表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

136/202

第25話


 俺に対しての言葉だったようだが、アリシアもばっちりと聞こえたようだ。

 びくっと跳ね上がると耳まで真っ赤にして、レフィを睨んでいた。


「れ、レフィ! 余計なこと言わないでっ」


 店内ということもあり、声のボリュームは控えめだったが、それでもアリシアの頬は膨らんでいた。

 ちらと見るとすでにレフィは立ち去り、一般客に混ざるように店内を歩いている。


 さすがの早業だ。

 そんなことを考えていると、恥ずかしそうに顔を俯かせていたアリシアが、ちらとこちらを見てきた。


「ふぇ、フェイク……その、そういうわけ、だから」

「分かった。でも、俺の好きなものじゃなくてさ、二人に似合うものがあればいいな」

「う、うん……っ!」


 俺がそう答えると、アリシアは嬉しそうにぱっと目を輝かせた。

 初めは身分証明のために必要なのだと思っていたが、別にそう気張る必要はないだろう。


 でも、お揃いのものとなるとアリシアは普段から身に着ける可能性もあるよな。

 そうなると、アリシアに似合うやつがいいとも思ってしまう。


 そんな考えとともに、改めて商品を眺めていく。

 下手に豪華なものとなると、アリシアにはあまり合わないよな。

 となると、変に装飾の入ったものよりはシンプルなもののほうがいいかもしれない。


 アリシアとともに歩きながら棚を見ていく。


 そのとき、一つ気になるネックレスが目に留まった。

 ネックレスの先には魔石がついているが、チェーンの部分を含めてシンプルだ。


 ネックレスの先についた控えめなサイズの魔石は、アリシアに良く似合うだろう。

 そのネックレスへと手を伸ばそうとして、アリシアと手がぶつかった。


「え?」

「あっ、ごめん」


 アリシアが慌てて手を引き、俺も同じように手を引いていた。

 お互い少し照れ臭くなりながらも、商品を指さす。


「ちょうどこれがいいと思ったんだ。その似合うかもと思って」

「わ、私も……そうなの。フェイクに似合うと思ったから」

「俺に? いや、俺はアリシアに似合うと思ってな」


 そういうと、アリシアが意外そうに目を丸くした。


「もう、フェイクは自分に似合うものを選んでもいいんだよ? 欲しいものとか選んで、いいよ?」

「いや、でも……ていうか、それはアリシアだってそうだろ?」


 お互いにじっと見つめあう。

 時間にして数秒が経ち、それから苦笑した。


「それじゃあ、これにする?」


 アリシアの言葉に、俺は頷いた。

 二人ともそれでいいと言っているのだから、これ以上悩む必要はないだろう。


「俺もそれでいいと思っていたから……それじゃあ、買ってくるな」

「あっ」


 アリシアが何か言いかけたが、俺はその言葉を無視してさっさと商品を手に取った。

 それから、帳場へと向かい、会計を済ませてアリシアの元へと戻る。

 

 この店の商品なら、俺の手持ちのお金でも十分に買える金額だったからな。

 これまでのお礼も込めて、アリシアにプレゼントを上げたいと思っていたのでちょうど良い。


 ネックレスをアリシアに見せるように揺らすと、彼女は頬を膨らませていた。


「私が買おうと思っていたのに」

「いつもお世話になってるし、このくらいはお礼にさせてくれ」


 そう言ってから、ネックレスを手渡す。

 アリシアはまだ頬を膨らませてはいたのだが、ネックレスを受け取ると首元にかけた。


「どう? 似合う?」

「ああ、滅茶苦茶似合ってる」


 アリシアは何をつけても似合うな。

 そんなことを考えていると、視線が合った。


「フェイクもつけてみて」

「ああ」


 俺も言われたとおりに着けてみた。

 こういったものを着けるのは初めてなので少し不安だった。


「ど、どうだ?」

「うん、やっぱり似合ってる」


 アリシアがにこりと微笑み、ほっと胸をなでおろす。

 そんなことを考えながら俺たちは店を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ