第16話 モルガン視点
……おかしい。
今日でフェイクが宮廷の仕事を放棄して一週間が経過した。
だというのに、一向にフェイクは戻ってこない。
作業室の方には大量の武器が運び込まれているというのに……!
まったく。想定よりもフェイクは踏ん張っているようだな。
「まったく! あの男は仕事に対しての責任感というものはないのか!」
オレがブチ切れていると、部屋に残っていたレトフが笑みを浮かべた。
「まあまあ。バーナスト領からこの王都まではそれなりに距離がありますから。きっと今頃無能だと判断されてこちらに徒歩で戻ってきているのでは」
「はは、想像が出来る状況だな。みすぼらしい平民のあいつにふさわしいな」
……まあ歩いて一週間ほどはかかってしまうだろう。
そして、アテのなくなった彼が頼れるのはここしかないというわけだ。
あの無能はすでに鍛冶師資格を失っているからな。
この国内で鍛冶を行うことは不可能だ。ならば、資格を再取得するためにこの宮廷に必ず舞い戻るはずだ。
再取得の条件は簡単だ。
これから数カ月の無給だ。そうすれば、彼に支払うべき給料でオレたちは軽い贅沢が出来るというものだ。
そんな計画を立てているときだった。部屋の扉がノックされた。ちらと視線を向け、オレは椅子から転げ落ちそうになった。
き、騎士団長様だ。
「騎士団長様……ど、どうされたのですか?」
「久しぶりだな」
「は、はい」
騎士団はいくつかの部隊に分かれている。それぞれ数字で割り振られ、確か二桁はあったはずなのだが、それらすべての頂点に立つのがこの騎士団長様だ。
彼は国トップの実力者だ。
「……エンチャントについてのお願いをしたい。頼めるか?」
そう言って騎士団長様は一本の剣を取り出した。
それは彼の愛用の剣ではないが、まさか騎士団長様からお願いをされるなんて……!
オレが感動に打ち震えているのは、騎士団長様がお抱えの鍛冶師を持っているからだ。
その鍛冶師は宮廷鍛冶師というわけではないが、かなりの実力を有しているらしい。
かなり職人気質な鍛冶師らしく、気にいった相手の剣しか作らないとは聞いたことがある。
普段騎士団長様はその天才鍛冶師にお願いしているため、この鍛冶課に足を運ぶことがなかったのだ。
「ええ! ええ!今すぐ受けますとも!」
オレが我先にと声をかけ、騎士団長様の方に向かった。
「いや、待て。少し確認したいことがある」
彼はさらにもう一本、剣を取り出した。それは騎士に支給されている剣だった。
「この剣にエンチャントを施した人物に会いたい」
……ああ、それか。
才能のないフェイクに任せた奴だな。
まったく! あいつのゴミみたいなエンチャントの質が悪くてもしかしたら直接文句を言いに来たのかもしれない。
「それは一般騎士に対してのものですね。すべて、フェイクという新人がやっています」
「何? そうか……! それならば――」
「申し訳――」
オレが頭を下げようとした時だった。騎士団長が笑みを浮かべた。
「最近の騎士は随分と恵まれているな」
「ございま――え? ど、どういうことですか?」
「オレが騎士だったときは一般騎士に支給される剣なんて、ほとんどエンチャントされていないようなものばかりだったからな」
「……え? あー、なるほど」
「一般騎士レベルにまでここまで丁寧にエンチャントしてくれているなんて、素晴らしい鍛冶師だと思ってな。ぜひとも、オレの剣をそのフェイクという鍛冶師にお願いしたい」
「な!?」
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