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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第7話


「まあ、そうなんだが。オレの立場からそれを指摘すると、仕事のミスをした人間のあぶり出しが始まるんだ」

「あぶり出し……ですか。でも、仕事のミスであるのは確かですし、いいんじゃないですか?」

「いや……別にこのくらいのミスならそこまでのことではないしなぁ。オレがそこまでしなくてもいいぞ、と言っても徹底的な指導してしまうだろうしなぁ。もちろん、今回の失敗が何かたいそうな事件につながるのなら追及していくべきだが……こんなもの、笑い話で済ませるようなものだろう? なかなかやりにくいんだ」

「……なるほど」


 リガードさんの気持ちも分からないではなかった。

 だが、そうなると現在進行形でたいそうな状況になっている俺たちはどうすれば良いのだろうか。


 二人で顔を見合わせてから、下着を見る。

 可愛らしい熊のような刺繍が施されたどこか幼い子ども向けのような下着だ。

 俺とリガードさんはしばらくそれをじっと見てから、


「フェイク。どっちのだと思う?」

「分かりませんよ」

「なんだと? アリシアの下着とか見たことないのか?」

「……あ、ありませんよ!」


 何を言っているんだこの人は!


「むぅ……オレも、小さな頃に動物の刺繍がついた子ども向けのものなら見たことあるから、アリシアの……だと思う」

「シーフィさんのは、どうですか?」


 さっきのお返しのつもりで聞いてみるが、リガードさんはあっけらかんと言う。


「分からんな。分からんが……シーフィのではない気がするんだ。シーフィは熊よりも犬とか猫のほうが好きだったしな」

「なら、アリシアに渡しに行きますか?」

「そうだな。……それにアリシアのほうがまだ話も通しやすいか」

「……別に、シーフィさんも正直に話せば大丈夫だとは思いますけど」

「フェイクはシーフィのことを何も知らないからそう言えるんだ。奴は怖いんだぞ」


 リガードさんがぴしっとすれば、シーフィさんが怖い状態にはならないと思うが。シーフィさんがリガードさんに怒るのは、だいたい情けない姿を見せたときとデリカシーのない発言をしたときくらいだし。


 なにより、シーフィさんはリガードさんに惚れているんだし。

 そんなことを考えていると、リガードさんはぽんと肩をたたいてきた。


「そうだ。フェイクもアリシアと二人きりになりたいだろう? ならこの下着は、フェイクが渡しに行くといい。なに、オレのことは気にするな」

「気にします。一緒に行ってあげませんよ」

「最近、フェイクもオレに優しくなくなってきてないか?」

「いえ、そんなことありませんよ。行きましょうか」

「……はあ、憂鬱だな」


 憂鬱なのは俺も一緒だ。

 とはいえ、リガードさんには相談に乗ってもらった恩もあるし、俺からできる限りの事情を説明するのがせめてものお礼になるだろう。

 懸念事項は一つ。

 ……いらぬ誤解をされないことを祈るだけだ。





 リガードさんのポケットに下着をねじ込んでから、俺たちは屋敷を歩いていく。

 アリシアの部屋の前までついた俺たちは、深呼吸をしてから扉をノックした。

 中から物音が響く音がして、部屋の入り口が開いた。

 俺を見たあと、それからリガードさんを見て、じろーっとリガードさんを見ている。

 ……どうやら、リガードさんがいることで何か厄介事なのではないかと思ったようだ。


「フェイク? それに……兄さん? どうしたの?」


 俺を呼ぶときと、リガードさんを呼ぶときでは少し声のトーンが違う。

 リガードさんをちらと見ると、表情が険しい。

 ……そんな真剣な表情をしないでください。

 俺の代わりに前へと出たリガードさんは、それから口を開いた。


「アリシア。ちょっと質問なんだが、下着がなくなっているとかないか?」


 真面目な表情とトーンでいう話じゃないです、リガードさん。

 もう少し砕けた雰囲気ならばアリシアもここまで警戒していないだろう。


「いきなり、なに……?」


 リガードさんの突然の問いかけに、アリシアの表情がさらに険しくなる。

 ……確かに、質問の仕方が悪すぎだ。

 廊下にいたままでは誰かに聞かれたときに変な誤解をされるかもしれない。

 ひとまず俺たちはアリシアの部屋へと入り、リガードさんの代わりに俺が話し始めた。


「別に変な意味はなくて……なんかリガードさんが途中で下着を拾ったらしくて……その、アリシアのじゃないかって話で……」

「……あっ、そういうことなんだ。別に、私は減ってなかったと思うけど……今、兄さん持ってるの?」

「ああ、これだ」


 ……アリシアのじゃないのか。

 そんなことを考えていると、リガードさんがポケットからばっと下着を広げた。

 その動きに、アリシアの両目が吊り上がる。


「兄さん、あんまり人に見せびらかすようにしないで」

「いや、それはそうだが……これ本当におまえのじゃないんだな? 昔は可愛い熊の刺繍が入った下着とかを身に着けていたと思うが……」

「そ、それは小さなときのこと。っていうか、余計なこと言わないで!」


 アリシアがちらちらとこちらを見ながら声を荒らげる。

 頬を真っ赤にしながらのアリシアから視線をそらしていると、部屋がノックされた。

 誰だろうか? 視線を向けたところで、控えめに扉が開いた。


「ちょっと。廊下まで声が聞こえてきたんだけどどうしたのよ?」


 そこにはシーフィさんがいた。

 俺やリガードさんに気づいた彼女が腰に手を当てる。

 リガードさんはそこでびくりと肩を上げ、ささっと持っていた下着を背中に隠してみせた。

 その動作がシーフィさんの目に留まったようだ。

 彼女はじとっとした目とともにリガードさんを睨む。


「何よ。今何か隠さなかった?」

「な、ななな何も隠してないぞ?」

「……明らかに動揺しているじゃない。見せなさいよ」


 シーフィさんが詰め寄ると、リガードさんは観念した様子でそろそろと下着を取り出した。

 ……まあ、リガードさんの予想が合っていれば、この下着はシーフィさんの物だろうし。


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