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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第19話



「本当に、アリシアを愛しているんですね」

「愛、もそうだけど……大切な友人との約束もあったからね」

「……友人ですか?」

「うん、アリシアの実母……リーンとのね」


 少しだけ寂しそうに微笑んだオルレーラ様が、ゆっくりと語りだした。


「……雑談、とは言ったけど私が本当に話したかった事はアリシアの実母のことなの。知っておいたほうがいいと思ってね」

「……はい、聞かせてください」


 アリシアを生んだ時には、すでにこの世を去られてしまっていたリーン様。

 アリシアから聞くことは難しい内容だろう。

 ただ、この家のことやアリシアとのこと、それにオルレーラ様のことを知るにも、この話は聞きたかった。


「アリシアの母、リーンはアリシアを生んですぐに亡くなってしまったんだ。私、リーンとはずっと友達で、出産の現場にも駆けつけてね。……そのときに、リーンからアリシアを託されたのよ」

「……そうなんですね」

「それで、ね。まあそういうこともあって、ゴーラルからお願いされて……私は彼と結婚して、アリシアを育てたって感じかな。まあ、でもアリシアはリーンに似て真面目で良い子だから、あんまり手はかからなかったけどね」

「確かに、真面目ですね」

「そうなのよ。フェイクちゃんを見つけてきて、結婚の約束までしたんだし……もうこれで私の役目も終わったかな? って感じで今はちょっとほっとしているんだ」


 ……そう言ってもらえるのは嬉しいことだが、そこまで言われると俺が少し不安にもなってしまう。

 アリシアに並べるほどふさわしい人間なのか、と。


「だから、最後のお仕事としてフェイクちゃんが悪い人じゃないかって観察してるんだけど、レフィの話を聞くに大丈夫そうかな? フェイクちゃんも、アリシアのこと好きみたいだし?」


 ……レフィが俺たちの面倒を見てくれていたのは、そういう理由もあったのか。

 オルレーラ様がじーっとこちらを見てきたので、俺はこくりと頷いた。


「俺は……アリシアを大切に想っています」

「それは、助けてもらったからなの?」

「いえ、そういったものはすべて関係ありません。貴族だからというのも何もありません。何もなくても、俺はアリシアと結婚してもいいというのなら、彼女と結婚したいと思っています」

「そうなんだ」


 オルレーラ様に誠意を見せるために口にした言葉は、すんなりと出てきてくれた。

 オルレーラ様は、それから照れた様子で笑う。


「もう、そんな堂々と言われるとこっちのほうが恥ずかしくなってきちゃったわ」

「す、すみません……」

「さっきの言葉。信じてるからね」

「はい」

「それと、私だけじゃなくてアリシアにも言ってあげてね?」

「え!?」

「頑張ってね!」

「い、いやそれは――」

「男に二言はないよね! それじゃあね!」

 

 嬉しそうに笑ったオルレーラ様はゆっくりと席を立ちあがる。

 俺の言い訳なんて聞くこともせず、オルレーラ様はさっさと部屋を出ていく。

 すっとレフィが頭を下げた後、


「楽しみにしていますね」


 からかうように笑って、一緒に部屋を出て行ってしまった。

 ……な、なんて人たちだ。

 まんまと言わされてしまった俺は、一体どんな状況でアリシアに言えばいいのかと本気で悩んでしまった。




 次の日。

 俺はすぐに鍛冶工房へと向かい、剣を作っていった。

 予定は十本であり、昨日七本作製していたこともあり、すぐに十本揃ってしまった。


 残りは、俺とアリシアの剣か。

 俺はともかく、まずはアリシアの剣から作ろうか。


 アリシア用の剣に使えそうな魔鉄は、すでに準備してあるからな。

 アリシアが朝の訓練で使っていた剣を思い出す。


 レイピアのように細い剣だったよな。

 レイピアは他の剣よりも刺突の面で優れている。斬るよりも、刺す剣だ。

 どちらかといえば、魔物よりも対人で使用されることのほうが多いだろう。


 レイピア自体が、その剣の特性から耐久面に不安があるからだ。

 もちろん、それらは通常のレイピアでの話だ。

 魔鉄の質や、エンチャントの施し方でいくらでも補強は可能になる。


 武器を使っていて一番怖いのは、相手を斬れないではなく、壊れてしまうことだと俺は思っている。

 戦っている途中に自分の剣が折れてしまったらその時点で終わりだ。


 アリシアの剣はとにかく頑丈にしたいと思っている。

 とはいえ、闇雲に魔鉄を合わせてしまえば、重量までも上がってしまう。

 難しいな。


 アリシアの背丈や腕の長さ。それらを思い出しながらレイピアを作っていく。

 基本的には他の剣と同じ工程だ。

 ただ、今回の剣は細く長くを意識している。


 そうして、何度か試行しながらレイピアを完成させた。

 手に持った俺は、それをアリシアの動きを思い出しながら振ってみる。

 軽い。


 別に作っていた剣と軽く打ち合わせてみるが、まったくもって打ち負けない力強さもある。

 ……迷宮攻略用に用意した剣の中で、一番のできかもしれない。


 やっぱり、使用者が分かっているだけあって、ある程度どのような剣にしようかというのが見えていたのが大きいな。


 次の迷宮攻略に参加する人はこの前会議に参加していた二名以外はまだ確定はしていないそうなので、仕方ないが。

 何より、今回の剣たちは迷宮攻略が終わったあとはバーナスト家にて管理する。


 必要なときに兵士に貸し出して使用するという形をとるらしいので、特定の誰かに向けて作ってしまうと、それはそれで問題が出てくる。

 

 アリシアのレイピアを鞘へとしまったが、ずいぶんと無骨な見た目になってしまった。

 俺の作った鞘はあくまで刃を隠すためのものなので、特に何の装飾もないからだろう。


 貴族の方が身に着けるというのなら別の人に装飾をお願いしてもらったほうがいいかもしれない。

 アリシアの剣を机に置き、次に自分の剣について考える。

 サイズに関しては、一般的なロングソードくらいでいいと思っている。

 大剣なんて作ってもまず扱えないだろうし。

 あとはその剣の長さに関しては、何度か作って調整していくしかないだろう。


 とにかく、アリシアを守れるような立派な剣だ。

 それを意識しながら、俺は魔鉄を叩いていった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『アリシアを生んだ時には、すでにこの世を去られてしまっていたリーン様。』     ……(中略)…… 『アリシアの母、リーンはアリシアを生んですぐに亡くなってしまったんだ。』 少し前の…
[気になる点] >とにかく、アリシアを守れるような立派な剣だ。 このフェイクの気持ちが強過ぎて、素材からは想像つかないくらいの無茶苦茶強い伝説クラスの剣ができちゃったりして。
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