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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第4話



「この街の話題の多くはキミのことでいっぱいだからね。意識して情報を集めようとすればすぐにたくさんの情報が集まるものさ」

「そ、そんなにか?」

「ああ。以前、ホーンドラゴンを討伐しただろう?」

「討伐したのは、俺じゃなくてベルティっていうSランク冒険者だけどな」

「そういえば、そんな話も聞いたね。そのことを含め、キミのことは色々と聞いているよ。別の街にいても、聞こえてくるほどなんだからね」

「……別の街でも? 変なこと言われていないか?」


 噂というのは尾ひれがつきやすい。

 先ほどのレベルトの発言からして、まるで俺が討伐したかのような変な噂になっていなければ良いのだが。


「大丈夫じゃないかな? ただ、この前参加したパーティに高ランク冒険者も呼んでいてね。その中にいた先程名前を挙げたベルティという冒険者がキミの造った剣を自慢していたね。僕も羨ましいと思ったよ!」

「……ベルティが、か」


 彼女が楽しそうに話している姿は容易に想像できた。

 でも、パーティに参加しているという姿は……一瞬想像が難しいとも思ったが、彼女の食欲を考えればありえない話でもないか。


 食事を伴うパーティなどもある。

 恐らくだがベルティはそれを目的に参加していたはずだ。

 周りの貴族たちはきっとSランク冒険者との繋がりを得るために近づいていたと思うけど。


「そうそう。エスレア魔鉄を加工できる鍛冶師なんてほとんどいないからね。今後、貴族の依頼もどんどん増えるかもしれないね」

「……それはまあいいんだけどさ」


 今すぐには受けられないが、仕事が増えること自体は良いことだ。

 周りの貴族に認められれば、それだけバーナスト家のためにも繋がるだろうし。


 レベルトと店の前で話していたが、あまり外で話しているのも悪いと思い、彼を中へと案内する。

 お客様が帰った後の店内はすっかり静かになっていた。

 武器などは一応まだ並べてはいるが、俺が戻ってくるまで店を開く予定はない。

 並べられている商品へと顔を近づけたレベルトは、じーと武器を眺めながら口を開いた。


「そういえば、リールナムにはアリシア様も一緒に行くのかい?」

「まあ、な。なんでも回復魔法の使い手がいないっていうんで迷宮の攻略に同行するかもしれないんだ」


 まだ迷宮を攻略するかどうかが確定していないため、どうなるかは分からないが。

 俺がそういうと、レベルトはじっとこちらを見てきた。


「ややっ。不安そうな顔だね」

「……そりゃあそうだろ? 魔物だらけの迷宮に婚約者が行くってなったら不安になるんじゃないか?」


 極めて俺の感覚は普通だと思うが。

 しかし、レベルトは腕を組んで考えていた。


「うーん、そういうものなのかね? 僕は特にそういう人はいないからよく分からないが……まあ、でも、迷宮の破壊なんてのは貴族としてよくあることさ。領民に対して、仕事してますアピールに使えるからね」

「領民に対して、か。そういう見方もあるんだな」


 危険の排除に積極的な領主は、市民から信頼される、といいたいのかもしれない。


「そうさ。キミだって場合によっては、参加することも今後増えてくるんじゃないか」

「まあ、今回もついていく可能性はあるみたいだけど、今後も増えるのか?」

「鍛冶師としてとはいえ、婿入りをするのだから可能性はあるだろうさ。キミも貴族の仲間なんだからね。バーナスト家の管理する領地は大きい。今後さらに街や村を作るとなれば、そこの代官として派遣される場合もあるかもしれないし、迷宮の発生に関わることもあるかもしれないしな」


 さ、さすがにそこまでのこととなると俺にはできないと思うが。

 俺の表情を見てか、レベルトは苦笑しながら背中を叩いてきた。


「まあ、そう心配しなくとも大丈夫だろうさ。キミの場合はアリシア様が派遣され、あくまでフェイクは補助になることのほうが多いとは思うけどね」


 レベルトの言葉に、頷くしかない。

 もしも、人手が足りなければ俺が何かしなければならないことも出てくるだろう。


 迷宮の発生や、迷宮についてなどは分からないことが多くある。

 発生に関しては本当にランダムであるため、レベルトの言うとおり、領地が広ければそれだけ可能性が高くなるのは考えられなくもないわけだしな……。

 

 平民でいたときは、貴族というのはそこまで忙しいものではない、なんて考えていたけど、内側に入ってみると色々大変なんだなぁ、と思っていた。


 領主などはどんな仕事をしているか見えにくいから、何をしてくれているのか分からないんだよな。

 だからこそ、分かりやすい迷宮攻略などに貴族も参加するのかもしれない。

 それから、ずいっとレベルトが顔を寄せてきた。


「リールナムといえば、海もあったね、海も」

「……そうだな」


 どこか声がウキウキとした様子だ。

 別にレベルトが行くわけではないだろうに。


「アリシア様の水着姿とか、見られるんじゃないか?」

「それは……まあ、そうだな」


 何もなく、無事問題が解決すれば後は自由にしていいとも言われている。

 なるべく早くバーナストの街に戻ってくる必要もあるのかもしれないが、久しぶりにゆっくりできるのだし、アリシアとのんびりして来ようとも思っていた。

 アリシアと海で一緒に遊べるだろうしな。

 レベルトが言うように水着姿を見ることだって……。


 アリシアはどんな水着をつけるのだろうか? そんな姿を想像してしまい、少し頬が熱くなる。


「おや、妄想しているね?」

「し、してないって」


 慌てて否定する。

 明らかに、図星を突かれた人の反応であり、レベルトもそれをあっさりと見破ったようで笑っている。


「はは、顔が赤いぞ。まあ、別に妄想などしなくとも、いずれ現実になるんだからいいじゃないか。あまり難しく考えず、楽しいことも考えていくといいさ」


 とん、とレベルトは俺の背中を押した。

 振り返ると、レベルトはひらひらと手を振っていた。


「それじゃあ、僕はそろそろ戻るよ。邪魔したね」

「……ああ、また今度な」

「うん。リールナムでの旅のことでもまた聞かせてくれ。特に海でのこととかな」


 からかうように言って、レベルトはそのまま去っていった。

 ……まったく。

 俺は小さくため息をつきながらも、レベルトの言っていたことを考えてしまう。

 海、か。

 アリシアの姿を色々と想像してしまったあと、慌てて首を横に振った。


 邪念を追い出しながら、俺は鍛冶工房の奥へと向かった。

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