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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第31話



 しばらく迷宮を進んでいき、開けた空間へとたどり着いた。

 その空間をしばらく歩いていったあと、リガードさんが声を張り上げた。


「ここで一度休憩を挟もう。皆、自由にしてくれ。フェイク。皆の剣の状態を確かめてもらってもいいか?」

「分かりました」


 ここまで、何度か戦闘は行っているので皆の剣の状態も変化しているだろう。

 兵士たちがこちらへとやってきて、剣を渡してきた。


 一つずつ、確かめていき、俺は驚いた。

 思っていたよりもエンチャントに綻びがある。

 通常時ならば、こんなに早くエンチャントに傷がつくというのはあり得ない。


 これが、迷宮か。

 迷宮内の魔物たちは魔力で作り上げられた存在だ。

 そのため、同じく魔力で構成していたエンチャントもその影響を大きく受けやすいのだろう。


「フェイク様。こちらの剣はフェイク様が作ったんですよね?」


 エンチャントを見ていると突然兵士に声をかけられた。


「そうだけど……何か、問題があったとか?」

「とんでもございません! むしろ、これまで扱ってきたどの剣よりも扱いやすかったから、驚いているんです!」


 感動的な声を上げていた。

 それは彼だけではなく別の兵士からもだ。

 

 ほっと胸をなでおろしながら、エンチャントの修正を行っていく。

 もともと自分で施したエンチャントであるため、大して時間はかからない。

 他人のものとなると理解するまでに時間がかかるが、これならば数分で終わるだろう。


 パパッと剣のエンチャントを行っていくと、再び兵士たちから驚きの声が上がる。


「ふぇ、フェイク様。今のでもう終わりですか?

「ああ。きちんと戻ったと思うけど、何か気になることでもあったかな?」

「いえ……その。そんなに早くエンチャントできるとは思っていなかったので……」


 あー、そういうことか。

 エンチャントを素早くできるようになったのは、完全に宮廷のお仕事のおかげだ。

 苦笑しながら、俺は口を開いた。


「素早く丁寧にする訓練をしていたので、こういうのは得意なんだ」

「なるほど……。さすが、アリシア様が見つけ出した方ですね……!」


 きらきらと目を輝かせる兵士に、俺は内心では安堵する。

 いきなり貴族の令嬢の婚約者になったので、特に兵士たちとの交流に関しては心配していた。

 ひとまず、ここにいる人たちには嫌われていないようで良かった。


「フェイク、それでもう終わったのか?」

「はい、リガードさん」

「ならば、改めてゆっくり休むといい。皆も、軽く食事をしながら休憩をとってくれ」


 リガードさんの言葉に、皆が頷いた。




 迷宮内で休憩を取る場合は、魔道具を用いて魔物が襲ってこない空間を作る必要がある。

 兵士の一人が魔石を四方に埋めると、その空間に薄い膜のようなものができあがった。

 ……簡易結界だそうだ。

 効果時間はあまりないそうだが、発動している間は魔物が寄ってきにくくなるそうだ。


 きにくくなる、ため完全に防ぐわけではないので、警戒を怠るわけにはいかないが、多少は気を緩めることができる。

 地面に腰かけた俺は、アリシアとともに飲み物を飲んでいた。


「まだ怪我人は出てなくて良かったな」

「うん。何もなければそれが一番」


 そんな話をしていたとき、魔物が出現した。

 見張りの兵士が武器を構えるが、魔物はこちらを一瞥した後、顔を顰めて去っていった。

 簡易結界から放たれる魔力が理由だろう。 


 本当に魔物が来ないんだな。

 ずっと発動していれば、迷宮攻略ももっと簡単にいくのではないかと思うが、魔力は一定の空間に押しとどめておく必要があるそうだ。

 移動してしまうと、魔力が薄れてしまうため、あまり効果を発揮しないのだとか。


 あと、わりと魔道具の製作にお金と時間がかかるため、無駄遣いもできないそうだ。

 しばらく休みを挟んだところで、リガードさんが立ち上がる。

 全員を見渡すように動いたあと、


「休憩時間も終わりに近いが、皆大丈夫か?」

「はい、いつでも行けます!」


 兵士たちが次々に声を上げる。

 リガードさんは彼らの表情をじっと観察し、それから頷いた。


「そうか。それじゃあ出発するが、疲れや何か気になることがあればすぐに言ってくれ」

「はい……! ありがとうございます!」


 リガードさんの気遣いに、兵士たちはますます尊敬を強めているようだ。

 リガードさんがついてきた最大の理由は、やはりこれなんだろう。


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