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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第12話

 オルレーラさんの言う通り、墓地までそう時間はかからなかった。

 墓地には墓参りと思われる人が数名いたが、こういった場所ということもあってかとても静かだった。

 墓地の入り口には見張りと思われる兵士もいる。

 墓荒らし、という言葉が脳裏をよぎる。こういったお墓には、生前使っていた物などを一緒に入れることがある。

 それらには、金品なども含まれることもあり……それを狙う輩がいるというわけだ。

 警備の人を見ると墓荒らしなんて、罰当たりをする人がいるという事実を見せつけられているようで残念な気持ちになるな。


「貴族のお墓は奥のほうにあるのよね。ついてきて」


 オルレーラさんの後ろを追うように歩きながら、俺は周囲を眺める。

 平民と貴族で墓地の区画を分けているようだ。

 貴族たちの墓が並ぶ区画まで歩いていくと、それが顕著に分かる。

 墓石自体はどれも似たようなものだが、その周辺が飾られていることが多い。


「……なんというか、立派ですね」

「そうね。亡くなった人があの世で安寧に過ごせるようにってお墓にお金をかけるのよね。まあ、何よりも大事なのは作った後だけどね」

「……あまり、整備されていないのもありますね」

「残念よねぇ。どちらかと言うと、そっちのほうが大事なのにねー」


 そんな話をしながらしばらく歩いていくと、ひときわ綺麗な墓石の前にたどり着いた。

 他の墓と比べても見劣りしないそこには、リーン・バーナストという文字が刻まれていた。

 つい最近手入れをしたのか、とても綺麗なそこには花が添えられている。


「ここが、アリシアの実母。リーン・バーナストのお墓になるわ」

「……はい」


 俺はその墓石をじっと眺めていると、使用人が花を取り出した。

 小さな花ではあったが、それを受け取ったオルレーラさんがこちらにも差し出してくる。

 ……しまった。

 お墓参りと言いながら俺は何も用意していなかった。


「……ありがとうございます」

「いえ、気にしなくていいのよ? この花、リーンが好きだったのよ」


 ふふ、と微笑を浮かべたオルレーラさんはその花を墓石の前に置かれた台座に置いて両手を合わせる。

 俺も同じように花を置き、両手を置いた。 


 リーンさんには花もまともに用意できない情けない男と思われたかもしれない。

 第一印象、最悪じゃないか。

 そんなことを考えながら、俺はここに来た理由を心中で考えていた。


 リーンさんのお墓に来たかったのは、俺がアリシアと結婚式を挙げることについて伝えたかったからだ。

 すでに亡くなってしまっているリーンさんに、俺の気持ちが伝わるのかどうかは分からない。

 でも、以前地縛霊のような存在もいた。

 少しだけでも、俺のことが伝わってくれればと思いながら俺はアリシアと出会ってからの俺の気持ちを伝えていく。


 アリシアへの想いは、止まることなく溢れ出てくる。

 そして最後に考えた気持ちは、


「……やっぱり好き、だよな」


 つい口に出しながら目を開けたところで、俺は一人で来たわけではなかったことを思い出す。

 俺の言葉に敏感に反応したのは隣にいたオルレーラさんだ。

 すでに彼女は祈りを終えていたようで、俺のほうを覗きこんでくる。


「好きってアリシアちゃんのこと?」

「そ、そうですけど……あ、あんまり深くは突っ込まないでください」


 うっかり口から飛び出してしまった言葉なのだ。

 そう追撃されても困る。


「えー、いいじゃない。リーンに気持ちは伝えられそう?」


 ……ここまでバレてしまっては仕方ない。

 俺は恥ずかしさを押し殺しながら、ゆっくりと頷いた。


「……そう、ですね。今までのことや、アリシアとの関係とかについて、話してみましたよ」

「そうなんだねぇ」

「なんですか、その顔は」


 にやにやとした顔とともにこちらを意地悪く見てくるオルレーラさん。


「いや、どんな風に伝えたのか気になってるのよね。なんでさっきの言葉に繋がったのかなってね」


 さらにからかうように言ってくるオルレーラさんから、俺は顔を逸らす。

 だから、俺は一人で来たかったのだ。

 アリシアへの想いが爆発したところを誰かに見られたら恥ずかしいし……。

 しばらくこちらを見てきたオルレーラさんはそれから首を傾げてきた。


「そろそろ屋敷に戻ろうと思うけど、リーンにアリシアへの想いはちゃんと伝えられた?」


 そう言われると、恥ずかしいことこの上ないのだが、俺はゆっくりと頷いた。


「…………はい」


 伝えると、オルレーラさんはにんまりとした笑顔を浮かべた。


「それなら良かったわ。早く戻らないとアリシアちゃんにもバレちゃうかもしれないしね。あっ、でもそれも楽しいかもしれないわね」

「……やめてください」


 二人で出かけたことを問われれば、隠し通せるはずがない。

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