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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第23話


 ……つ、疲れた。

 結局、午前中はずっとレフィに稽古をつけてもらった。


 おかげで、動きはかなりマシにはなったと思うが、その分だけ疲れも溜まっていた。

 まあ、俺も戦うのは嫌いじゃない。

 こうしてたまには体を動かすというのは心地よい疲労感で悪くはなかった。


 一度シャワーで汗を流した俺は、昼食を食べるために食堂へと移動した。


 非常に疲れが溜まっていて、今すぐにでも横になりたい気持ちはあったが、同じくらい腹も空いていた。

 何より、食事を取らないと力にならないというのもある。

 そういうわけで、食堂へと何とか到着すると、アリシアがいた。


 ちらと食堂を見てみたが、リガードさんの姿はない。

 いつもは一緒に食事をしていたが、忙しいのかもしれない。


「フェイク、大丈夫?」

「ああ。問題ない」


 俺の稽古を見守ってくれていたアリシアが首を傾げるようにしてこちらを伺ってきた。

 心配させまいと俺が笑顔とともに頷くと、アリシアがほっと息を吐いた。


「良かった。たまにレフィやりすぎちゃうから」

「……確かに、かなり厳しい稽古ではあったな」

「それだけ、フェイクに才能があると感じたんだと思う」

「そうなのかな……?」


 それなら、嬉しい限りではあるが。

 アリシアの隣に座ると、すぐに料理が運ばれ始める。

 俺がそれらに視線を向けていると、アリシアがつんつんと突いてきた。


「そ、それでなんだけど……今日の午後は、大丈夫? つ、疲れてるならいいからね?」


 アリシアは俺が想像以上に疲れていると思ったのかもしれない。

 彼女の気遣いの通り、確かに俺は疲れている。

 だが、アリシアとのお出かけは別だ。


 一緒に外に出たいというのなら、疲労なんて気にしていられない。


「いや、全然大丈夫だって。食事が終わったらでいいか?」

「……大丈夫?」

「全然。まだまだ動けるくらいだって。それに、アリシアと一緒に街を見て回りたかったしな」

「……よかった」


 アリシアが嬉しそうに笑っている。

 その笑顔が見られただけでも、アリシアの誘いを受けた意味があるというものだ。

 彼女の表情を見ていると、段々と疲労も癒えているような気だってする。


 これが、アリシアの持つ回復魔法なのかもしれない。

 そんなアホなことを考えていると、アリシアが口を開いた。


「それじゃあ、ご飯食べ終わって着替えてから行くってことでいい?」

「分かった」


 アリシアは外行き用の服に着替える必要があるよな。

 俺はさっき着替えたばかりなので、このままでも問題ないかな。

 そんなことを考えながら、俺は昼食を食べていった。





 昼食を終えた俺たちは、屋敷の門に集合となった。

 一応、身だしなみを確認してから、俺は門の前で待っていた。

 予定していた時間より少し早く来てしまった。


 ……待ちわびているとか思われないだろうか?

 そんなことを考えていると、アリシアが屋敷のほうから歩いてくるのが見えた。

 俺に気付いた彼女は、駆け足気味に近づいてくる。


「ごめん、待たせちゃった?」

「いや、俺が早く来ちゃっただけだから気にしないでくれ。こっちこそ、急かしちゃって悪い」

「ううん、大丈夫だよ。それじゃあ、いこっか」


 アリシアは一応顔を隠すためなのかフード付きの服を身に着けている。

 共についてきたレフィも、メイド服ではなく簡素な服に身を包んでいる。

 少しでも溶け込むためだろう。


「私は少し離れた場所にいますので、お二人でごゆっくりしていてください」


 レフィはそう宣言をすると、その宣言通りすぐに俺たちから離れた。

 最近ではこの状況にも慣れてきたものだ。

 俺はアリシアのほうに手を差し出すと、ぎゅっと握られた。

 柔らかな彼女の感触が手に伝わり、それから俺たちは歩き出す。


「街に行くって言っていたけど、どこか行きたい場所とかあるのか?」


 アリシアが何か目的があって俺を誘ったのではないか?

 そう思っていたので、問いかけるとアリシアはゆっくりと頷いた。


「一つだけ行きたい場所が決まってるんだけど……それは最後でも大丈夫。フェイクはどこか気になってる場所ある?」

「気になってる場所かぁ……港があるんだよな? そっちを見てみたいな」

「それじゃあ、最初はそっちにいこっか」


 アリシアが俺の手を引いて、歩き出す。

 手を繋ぐのもすっかり慣れたものだ。

 アリシアの手を握り返しながら、俺たちは歩いていく。

 アリシアの誘導の元にたどり着いたのは港だ。船の出入りが行われていて、人も多く見える。


 魚がちょうど運び込まれているのを見るに、恐らく漁が終わった後なのだろう。


「ここで、漁とか行ってるんだ」


 俺の疑問を裏付けるように、アリシアがそう言った。


「……なるほどな。だから、新鮮な魚料理が多いんだな」

「うん。それと、あそこで市場も開かれるんだ。朝とかは結構盛んだけど、この時間になると落ち着いてる」


 確かに、アリシアが言うように今の時間はそこまで人はいない。

 港を眺めながら歩いていると、遠くに砂浜が見えた。


「海で泳ぐのはあっちなのか?」

「うん。今日も結構人いるね。近くに見にいってみる?」

「ああ」


 アリシアに頷いて返し、俺たちは砂浜へと向かう。

 近づけば近づくほど、結構な人数の人たちが

 今も遊んでいる人の姿があり、水着姿の人が多くいた。


「へえ、全部終わったらここで泳げるのか?」

「私たちの場合はここで泳ぐと周りの人に注目されちゃうから。別の場所になるんだけどね」

「別の場所?」

「うん。ちょっと離れたあっち側。あっちは貴族が利用できる砂浜だから」


 アリシアがぴっと指さしたほうは、砂浜であるのにまったく人がいなかった。

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