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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第38話


「フェイク。今の状況については理解している?」

「簡単には聞いていたよ」


 俺はそれから今の自分が知っている情報をアリシアに伝えた。

 といっても、何かあったくらいのことしか聞いていない。


「……うん。なんでも、オストルア家の長男と次男が行方不明になっていて、それにシーフィが関わってるって言われているらしい」

「……長男と次男が行方不明? もしかして、今の当主様がそう言っているのか?」

「オストルア家は当主様がもう亡くなってしまっていて、順当にいけば長男が跡を継ぐことになっていた。でも、今回長男と次男が行方不明になってしまって、このままだと三男が後を継ぐことになるかもっていう話になっているらしい」


 アリシアの話を聞き、すぐに浮かんだ疑問が一つある。


「……その三男って人、怪しくないか?」

「そうなんだけど、今はシーフィに全部の責任が押し付けられてる。最後に長男と次男と会ったのが、シーフィだったみたいだから。……シーフィは捕まったらまずいと思って、逃げてるんだと思う」

「……なるほど、な」


 確かに、リガードさんが下手に関わるのは、と渋っていた理由もわかる。

 本当にシーフィが犯人ならば、オストルア家の跡継ぎ問題に何か工作しようとしていると思われかねない。

 

 何だか物騒な話になってきてしまったが、大事にならなければと祈るしかない。




 書斎で待つこと数十分。

 しばらくして、こちらに近づく足音が聞こえてきた。

 その足音は書斎の前で止まると、部屋がノックされる。


 リガードさんはちらと護衛の兵士に視線を送ると、扉へと向かう。

 一言二言やり取りをした後、扉が開いた。

 こちらへと歩いてきた女性はフードをかぶっていて顔は見えない。

 室内へと入ったところで、フードをはいだ。


「シーフィ、久しぶりだな」

「……久しぶりね」


 凛とした綺麗な声が響く。

 淡い緑色の髪を揺らしながら、僅かに吊り上がった瞳でリガードさんを見ていた。


 エルフの血が混ざっていると話していたが、僅かに耳の先は尖っていた。

 表情は仏頂面ともとれるもので、リガードさんが話していたような気の強さを感じさせるものがあった。


 書斎には、リガードさんのことを知っている人たちしかいないからか、リガードさんはびくっと怯えた様子でシーフィさんを見ていた。


「げ、元気そうだな。ど、どうしたんだ?」

「……元気なわけ、ないでしょうがっ。こっちは、散々な目に合っているのよ!?」

「ひぃぃ! お、オレは別に何もしてないだろ!? 怒らないで!」

「……そう、ね。あんたが悪いわけじゃなくて、これはうちの問題なのは……分かっているわよ」


 シーフィさんは小さくため息をついてから、ちらとソファを見る。

 その視線の意味を理解したのか、リガードさんがソファを勧めると、すっと座った。

 俺たちはその対面に座っていたため、自然視線がぶつかる。


「アリシア、久しぶりね」


 リガードさんに向けたものと違い、落ち着いた笑顔だ。

 それに、アリシアも笑みを返す。


「うん、久しぶり。……色々と話したいことはあるけど、それはまたあとにして――」「ええ、そうね。……そっちの人が、アリシアの婚約者?」


 視線がこちらへと向く。切れ長の強気な瞳に射抜かれると、ちょっと緊張してしまう。

 リガードさんが怯えている理由もわずかながらに理解してしまったが、怯んではいられない。


「初めまして。どう紹介されているかは分からないですけど、俺はフェイクって言います。これから、よろしくお願いします」

「そうなのね。あたしはシーフィよ。よろしくね」

「はい」


 笑顔とともに自己紹介をされ、軽く握手をかわす。

 それからシーフィさんの視線はリガードさんへと向いた。


「それじゃあ、リガード。どこまで話は理解しているの?」

「……お、おまえがオルレアン家の跡継ぎ候補たちを殺して逃亡中、ということは聞いているな」

「ねえ。それ……信じてるの?」


 悲しそうな目をシーフィさんは向けていた。リガードさんはふっと息を吐いた。


「いつか、やるとは思っていたさ……」

「本気で言ってんの……?」


 シーフィさんはかなり元気がないようで、リガードさんを睨みながらも、どこか元気のない様子だった。

 リガードさんから聞いていた人とは印象が違うな。


「普通に考えれば、意味のない行為だとは理解している。仮に、今回の首謀者がシーフィだとすればもしも本当に跡継ぎとしての座を狙うのならば、三男をやらなければならないからな。なのに、三男が残っているのはむしろ怪しく、そいつが犯人の可能性も高いだろうな。一応シーフィは失敗したという話のようだが……どうなんだ?」


 リガードさんの言葉の意味は理解できた。

 当主の座は家にもよるが、基本的には男性が継ぐことになっているそうだ。

 だから、権利としては長男から順に行って、それでもつける人がいない場合は、女性がつくことになっていた。

 だから、シーフィさんがなるには、権利を持っている三男までを殺害する必要があるため、三男だけ残っている状況はむしろ三男のほうが怪しいということだ。

 リガードさんの問いかけに対して、シーフィさんはあきれたようにため息をついてから、


「何? あんた、あたしがオストルア家の当主の座を狙っているとでも思ってんの?」


 リガードさんを睨みつけた。

 圧倒的威圧感だ。

 鋭い眼光にさらされたリガードさんは、ぶるりと震え上がってから首を横に振った。


「そ、そんなこと……ございません」

「……ってことは、もしかして三男のグロスが何かしたの?」


 アリシアの問いかけに、シーフィさんはこくりとうなずいた。

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