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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第37話


「フェイク。こんなところで何をしているんだ?」


 朝、屋敷内を歩いているとこちらへとリガードさんがやってきた。


「特に、何か理由があってというわけではないのですが、まだ朝食まで時間があったので少し歩いていました」


 暇があれば鍛冶をしていたときと違い、今は多少余裕があった。

 鍛冶は鍛冶で楽しいが、この時間も悪くはなかった。


「オレも同じ理由だ。いやぁ、最近は問題事もなくなってすこぶる快眠でな。目覚めも最高だ! 腹の調子も最高なんだぞ!」


 そんなこと教えられても困る。


 ただ、確かに最近のリガードさんは良く笑っているな。理由は、それか。

 確かに、迷宮の問題が片付いた今、特に大きな問題はないようだった。


「何もないのは、確かにいいですね」

「ああ、本当にな。迷宮も無事解決できたし、しばらく領民から何か言われていることもなし。いやぁ、気楽というのは素晴らしいな」

「それは確かに……そうですね」


 何も起きないというのは悪いことではない。

 俺がそう思って言うと、リガードさんは頷いた。


「それにしても、素晴らしい鍛冶の腕だったな。まさか、あれほど素早く剣を作れるとは思っていなかった。本当に、想定外だったぞ」

「……少し怒ってますか?」

「それはそうだろう。時間稼ぎのために鍛冶師を呼んだというのにな。まさかあっさりとあれほどの剣を作ってしまうとは」


 頬を僅かに膨らませたリガードさんに苦笑する。

 

「まあ、迷宮攻略自体うまく行ったのですから良かったじゃないですか」

「それは……まあ結果的にはな。ただ、迷宮というのは不確定な要素が多いからな。できるのならもう二度と入りたくはないが……またいつか発生してしまうんだろうなぁ……」


 がくっと落ち込んだ様子のリガードさんに、苦笑を返す。

 迷宮攻略にリガードさんが自ら動いたことは、領民にとっては嬉しいことなのは確かだろう。

 アリシアと街を歩いていたときに、リガードさんのことを口にする人たちもいたしな。


 もちろん、それだけ危険なことであるのは確かだが、それでも挑戦するだけの価値はあったと思う。


「ただ、な。何事もなかったわけでもないんだよ。聞いてくれるか、フェイク」

「……ええと、はい」


 とてもではないが断れる雰囲気ではない。

 リガードさんが小さくため息を吐く。


「風の噂ではあるが、オストルア家で何か問題が発生しているらしくてな」

「オストルア家?」

「ああ、すまない。知らなかったか。うちとはそれなりに親しい間柄でな。最悪なことに、オレの婚約者がいる家でもあるんだ」

「……風の噂というのは、やはり悪い噂なのですか?」

「あ、ああ。なんでも、当主を最近見ていないとか。長女のシーフィも同時に行方をくらましているとか、な」

「シーフィって確か、リガードさんの婚約者の方ですよね?」


 そして、アリシアの友人でもある人だ。

 リガードさんはゆっくりと頷く。


「そうだ。まあ、オレとしては何も悪いことが起きなければいいんだがな。まあ、気にしたってもう事件は起きているから、オレは考えないようにはしているんだがな!」


 リガードさんはあっけらかんとそう言ったのだが、背後に現れたアリシアがばしっと頭を叩いた。


「い、いた!? アリシア! 何をするんだ!」

「酷いこと言わないで。シーフィは兄さんの婚約者でしょ」

「そ、そうは言うがな。あくまで親が決めた関係なだけだし、オレとしては何もできやしない!」


 リガードさんがそう言って、アリシアが小さくため息を吐いた。

 心配そうなアリシアに、問いかける。


「……シーフィさんは、大丈夫なのか?」

「……分からない。私も手紙を出してはいたけど、特に返事もないから。つい最近の話みたいだけど……」

「……何もなければいいな」

「……うん」


 落ち込んだ様子のアリシアに、リガードさんが声をかける。


「まあ、シーフィは強い奴だ。何かあっても、しぶとく生き残るような奴だろうさ。心配するな」


 そんなことを話しているときだった。

 こちらへ兵士の一人がやってきた。


「り、リガード様! 至急お耳に入れたいことがありまして」

「……なんだ?」


 一瞬でリガードさんの表情が引き締められる。

 見た目だけで言えばとても頼りになりそうである。


「シーフィ様が、街まで来ています。……今は、信頼できる者がいる場所にて匿っておりますが、いかがしましょうか?」

「……し、シーフィが?」


 ちょうど話していた人の名前だ。

 さすがに、リガードさんもその名前は予想外だったようで、驚いている様子だ。

 しかし、リガードさんは一度咳ばらいをするとすぐに険しい表情を浮かべた。


「一体何のようだ? 面会の話はしばらくなかったと思うが。一体何用だ?」

「……それは、分かりません。ただ、例の件もありましたので今は門近くの兵舎にてかくまっていますが……」


 どうやら、この兵士も風の噂程度の話ではあったが知っているようだ。

 リガードさんが信頼できる人たちに伝えていたのかもしれない。


「……そうか」


 リガードさんは考えるように顎に手を当てる。とても複雑そうな顔である。

 ……平和な時間を楽しんでいたリガードさんにとっては、できれば聞かなかったことにしたいのかもしれない。

 それを見ていたアリシアが腕を引いた。


「兄さん。まずは話を聞きにいかないと」

「それは、そうだが、な。簡単な話でもないのは分かるだろう? オストルア家の問題を他家が割り込んでしまえば信頼関係が壊れる可能性だってある」

「それはそうだけど。……なら、見捨てるの?」

「そうは言っていない。……俺の書斎まで連れてこれるか? 地下水道を利用してな」

「分かりました」

「もちろん、ここまで顔を隠して連れてくるようにな。それと、関わっている者たちには口外しないようにも伝えてくれ」

「分かっております。すぐに連れてまいります!」


 兵士はすっと頭を下げると、すぐに歩いていった。

 リガードさんはその様子を見送ってからため息をついた。


「……あぁ、また厄介事が舞い込んでくるなんて」

「厄介事って言わないで。本当に困っている中で、兄さんを頼ってここに来たんだから」

「アレがオレを頼ってというのもあまり想像できないがな。アリシア、フェイク。二人にも話を聞いてもらいたいのと、シーフィが暴走したときのために書斎までついてきてほしい」

「シーフィを暴れ馬みたいに言わないで」


 アリシアがむすっと頬を膨らませたが、リガードさんは書斎に向けて歩き出した。

 俺とアリシアもともにその後をついて行き、アリシアが問いかけてくる。


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