表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/202

第17話



 朝食のあと、俺は鍛冶工房へと来ていた。

 さて、早速皆の武器を作っていくとしようか。

 ちなみに、アリシアが確認してくれたが、俺とアリシアの武器も自由に作ってくれて構わないそうだ。

 そのときに、


『それならば、もっと時間に余裕を持たせたほうがいいよな。やはり数日延期に……』


 と言われたそうだが、アリシアがきっぱりと断ったそうだが。


 まずは、ビイレア魔鉄を握る。

 それを溶かしていれるための容器を探していると。


『……』


 その瞬間、声のようなものが聞こえた気がした。

 一瞬、また何か幽霊的な存在かもと思ったのだが、その掠れるような小さな声は、どうやら魔鉄からするようだ。

 

 これは、エスレア魔鉄で体験したときと似たようなものだ。

 声は控えめであり完全に聞き取ることは難しかった。しかし、それでも明らかにいつもとは違う感覚だ。


 まさか、ビイレア魔鉄の中にエスレア魔鉄が混じっていたのだろうか?

 握りしめた魔鉄の内部に秘める魔力を確認してみるが、間違いなくビイレア魔鉄相当のものである。

 

 他の魔鉄もいくつか掴んでみると、時々掠れるような声が確かに聞こえた。

 ……これは、もしかしたら――。

 気になった俺は魔鉄の声を拾い上げていく。


 エスレア魔鉄のときに比べれば主張は弱いが、あのときと同じようになりたい姿を訴えかけてきていた。


 これはもしかしたら、これまで俺が聞き逃していた声なのかもしれない。

 エスレア魔鉄の加工を行ったことで、他の声を聞く力がついた、ということなのだろうか。


 もしかしたら、魔鉄のランクというのは関係なく、すべての魔鉄がそれぞれの思い描く姿というのがあるのかもしれない。 

 そんなこと、これまで考えたこともなかった。


 というか、ほとんどの場合気づくことはできないのだろう。

 ランクの低い魔鉄ならば、こちらが無理やりに歪ませてもエスレア魔鉄のように抵抗されることはない。

 抵抗するだけの力を魔鉄も持っていないからだ。


 だが、それでは魔鉄たちの本来の力を引き出すことはできない。

 それが、同じランクの魔鉄を使っても、仕上がりに差があるという理由なのかもしれない。

 

「……もっと、会話しないといけないな」


 さらに腕の良い鍛冶師になるには、より魔鉄を深く理解する必要がある。


 しばらく魔鉄たちを見ていて分かったのは、小さいが声を持つ魔鉄たち。魔鉄同士の組み合わせも、ただただ同じ魔鉄を溶かして合わせればいいだけじゃないんだ。


 できる限り、似たような考えを持つ魔鉄を組み合わせ、強化していく必要がある。

 だから、声を持つ魔鉄を軸に、剣を作っていくのが良いだろう。

 魔鉄を手に取って、それぞれに分類していく。

 ある程度、魔鉄の量が溜まったところで、鍛冶を開始する。


 まずは魔鉄を溶かし、それを一度型に流し込み、一枚の板を作り上げる。

 それから、熱を込め、魔鉄が望んだ姿になるように叩いていく。

 しばらく同じような作業を繰り返し、剣の形となったところで、後処理を済ませる。

 水で冷やし、風魔法で刃を研ぐ。

 最後に、エンチャントを行い、それで完成だ。


 一本作るのに、それほどの時間はかからなかったな。

 ……魔鉄たちが、俺の想定以上にいう事を聞いてくれたというか、形を変えるのに協力してくれたというか。

 もしかしたら、理想の姿に近づければ近づけるほど、すんなりとその姿になってくれるのか。

 これならば、予定よりも早く終わりそうだ。


 リガードさんがまた泣き叫ぶかもしれないが、仕方ない。

 できあがった剣を握った瞬間、まるで心臓の鼓動のようなものが剣から伝わってきた。

 それは、一瞬だけであり、錯覚なのではないかと思うものであった。


 ……ただ、間違いなくお礼を言われた気配がした。

 魔剣、とまでは言わないがこの剣もそれに並ぶほどのものになってしまったのかもしれない。

 ……使用者に、悪影響がでない程度ならいいんだけどな。


 この剣なら、恐らくだが、エイレア魔鉄製の剣と打ち合っても負けない。

 いや、それどころか打ち負かす可能性さえあるほどだ。



 俺はどんどんと剣を打っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ