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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第36話


「フェイク様の体格なら、ここに並んでいる服とかがいいかもしれませんね」


 そういってずらりと並んだ洋服を指さしてきた。

 ……おお、どれも見ただけで高そうだ。

 アリシアが並んでいる服を手に取って、俺のほうへと向けてくる。


「……うーん。この色のほうが……でも、こっちのほうがフェイクには合ってるかな」


 アリシアは手に持った服を次から次へと俺に当てては、唸っている。


「……合いそうな服、あったか?」

「どれも、良いところはついてる。でも……ちょっとだけ惜しい」

「そ、そうか。それなら、やっぱりオーダーメイドのほうがいいのかな?」


 値段は上がるかもしれないが、そのほうが確実ではないだろうか。

 しかし、アリシアは俺の考えを否定するように首を横に振る。


「オーダーメイドなら、その人に合った服を用意できるよ。……でも、こうやってできあがった物からその人に合った服を見つけるのは、また違う快感があるの」


 アリシアの目は真剣そのものだ。

 ……そ、そういうものなのか。

 俺には良く分からない世界だが、色々な表情を見せるアリシアを眺めているのは楽しかったので良しとしようか。


 そうしてしばらくアリシアが服を選んでいると、一枚の服を俺に渡してきた。


「フェイクにはこれが似合うと思う。試着室で、着替えてきてもらってもいい?」

「ああ、いいよ」


 アリシアの渡してくれた服を持った俺は、彼女とともに試着室へと向かう。

 着替えはすぐに終わり、外へと出る。


「ど、どうだ?」


 わざわざ着飾った自分を誰かに見せる機会なんてなかったので、少し照れ臭い。

 俺がそういうと、アリシアは満足げに頷いた。


「うん、似合ってる。サイズは大丈夫? 窮屈さとか感じない?」

「ああ、問題ないな」


 最初に採寸したおかげか、この服はまったくもって違和感はなかった。

 試着した服を着替えなおしてから外に出ると、店員とアリシアが何やら話している。


「フェイク様にはこちらの服もどうでしょうか?」

「うーん……それもいいかも」


 ……まだしばらく着せ替え人形にされそうな様子だった。




 それからしばらく色々な服を着させられたあと、今度はアリシアの番だった。

 俺が気に入った服を選んでみることになったのだが……さて、どうしようか。


 正直言って、服の良し悪しなんて分からない。

 ならば雰囲気の好みなどを聞かれても、アリシアならどんなものでも着こなせるだろうしなぁ。

 しばらく並んでいる服を眺めていたが、隣にいるアリシアからの期待するような目がとても気になる……っ。


 一緒に探してくれていた店員さんが、並べた服を見せてきた。


「フェイク様。どの服が好みに近いでしょうか?」


 これは良い助け船だ。

 店員さんに協力してもらいながら、アリシアにふさわしい最高の一着を選ぼう。

 そう思って視線を向けると、


「……っ!?」


 俺の想定していなかった服が並べられていた。

 ……メイド服、バニー服、修道服、あとは別の地方で使うという巫女服……だったか?

 とにかく、完全に想定外の代物ばかりだった。


「フェイク様! どれが良いですか!?」

「……えーと、そちらは?」

「メイド服です! これでも、バーナスト家のメイド服は私がデザインしましたが、その試作段階に考えたものです。ゴーラル様から『肌が出すぎだ』と怒られてしまいました」


 そりゃあそうだ……。

 持ち上げたメイド服は、半そでのようになっているし、へそが見えそうなほどに短い。


「……いやその服の解説じゃなくて」

「そ、そうだよっ。な、なんでこんなものを持ってきたの!?」

「いえ、そのフェイク様の性癖とか知っておきたいと思いまして。個人的に相談に乗りやすくなりますしね!」

「ふぇ、フェイクはそんなこと頼んでない…………頼む気あった?」


 ちら、と見てくるアリシアに俺は首を横にぶんぶんと振った。


「ですが、今後何かあったときのためにフェイク様の好みのタイプを知っておくというのは良いのではないでしょうか?」

「な、何かって何……?」


 店員さんはアリシアの耳元に顔を近づけ、こそこそ、と何かを言った。

 その瞬間、アリシアの耳までも赤くなって、唇をぎゅっと結んだ。

 一体何を口にしたのだろうか。というか、内容次第では不敬罪とかで捕まるのではないだろうか。

 そこのところどうなんですか、レフィさん。


 そんな気持ちで視線をやると、


「……ふむ」


 レフィはアリシアのほうに先ほどの衣装を向け、冷静に分析していた。

 ……あっ、この状況を止めるのは俺しかいないようだ。

 仕方ない、と思った俺はアリシアに声をかける。


「アリシア。その――」

「ふぇ、フェイクはどれがいいの!?」

「……え?」

「そ、そのどれがいいか、教えて。私、着るから」

「な、なぜ!?」


 そのような心変わりをされたんだ!? そう思っての俺の問いかけに、アリシアは顔を赤くしたまま口にする。


「い、いいから……っ。ど、どれがいい!?」

「ど、どれが……って、え。答えないと、駄目か?」

「迷ってるの……? な、なら、全部着てくる!」

「い、いやそうじゃなくて!」


 アリシアは何だか暴走気味に試着室のほうへと向かっていった。

 ……い、いやまあ期待していないわけではないのだが、それにしたって一体何を吹き込まれたのか。

 そう思っていると、店員さんに声をかけられ、そちらへと振り返る。


「フェイク様。アリシア様に想われていて良かったですね」

「……いや、それはまあ嬉しいけど。さっき、何を言ったんだ?」


 問いかけると、店員は得意げな顔で胸を張る。


「今後、何かこう愛の低下を感じられたときに、フェイク様の心をぐっと引き戻す手段の一つになるかもと進言したのです」


 そ、それであんなにやる気になったのか。

 アリシアの反応を思い出すと、俺を想っての行動だったことは分かるので嬉しくはあるが、俺は苦笑しながら言葉を返す。


「ていうか、俺が愛想をつかされたとしても、俺がアリシアを嫌いになることなんて、ありえないんだけどなぁ」

「わっ、大胆ですね」

「……本人には中々、言えないんだけどね」

「大丈夫です。背後にいますよ」

「…………え?」


 俺が振り返ると、


「……っ」


 耳まで真っ赤になって、衣装を取りに来ていたアリシアがいた。

 彼女は衣装をすべて持っていき、逃げるように試着室へと向かう。 

 

 そして……アリシアの着せ替えショーが始まった。

 たぶんだけど、レフィと店員がアリシアを着せ替えて遊びたかったのではないだろうか?

 今なら、はっきりとそう思えた。



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