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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第13話


 それほどのランクの魔物と戦ったことは、もちろんないのでどの程度の能力を持っているのかは想像もできなかった。

 兵士は手元に持っていた紙をめくり、話を続ける。


「周囲への影響ですが、何体か魔物の進化、変異などを確認しています。まだ土壌などへの影響は出ていないようですが、これまでの似たような状況から考えるに、いずれは影響が出てしまうのではないかと推測されています」


 魔物の進化、変異だけでもそれなりに問題が出てくることが多いのだが、土地にだって影響は出るんだよな。

 土壌が変化し、例えばさらに街のほうにまで影響が出てしまえば、これまで育ってきた作物が育たなくなる可能性があるのはもちろん、最悪人が住めなくなる可能性だってある。


 今回の迷宮は領主的に言えば恐らくハズレの迷宮だ。

 一刻も早く、迷宮攻略をしてしまったほうがいいように感じた。


「そうか。分かった。それで、できればビイレア魔鉄以上の武器が欲しいというわけだな?」

「はい。この街にいる鍛冶師ですとビイレア魔鉄以上の加工を手掛けたものがいなかったので、誰かできる人を連れてきていただければということでしたが……」


 伺うようにこちらを見てくる兵士。

 ……もしかしたら、俺のことも多少は知っていたのかもしれない。

 兵士の視線の意図を汲み取ったのか、リガードさんが口を開いた。


「そこで、フェイクになる。フェイクはかなり優秀な鍛冶師だそうでな。この前のホーンドラゴンの話は覚えているな?」


 あっ、そのことも話していたんだ。

 だとすれば、理解してもらうのは早いか。


「ええ……バーナストの街へと迫っていたホーンドラゴンを、Sランク冒険者に討伐してもらった、と。その際に、エスレア製の剣も製作したとか……」

「ああ。そのときにエスレア魔鉄を加工したのが、フェイクになる」

「……え、ええ話には聞いていましたが……フェイク様。大変失礼な質問になって申し訳ありませんが……ほ、本当に加工できたのですか?」


 兵士が驚いた様子で問いかけてきた。

 それは決して嘲笑などではなく、未知の出来事に遭遇した故の驚きによる問いかけのように聞こえた。

 ……エスレア魔鉄の加工をできる人間は数少ない、とは聞いていたし、俺もそれの加工をできる人に尊敬と驚きの念を抱いていた。

 

 今は、俺もその立場になったのか。

 そう考えたとしても、別に天狗になるつもりはない。

 ……むしろ、そんな立場になったことに対して、本当になってしまっても良いのだろうかという怯えのほうが強いくらいだ。


「一応は。ただ、まだ一度加工しただけだから、そこまで自慢できるものでもないんだ。ああ、でも、エイレア魔鉄までならよく加工しているから今回の仕事に関しては問題なく対応できると思う」


 過剰に期待されても困るため、あくまで自分の能力について正直に伝えた。


「そ、そうでしたか……! 失礼な質問をしてしまい、申し訳ございませんでした!」

「いや、別に大丈夫だ」


 俺の返事を聞いた瞬間、兵士はぱっと目を輝かせた。

 それからはさらに尊敬の視線が強まっていた。


 ……結局、過剰な尊敬を集めてはいないだろうか?

 そんなことを考えていると、リガードさんが口を開いた。


「それで、武器はいくつ必要になるんだ?」


 リガードさんの問いかけに、兵士は慌てた様子で応じた。


「は、はい! 今迷宮攻略に参加予定の人間は十名ほどになりますので、その十名分の武器を用意していただければと思っております」

「そうか。フェイク。すでに素材のすべては懇意にしている鍛冶工房に運んである。そこで鍛冶を行ってもらいたいと思っているが、ビイレア魔鉄製の剣十本の製作にどれほどかかるんだ?」


 十本か。

 これまでのことを考えれば、一日五本程度は作れるだろう。

 二日もあれば余裕だとは思うが、迷宮攻略に使う大事な剣だしな。

 もう少し様子を見たほうがいいかもしれない。


「三日程度あれば、準備できると思います」

「み、三日か」


 俺の返事を聞いた瞬間、リガードさんが怯んだ様子を見せた。

 あ、あれ? もしかして時間かかりすぎか?

 そう思っていると兵士のほうからがたんと音がした。


「み、三日でできあがっちゃうんですか!?」

「あ、ああ……そのくらいで大丈夫だとは思うけど……もっと急いだほうがいいか?」

「い、いえ! その一週間程度は必要かと思いまして……ビイレア魔鉄ともなると、加工するための魔力もかなり必要だと聞きますし……」


 そういえば、そうか。

 鍛冶を行うには当然魔力が必要になる。

 俺も別に特別魔力が多いというわけではないと思っていたが、宮廷での経験故か魔力がなくなって鍛冶やエンチャントができなくなるということはなかった。


 魔力の総量が増えたのは当然だが、より効率良く魔力を変換する技術が身についたというか……そうしないと仕事が終わらなかったというか……。


 宮廷にいたおかげで、俺の鍛冶能力もちゃんと成長していたのだろうか?

 もしかしたら、あのスパルタを通り越した教育が、意味あったのかも。

 うーん、あんまり素直に感謝の気持ちは湧かない。

 でもまあ、結果的に俺の成長になったのだし、感謝しておこうか。一応。


「俺は、大丈夫だ。魔力が多いほうなんだ」


 そう言っておいたほうが、兵士も納得しやすいだろう。

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