけではないだろう。

 半分くらいは、シーフィさんに叱咤されるのを嫌っての提案だっただろうが、シーフィさんのことだって気遣っているはずだ。


「そう……なの? あたしのこと、気遣ってくれたってわけ?」

「あ、ああ……!」


 空気が変化したのをすかさず察したシーフィさんに、すかさずリガードさんは首を縦に振る。

 全力の肯定に、徐々にシーフィさんの表情も穏やかなものへと変わっていく。


「そ、そうなのね……ま、まあでも……あたしは別にその……あんたと一緒にいる時間だって、その……好きよ?」

「ああ、オレもだ!」


 リガードさんが大きく頷くと、シーフィさんが頬を赤らめながら嬉しそうに前髪を触っていた。


「そ、そうなの?」

「当たり前だ。仕事を手伝ってくれることもあるしなっ」

「え、ええ……当然よ」

「それに、面倒なこととかも頼み込めば引き受けてくれるしな!」

「ただの都合の良い女って言いたいわけ!?」

「ひっ!? な、なんで怒っているんだ!」


 リガードさんが短い悲鳴を上げながらも、体を僅かにのけ反らせる程度で済んだのはやはり人前だからだろう。

 そんな二人のいつもの調子に、俺とアリシアは顔を見合わせて苦笑する。

 なんだかんだ言って二人は仲いいよなぁ。

 それから、アリシアが声をかけた。


「二人とも、イチャイチャしたいなら家のなかでしてるといい」

「イチャイチャなどしていないだろうっ」「イチャイチャなんてしてないわよ!」


 二人はほぼ同時に声を上げ、シーフィさんはそれから腕を組んでそっぽを向いた。

 完全に拗ねてしまったようだが、リガードさんならどうにかするだろう。

 リガードさんは一度咳ばらいをし、それから口を開いた。


「二人とも。バーナストまでの道中はまあ護衛もいるから大丈夫だとは思うが、気をつけてな」

「ありがとうございます」

「それと、親父によろしくな」

「リガードさんは立派に長男として成長している、と伝えておけばいいですか?」

「……そ、それはまあ控えめに、できれば情けなくて家を継ぐのは無理そうだと伝えてくれると嬉しいが」

「そんな嘘はつけませんよ」


 俺の言葉にアリシアもこくこくと頷いている。

 くすくすと近くにいたオルレーラさんも笑っていて、この場に味方がいないと悟ったリガードさんはため息のあと、腰に片手をあてる。

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