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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第5話


 それから二日が経過し、俺たちがリールナムへと出発することになった。

 すでに準備は終えているので、出発の日になったからといって別段慌てるようなことは何もなかった。


 出発の日の朝、俺は最終確認を行っていた。

 といっても、俺は一切の荷物を持っていない。


 初めは着替えとかも必要なのではと思ったが、その心配は必要ない。

 リールナムの屋敷にはすでに俺のサイズの服などは揃っているそうだ。

 だから、本当に俺が個人で持ちこみたいものなどがない限り、用意するものは何もないというわけだった。


 これが貴族か、と驚かされたものだ。

 そもそも必要だと思うものがあれば、使用人たちが用意してくれる。

 そういうわけで、一応個人的に少額ではあるが金を用意したくらいで、俺は特に何も持つということはなかった。


 準備を終えた俺が部屋を出ると、使用人が待機していた。

 一礼の後、口を開いた。


「フェイク様。もうご準備はよろしいでしょうか?」

「あ、ああ……待たせたか?」

「いえ、そんなことはございません。庭に馬車を用意してありますので、どうぞこちらへ」


 にこりと微笑んで、使用人が先を行く。

 ……こういう特別扱いというか、貴族なら普通の扱われ方なのだが、何度経験しても慣れる気がしないんだよなぁ。


 ぺこぺこされると、こちらもぺこぺこしそうになってしまうのだ。

 今も下げかけた頭をなんとか押さえ、使用人の後ろをついていき、俺は庭へと出た。


 庭にはすでに俺たちが乗りこむための馬車が用意されている。

 馬車の近くで待機していたアリシアがこちらに気づくと、とてとてと歩いてきた。


 アリシアはいつもよりも動きやすそうな格好をしている。旅用のものだろう。

 俺の前で足を止めたアリシアは、微笑を浮かべた。 


「フェイク、昨日はしっかり眠れた?」

「問題ないよ。アリシアこそ大丈夫か?」

「うん、私は大丈夫」


 そう微笑むアリシアの表情に、嘘は混じってはいない。

 アリシアとともにしばらく待機していると、ゴーラル様がやってきた。

 こちらへとやってきた彼は、いつもの鋭い眼光で俺たちを射抜いてきた。


「二人とも、頼んだぞ」

「はい、お任せください」


 俺はゴーラル様にしっかりと頷いた。

 アリシアに怪我がないよう、俺が頑張らなければならない。

 ゴーラル様との会話を最後に、俺たちは馬車へと乗りこんだ。

 俺たちとともにレフィが乗りこみ、さらに二名の兵士も同行する。

 俺たちの護衛だ。さらに、俺たちの馬車を守るように二台ほど馬車が共にすることになっている。

 

 旅の途中に魔物などと交戦する可能性もあるからな。

 扉が閉まり、しばらくしてから馬のいななきが響くとともにゆっくりと馬車が動き始めた。

 窓から外を見ると、段々と屋敷から離れていくのが見えた。

 しばらく街中をゆっくりと進み、やがて街の外へと出ると、馬車の速度がぐんぐんと上がっていく。


 窓からは涼しい風が入り込み、頬を撫でる。

 こうして街の外に出るのは随分と久しぶりのことになるな。

 ……一応、ホーンドラゴンと戦ったときも外には出たけど、それを実感できるほどの余裕はなかったからな。

 そんな風に外を眺めていると、隣に座っていたアリシアが、


「こうして一緒に馬車に乗るのって久しぶりだね」


 ぽつりと呟くように言った。

 そちらに顔を向けると、アリシアと目が合う。それだけで、表情がさらに明るくなったように見えたのは俺の気のせいでなければ嬉しい。


 アリシアの表情につられて、俺も口元が緩くなる。


「前は……俺を宮廷から連れ出してくれたときだっけ?」

「うん、そうだね。あのときと比べて、フェイクの表情も元気に見えるね」


 あのときの俺、そんなにだっただろうか?

 まあ、今はアリシアと一緒にいるおかげでもある。

 昔のことを少し話しながらも、俺が気になっていたのはリールナムのことだった。

 話に一区切りがついたタイミングで、俺はその話題を切り出した。


「そういえば、結局リールナムの迷宮はどうするんだ?」


 あれからどうするのかについてを、俺は聞いていなかった。

 ここ最近は、鍛冶工房にこもり、剣の製作を行っていたしな。

 戻ってきてからのために少しでもストックを用意しておきたかったからだ。

 そのため、リールナムの迷宮をどうするのかや、リールナムについてからどのように動くのかなどは聞いていなかった。


「一応、今は破壊する方向で話は進んでるみたい」

「そうなんだな。何か悪影響があったのか?」

「うん。やっぱり、周囲の魔物が変異したみたい。別にそこまで危険ってわけでもないけど、今後もっと凶悪化したら大変だからね」


 そうなると、確かに破壊したほうが良さそうだ。

 そうなると当然不安はアリシアに向けられる。


「なるほどなぁ。ってことは、やっぱりアリシアも迷宮に入るんだよな?」

「回復魔法を使えるのは私くらいみたいだからね。探せば、冒険者にも依頼を出せるかもしれないけど……そこまでの迷宮じゃないし」


 回復魔法が使える、か。

 公爵家だし依頼をすればいくらでも来てはくれるだろう。

 少なくとも、金銭面での折り合いがつかないとかではないだろう。

 今こうしている間にも別の土地ではもっと危険な魔物と戦っている人もいるはずだ。

 それほど難易度の高くない迷宮のために、彼らを呼びつけるのは現実的ではない。

 

「……そうか。アリシアは、結構戦えるのか?」

「それなりには。迷宮にはランクがあるんだけど、それは知っている?」

「まあ、一応は」


 冒険者のランクと同じように、F、E、D、C、B、A、Sのランク分けがされている。

 Sランクに近づくほど高難易度の迷宮というわけだ。

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