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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第44話



 少し考えたところで、ぴんと来た。

 剣の形になりたいのではなく、剣に力を供給したいのか。

 問いかければ、反抗がなくなった。それが答えとばかりにだ。


 ……魔鉄を魔道具の材料にすることもある。

 魔鉄が持つ魔力を引き出すことで、魔道具に一定の効果を与えるためにだ。

 例えば、この前の迷宮攻略で使用した簡易結界でもそうだったはずだ。


 いわゆる、魔法剣と呼ばれるものだ。

 魔剣とは少し違い、こちらは力を与える部分が魔鉄と剣が別々に分かれているという点か。


 ……まあ、素人からすれば魔剣も魔法剣も同じような印象だし、実際ほとんど同じだ。

 ただ、使用者からすると、少し感覚が違うんだったか。


 魔剣の場合、魔剣に魔力を与えればすぐに強化されるが、魔法剣の場合、魔鉄を通してから剣に伝達する必要があるため、工程が一つ増える。


 そのため、多少の時間がかかってしまうというデメリットはあるが、これを上手くできれば魔剣に並ぶほどの剣ができるのも確かだ。


 ただ、加工が上手くできるかどうか。

 剣のどこかにシーレア魔鉄を埋め込み、魔鉄と剣の間を魔力の線でつなぐ必要がある。

 ……エンチャントでどうにかできるのか?

 挑戦したことがないんだよなぁ。そもそも、これは鍛冶師というよりも魔道具師の仕事だしな。


 だが、シーレア魔鉄の声を拾えるような魔道具師を今から見つけるのはかなりの時間がかかるはずだ。

 ならば、俺がやってみるしかない。 


 まずは、いつも通りに剣を作っていこうか。




 剣の製作には、いつも以上に時間をかけた。

 魔剣と打ち合っても負けないだけの刀身にするためだ。

 何度もエンチャントを重ね、より硬化な刀身としていった。


 その過程で材料にしたエイレア魔鉄とビイレア魔鉄にも声をかけ、自信を持ってもらうように努力した。

 気分的にはカウンセリングでもしているような感じだったが、結果的には最初にくらべかなり前向きな剣に仕上がってくれた。


 さて、問題はここからだな。

 剣の柄部分に埋め込まれているシーレア魔鉄を見る。

 このシーレア魔鉄を剣の核とするためのエンチャントを施す必要がある。


 軽くエンチャントを行ってみようとするが、剣と魔鉄を組み合わせる作業はかなり大変だというのが分かる。

 魔法剣が一般的でない理由の一つは、これだろう。


 シーレア魔鉄と剣が組み合わさるように、一つずつエンチャントを施していく。

 数多にある線を一つずつ手作業でくっつけていくようなものだ。

 

 部分によっては、すでに完成されているものを、破壊しない程度に修正してくっつけなければいけないので、それはもうかなりの作業になる。


 しかし、あまり時間もかけてはいられない。

 今朝の話だが、シーフィをかくまっていることがオストルア家の三男であるグロスから指摘されたらしい。


 今日は、それについてリーガルさんが話をつけてにいっているそうだ。

 恐らくは事前に話していた通りの決闘裁判の流れになるだろう。


 どれだけ長引かせられても、あと数日が期限だ。

 大変な作業だからといって、ゆっくりやっている時間はない。

 額に浮かぶ汗を拭っていると、とんとんと肩を叩かれた。


 驚いてそちらを見ると、アリシアがいた。

 彼女は水筒をこちらに差し出しながら、苦笑する。


「いつの間に来てたんだ?」

「ちょっと前にね。兄さんが戻ってきて、決闘裁判が明後日に決まったから、それを伝えに来たんだ」

「……そうか」


 明後日か。明日、と言われなくて良かったが、それでも時間的に余裕があるというほどではない。


 エンチャントはほとんど完成している。

 残りは……実際にリガードさんに使用してもらいながら調整したほうがいいかもしれない。

 ……このシーレア魔鉄が、想像以上に厄介な代物だしな。


「それなら、リガードさんに剣を確かめてもらいたいんだけど……大丈夫かな?」

「うん。今は特に用事はないから、大丈夫だと思う」


 それなら良かった。

 俺は魔法剣とともに立ち上がり、アリシアとともに鍛冶工房を後にした。




 屋敷へと戻ると、すぐにこちらへとリガードさんがやってきた。

 その視線は申し訳なさそうに伏せられていて、それから声をかけてきた。

 

「フェイク。……すまない。急かすようで申し訳ないのだが、剣をできる限り早く製作してほしいんだ」


 リガードさんの言葉に、俺は少し驚いた。

 予定ではもう少し余裕があったからだが、状況が大きく変わったんだろうと特にそれ以上の感想は抱かなかった。

 ちょうど持ってきていた剣をリガードさんへと渡す。


「それでしたら……こちら、ほとんど完成間近の剣になりますので確認してみてください」

「……な、なに? もうできあがっていたのか?」

「はい。ただ、細かな調整はリガードさんに使用してもらってみて、行いたいと思っています。急ぎというのであれば、今から使って確かめてもらうことは可能ですか?」


 リガードさんが実際に剣を使っている場所を見せてもらえば、それを参考に最終調整を行える。

 俺の提案に、リガードさんはゆっくりとうなずいた。


「……ああ、分かった。それなら、模擬戦形式でやってみたほうがいいか。ついてきてくれ」


 リガードさんは背後の護衛に声をかける。

 俺たちは、そのまま庭へと移動する。

 すでに陽もかなり落ちてきているので、少し暗かったが、軽く剣を振る程度なら問題ないだろう。


 リガードさんは俺の剣を鞘から抜いた。

 剣身がさらされると、きらりと光を放つ。

 その柄を握りしめていたリガードさんは、しばらく呆けたように固まっていたあと、


「……これは――」


 剣を握りしめていたリガードさんは、喜んでいるかのような声を上げる。

 リガードさんは剣をぎゅっと握りしめたあと、こちらへと顔を向けてきた。


「こいつは、魔法剣か?」

「はい。柄部分についているシーレア魔鉄に魔力をこめれば、剣全体に魔力が伝わると思います」

「……ああ、分かる。伝わってくるな」


 リガードさんはその柄を改めて握りしめ、それから視線を相手へと向ける。


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