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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第14話




 ベルトルの顔を脳裏に浮かべながら、アリシアやゴーラル様が怯えていた様子を思い出しながら頷く。


「その霊とかってよく分からないのだけど、私ってね。案外霊感が強いのかもしれないのよね。時々声が聞こえて……アリシアを想うような……不安がるようなそんな声が。でもね、最近はその声が聞こえなくなってきたのよ」

「それが、さっきのリーンさんが認めてくれたことに繋がるってことですか?」

「ええ。きっと、リーンもあなたやアリシアのことを見て、未練もなくなってきたのだと思うのよ。だから、あなたのことを認めたんじゃないかって私は思うのよね」


 ドヤ顔とともに腕を組んで頷くオルレーラさんに

 もしもベルトルのことがなければ話半分程度に聞いていたかもしれない。

 ただ、もしもオルレーラさんの言うことが本当なら――。

 ……ますます、アリシアを悲しませないようにしないといけない。


「オルレーラさん。今日一日付き合ってもらって、ありがとうございます」

「ふふ、それは私もよ。久しぶりにお出かけができて楽しかったわ」


 すっと頭を下げると、オルレーラさんが嬉しそうに笑う。


「アリシアちゃんはあなたのことが大好きよ。だから、私はあなたとアリシアが結婚してくれたら、とっても嬉しいわ。貴族が自分の好きな相手を伴侶に選ぶっていうのはなかなか難しいの」

「それは……そうみたいですね」

「だから、あなたとアリシアちゃんが結ばれてくれたらアリシアちゃんにとってこれほど幸せなことはないのよね」


 屈託のない笑顔でそういうオルレーラさんに、俺は照れ混じりであったが頷いた。


「……はい」

「だから、アリシアちゃんのこと、よろしくね」


 オルレーラさんの言葉に、中途半端な返答はできない。


「……必ず、幸せにします」

「それ、私だけじゃなくてアリシアちゃんにも伝えた?」


 突然の指摘に、俺は首を横に振る。


「い、いえまだです」

「まだってことは伝えるのよね? それじゃあなるべく早くね? リガードくんもそうだけど、肝心なことを伝えないんだから」


 いつもと同じような笑顔だったけど、確実に圧力があった。

 有無を言わさぬ迫力に俺は頷くしかない。

 



 夕陽も傾き始め、暗くなり始めたころ、屋敷へと着いた。


 屋敷へとオルレーラさんとともに入ると、ちょうどシーフィと一緒にいたアリシアと目が合った。


「あれ、フェイクとお母さん? どうしたの?」

「ふふふ、ちょっとフェイクちゃんとデートに行ってきたの」

「ど、どういうこと!?」


 アリシアが驚いたように声を上げ、俺とオルレーラさんを見比べる。

 オルレーラさんはしかし、片手を元気よく上げると、


「それじゃっ!」


 その勢いのまま、逃げ去ってしまう。

 

「ちょ、ちょっとオルレーラさん!?」


 呼び止める俺の声にオルレーラさんが振り返ることはなく、取り残された俺の腕をアリシアについついと引かれる。

 振り向けば、じっとこちらを探るようなジト目で覗いてくるアリシアがいた。


「……デート? どういうこと、フェイク?」

「い、いや……その……ちょっとお出かけに行ってきただけっていうか」

「そうなんだ。どこに?」


 じろーっとした視線とともにアリシアが俺の腕を掴んで話さない。

 苦笑した様子のシーフィさんと目が合ったが、助けてはくれないようだった。


 逃げ去ったオルレーラさんの背中が見えなくなった頃、じとりとアリシアがこちらを見てきた。


「それで……何をしていたの?」


 これは、言い逃れできそうにないな。

 ただ、どうせ話すならしっかりとした状況で話したい。

 一度息を吐いた後、アリシアに話をする。


「その、ちょっとリーンさんのお墓参りに行ってきてな。……詳細に関しては後で話してもいいか?」

「……お母さんの。うん、わかった」


 アリシアはそれでひとまず納得してくれた。

 ホッと胸を撫で下ろしながら、俺は小さく息を吐いた。

 オルレーラさんに伝えたアリシアへの想い。

 今度はしっかりアリシアへと伝えよう。



 リーンさんの墓参りをした日の夜。

 俺はアリシアとともに屋敷の庭を歩いていた。

 後で話をする、と言って切り上げた話をここでするためだ。


 昼は倒れそうなほどの熱を発していたが、夜になると気温はだいぶ落ち着いていた。

 それでも蒸し暑いと感じるが、散歩をする程度なら特に問題ない。


 今は二人きりだ。

 屋敷内ということもあり、誰かが護衛についているということもない。

 いや、まあ……屋敷から見える範囲にいてくれとは言われているので、恐らく見張られてはいるだろう。

 それでも、第三者に丸聞こえの状況ではないだけいいだろう。

 寝巻に上を羽織っただけのアリシアがこちらをみてきた。

 その頬は拗ねたように膨らんでいる。


「フェイク。お墓参りなら、私に言ってくれれば案内したのに」


 ぶすっとした声でそう言ったアリシアに、苦笑する。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] じろ〜の視線よりもジト目で、説明をと思ってそう。 [一言] オルレーラさん 「じゃ、そういう事だから。」 しゅった!片手をあげてシュッパぁ~とその場を後に走って行ってそう。
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