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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
最終章

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第3話



 だが、同時に心にはわずかながらの陰もあり、もやもやとしたむずがゆさのようなものがあった。

 これは不安だ。結婚に対しての嬉しさと同じくらいの不安があった。

 俺のそんな気持ちをよそに、アリシアとリガードさんの話が進んでいく。


「てっきり兄さんが勝手に見たのかと思った」

「さすがにそんなデリカシーのないことはしないぞ」

「でもあんた太陽に照らして透かそうとしていたじゃない」


 シーフィさんのぼそりとしたツッコミを受け、アリシアがジト目を向ける。

 リガードさんは誤魔化すように笑ってから、声を上げる。


「とにかくだ。良かったな、二人とも。結婚式を開き、正式に二人が結婚したとなれば、これで表立ってフェイクもオレの仕事を手伝えるというわけだ」

「フェイクの仕事はあくまで鍛冶だから。巻き込まないで」

「そ、そんなこと言わないでくれよぉ。なあ、フェイク。一緒に領内を盛り上げようじゃないか!」


 すがるような目を向けてくるリガードさんに苦笑する。


「まあ……俺にできる範囲でなら手伝いますけど……」

「そうか、それじゃあ任せたぞフェイク!」

「一緒に、ですよね?」


 リガードさんはぷいっと顔をそっぽに向けた。

 ……まったく、この人は。

 しばらくそんな調子だったリガードさんだった彼は、それからアリシアを見る。


「……まあ、なにはともあれ。本当によかったよ。おめでとう、二人とも」


 リガードさんの優しい声に、アリシアは頬を染めながら頷いていた。

 ……結婚式。


 婚約者なのだから、何事もなければ俺とアリシアが結婚するのは分かっていた。

 だから、結婚式が行われることは別に不思議なことではないのだが……俺はアリシアとともに結婚式を挙げている姿をまったく想像していなかったんだよな。

 

「なんだ。もしかしてアリシアとの結婚は嫌なのか?」


 リガードさんの問いかけに、アリシアが驚いたようにこちらを見てくる。

 彼女の両目は明らかに動揺したように視線がぐるぐるとあちこちをさまよい、それからゆっくりと口を動かした。


「ふぇ、フェイクが嫌なら、全然断っても……いいから。大丈夫、だから」

「ち、違うから。そうじゃないからっ! リガードさん、違いますって!」


 アリシアを悲しませるわけにはいかないので、俺は全力でリガードさんの言葉を否定する。

 ただ、それでもどこかアリシアは不安げにしていたので、俺は言葉を続ける。


「アリシアのことは大好きだ! だから、その結婚が嫌とかそんなことは絶対にないから!」


 恥ずかしかったが、はっきりと言い切った。

 俺の発言にどこかから感嘆の息が漏れ聞こえてきたが、俺はそちらは見ない。

 ……というか、色々な人が見ている中でのこの宣言は、全身が燃えるようなほどに恥ずかしく、周りを見る余裕がないというのが正しいかもしれない。

 誰かと目があったら、俺の恥ずかしい感情がさらに膨れ上がるだろうし。


 俺はちらとアリシアの反応をうかがうと、アリシアは顔を真っ赤にしながら、俯くようにしてじぃっとこちらを見てくる。

 ここでいきなりそんなこと言わないで、と訴えているように見える。


 確かに、この場面で言うことではなかったようにも感じるが……でも、否定しておかないと。

 こうなったのは、リガードさんのせいだ。

 いくらか落ち着いたところで、俺がリガードさんへと視線を向けると、やはりこちらをニヤニヤと見てきていた。

 見世物じゃないんですよ。

 シーフィさんに助けを求めるが、シーフィさんもからかうような顔で黙ったままこちらを見ている。


 ダメだ。ここに味方はいない。

 一度咳ばらいをしてから、俺は改めて訂正する。


「俺がさっき考えていたことは……なんていうか、婚約者だったとはいえ、結婚とか具体的に想像できていなかったんです。アリシアと、そういうことができればいいなっていうのは思っていますけど……なんだか、我がこととして考えきれていなかったんです」


 俺のこの複雑な心境は果たして伝わってくれるだろうか。

 顔を上げてリガードさんとシーフィさんを見る。リガードさんは首を傾げていたが、シーフィさんは考えるように腕を組んでいた。

 それから、口を開く。


「フェイクの気持ちもなんとなくは分かるわ。あたしも、リガードといつかは結婚するんだとは思うけど、結婚したあとの生活とか想像できないしね」

「まあ、何か問題があれば婚約関係もなくなるしな」


 リガードさんがそういうと、シーフィさんがジトリと彼を見る。


「何か問題って何よ」

「例えば、誰かを暴行して捕まるとか……」

「あんた以外にはしないから安心しなさい」

「……なあ、フェイク。これを報告したらどうにかならないか?」

「……ならない、と思いますよ」


 本当に裁こうと思えばどうにかできるかもしれないが、シーフィさんだってじゃれるようなものだし。

 リガードさんとシーフィさんの発言によって少し和んだところで、俺は先ほどの自分の発言に対しての補足を行う。


「それで、さっきの俺の気持ちについてなんですけど……結婚するにしても、まだまだ先のことになると思っていましたし、自分が結婚式を挙げている姿っていうのも……想像したことがなかったんですよ。リガードさんも、シーフィさんとの結婚したあととかって想像したことありませんよね?」

「オレの場合、想像したくない、というのが正しいか」

「何か言ったかしら?」

「じょ、冗談だぞ? シーフィとの結婚はそれはもう立派なものだと思っているさ!」

「はぁ? じゃあどんな結婚生活を想像しているのよ?」

「子どもがいて、仲良く一緒に領地を守っている姿がな!」

「こ、子どもって……あ、あんたその……気が早いわよ」


 まんざらでもなさそうなシーフィさんに、リガードさんは笑みを浮かべる。

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― 新着の感想 ―
[一言] この二人は偽装から始まってるもんな より想像できんだろう
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