表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

154/202

第42話



 次の日。

 リガードさんに呼ばれ、俺は書斎へと来ていた。

 中に入ると、シーフィさんとアリシアの姿もあった。

 奥の席についていたリガードさんが、俺に気づくと微笑を浮かべた。


「よく来てくれた、フェイク。ちょうど、良い作戦を思いついてな。おまえにも協力してもらいたいことがあったんだ」

「俺ですか?」

「ああ。まずは現在の状況について改めてまとめようと思う。皆、聞きやすいようにしてくれ」


 そう言われ、俺はアリシアとともにソファに腰掛ける。向かいにはシーフィさんも座っている。


「まず、バーナスト家での対応についてだ。オレから親父に相談はしたが、判断はオレに任せると言われてしまった。……酷い親父だ。こんな面倒事を押し付けてくるなんて」

「……面倒で悪かったわね」


 シーフィさんが少しだけ悲しそうな声音で、しかし吊り上がった目でリガードさんを睨む。

 リガードさんはびくっと肩を上げてから、首を横に振る。


「……そ、そうでもないぞ。おまえのことは心配していたからな」

「……ほ、ほんと?」

「ああ、本当だとも……一体何人を殺ってしまったのかと……」

「どんな心配しているのよ、馬鹿!」


 シーフィさんが声を張り上げ、リガードさんは待て待てと言わんばかりに両手をシーフィさんに向けている。

 話が進まない。そう思ったのは俺だけではなく、アリシアが口を開いた。


「二人とも、夫婦漫才は後にして。それで? 兄さんはどんな対応をしようと思ってるの?」

「あ、ああ。オレはシーフィをオルレアン家に引き渡す前に、魔剣についての話を聞かせてもらおうと思っている」

「……そんなことできるの?」

「可能だろうさ。そのために、今は魔剣の噂を流させている。向こうも、シーフィが長男次男を殺した、という噂を流し嘘を真実としようとしているように、こちらも魔剣の噂を流し、嘘を真実にしようというわけだ」


 リガードさんが腕を組み、シーフィさんが首を傾げた。


「……そうしたら、何か変わるの?」

「どちらにも疑いの目が向けられる。どちらかの証言を本物とするための行動が求められるようになる。シーフィが二人を殺した証明と、魔剣についての証明だ。そして、時間が経てば経つほど、三男への疑いの目が強くなっていくだろう。実際、状況だけみればその可能性は十分に高くなるからな」


 リガードさんの言う通り、そもそも跡継ぎに関しては長男、次男、三男、そしてシーフィさんという順番だったらしい。

 長男と次男が死ねば、三男が跡を継げるという状況で、その二人だけが行方不明になったとなれば、疑いの目を向けられるのは当然だ。

 

 一応、三男はシーフィさんに狙われている、とは言っているが、それも噂を流されてしまえば状況は変わりかねないだろう。


「……そこまで追い込んで、その後はどうするのよ?」

「それでようやく、交渉に持ち込めるんだ。シーフィの言い分を条件に、相手の魔剣を確認させてもらうつもりだ」

「そんなの、応じるの?」

「応じないならば、この遺書を渡すだけだ」


 そういって、リガードさんは一枚の紙を渡してきた。

 それは、たどたどしい文字ではあったが、シーフィさんにオルレアン家を継がせるというものだった。


「これはブイトルに書いてもらったものだ。魔力文字だから、実際の文字とは違うが……オルレアン家の鑑定士に見てもらえば、長男の遺書だと分かるだろう?」


 ……確かに、その文字は魔力がこもっていて、エンチャントと似たような文字となっている。

 これならば、仮に筆跡が違うと言われても、正式な鑑定士ならばはっきりと分かるだろう。


「それを渡して……どうするのよ? あたしが家を継げるかもしれないってなっても、何も解決はしないわよね?」

「三男……グロスの奴はそれを絶対拒絶するはずだ。偽物と言ってくるだろう。だが、何も行動しなければグロスは当主の座を奪われることになる。……なら、どうするか。決闘裁判だ」

「……決闘裁判?」


 俺が首を傾げると、リガードさんがこくりと頷いた。


「ああ、そうだ。決闘裁判とは、貴族がそこそこの問題を抱えた時に行うものだ。決闘を行い、勝ったほうが自分の意見を通せるもので……まあ、戦争になるよりかはマシとして認められているものだな。これで勝てば、黒を白として押し通すこともできるというわけだ」

「……な、なるほど」

「そこまで持っていければ、あとは決闘を行うだけでいい。こっち側の意見を押し通すためには、オレかシーフィが代表者として戦わなければいけないが、ま、まあ……オレ怖いし、戦うのはシーフィに任せるよ」


 ここまで鮮やかに解決策を話していたリガードさんは、最後の最後をシーフィさんに押し付けようとする。

 もちろん、それにアリシアが目尻を吊り上げた。


「……兄さん、そこはやりきらないの?」

「いやだって。オレに何かあったら大変だろ?」

「大丈夫。いざというときは弟が当主になるだけ」

「アリシア! お兄ちゃんに何かあってもいいの!?」

「うん」

「そ、そんな……っ! シーフィ! 自分で未来を勝ち取りたいとは思わないか!?」


 爽やかな笑顔とともにリガードさんがシーフィさんを見る。

 シーフィさんはとても悲しそうな表情で、


「……リガード。あんた、あたしのために、戦ってくれないの?」


 そう言った。

 リガードさんは諦めるように息を吐き、それから俺を見てきた。

新連載になります。↓ 下のリンクから読んでみてください!


妹の迷宮配信を手伝っていた俺が、うっかりSランクモンスター相手に無双した結果大バズりしてしまったようです

https://ncode.syosetu.com/n9783ig/


タイムリープした【暗黒騎士】は未来知識で無双する〜不遇職として追放された俺が、最底辺から成り上がる〜

https://ncode.syosetu.com/n9795ig/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] リガード…お前どこまでヘタれるのよ… 婚約者の窮地やぞ、漢を見せんかい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ