第14話
形が出来上がったところで、その熱されていたナイフの表面に、土魔法で生み出した焼刃土を塗った。
焼刃土とは、冷却効果を高めてくれるものだ。焼刃土を塗ることで対象物が急速に冷えやすくなり、より鋭く頑丈な武器が出来上がる。
この焼刃土に関しては鍛冶師の腕が分かれるところである。魔力の配分が非常に大事で、対象物の内部に満ちた魔力情報を強化してくれるものだ。
よく勘違いされるのだが、エンチャントすれば全部解決だろ? といわれるのだが、そんなことはない。エンチャントの容量は決まっているので、過剰な強化は出来ない。しようものなら、内部から武器が破損してしまうのだ。
念入りに魔力情報を強化していくことで、エンチャントの容量が増えていく。つまり、より強固なエンチャントを行いたいのなら、鍛冶の時にしっかりとする必要があるのだ。
焼刃土を塗り終えたところで、低温の水を魔法で生み出してその中に突っ込んだ。
じゅわっ! と水の塊から音があがる。
一瞬で水の球体は熱を持ったが、すぐにまた水魔法で冷やしていく。僅かな反りが生まれ、焼刃土のおかげもあり刃紋も生まれた。いい形にナイフが出来上がったな。
ただ、これはまだ魔鉱石をナイフの形に加工したに過ぎない。これをしっかりと研がないと、刃は生まれない。
その作業は風魔法で行う。俺は空中に風の刃を生み出し、そこにナイフの先を入れた。
風を操り、刃の部分を研いでいく。
キィィ! という高音とともにナイフの刃が研がれていく。
全体的に整えるように研いだところで、俺はナイフを取り出した。
表面が輝いているように見える程度には研ぎ、磨くことが出来たな。
最後に俺はエンチャントを付与する。内部にある魔力情報にプログラムを書き込んでいく。それで、完成だ。
軽くナイフを振ってみる。うん、重さは十分だ。
作業としては三時間ほどだっただろうか? 久しぶりに行ったため、多少時間がかかってしまった部分はあるな。
正確性と速度、それが特に鍛冶師には求められる。
俺は土の塊を生み出し、それを強固な塊へと作り変えていく。それに、ナイフを振り下ろしてみた。
すっと握りこぶしほどはある土の塊を斬ることが出来た。まあ、所詮は土だからな。
「とりあえず、切れ味は問題ないな」
鍛冶工房内にあった素材から魔物の革を見つけた俺は、それを持ち手部分に巻き付ける。
土魔法で張り付け、問題がないのを確認した後、さらに魔物の革を鞘替わりに巻き付けた。
さすがにこのまま放置しておくわけにはいかないからな。
これで完成だな。俺は余っていた箱に、ナイフを入れてから体を伸ばした。
……結構汗をかいてしまったな。
朝からシャワーを浴びることは可能なのだろうか?
……というか、そろそろ朝食の時間になるのか? ……仕事していた時は仕事しながら食べられるものか、あるいは食事を抜くのも当然だったので忘れていたな。
ただ、食事をするにしてもまずは汗を流す必要がある。そう思った俺が部屋を出ようとした時だった。
「……凄い」
熱のこもった瞳とともにこちらを見ていたアリシアが部屋の隅にいたことに、そこでようやく気付いた。
「い、いつからいたんだ!?」
突然聞こえた声に、思わず叫んでしまった。
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