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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第三章

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第3話



「いや、でも……」

「私もそれなりに戦えるし、それに迷宮自体そこまで強い魔物はいないみたいだし」

「そ、そうは言っても」


 万が一、という可能性はいくらでもありうる。

 不安を拭いきれない俺の頬を、アリシアが突いてきた。


「フェイク、大丈夫だから。ね?」


 ぐりぐりと、痛くはない程度に指を押し付けてくる。

 微笑む彼女に何も言えなくなってしまい、俺はゆっくりと頷くしかなかった。


「まあ、そういうならいいけど」

「それよりも、私はフェイクも心配」

「え、俺?」

「うん。だって。フェイクも一緒に迷宮入るでしょ?」

「そりゃあな」


 俺が今回リールナムに派遣される理由の最大は、それだった。

 迷宮内の魔物は魔力でできていて、エンチャントがより影響を受けやすいそうだ。

 気を付けていても、エンチャントが破損して剣の能力が数段落ちてしまうこともある。

 だから、鍛冶師を一名以上同行させることで、攻略をより簡単にするというわけだ。


 ただし、もちろん鍛冶師が自衛もできなければ足手まといになってしまうため、そこは迷宮攻略する上での悩みの種だそうだ。

 荷物は増えるが、複数の武器を持っていくか、鍛冶師だけを連れていくか。

 まあまだ、迷宮攻略が確定したわけではないが、その可能性があるため、俺とアリシアも一緒に向かうというわけだ。


「フェイクさんなら大丈夫ですって。だって、この前も強かったですし! ホーンドラゴンもぼこしたって聞きましたよ!」


 イヴァスがそういうと、アリシアがぴくりと眉尻を上げる。

 そして、ジトーっとした目をこちらに向けてきた。


「そういえばフェイク。そのときも凄い無茶をしたって」

「……そ、その話は別にもう終わったことなんだし、はい、終了。イヴァスももうその話はいいだろ?」

「えー、もっと聞きたいんですけど……あっ、でも他にも気になることありました! 確か、リールナムって海が近くにありましたよね?」


 話を仕切り直すように手を合わせたイヴァスがそういうと、アリシアはまだ何か言いたげではあったがイヴァスの話題に乗ってくれた。


「うん。全部終わったら、少し遊んでくる予定」

「うわー、海いいなぁ! 僕も行きたいです! あっ、でもまだちょっと寒くないですか?」


 確かに、最近ジメジメとしてはきたが夏にはまだ早い。

 海に入るとなると寒いと感じるとは思うのだが、アリシアは首を横に振った。


「リールナム周辺は少し気温が高い。昔、迷宮が発生したのが原因なんだけど、ね」


 迷宮というのはそういう部分でも問題があるのか。


「あっ、そうなんですね! いいなぁ、僕も夏に向けてリールナムのほうで受けられる依頼探してみよっと!」


 海、かあ。

 確かに、イヴァスが言うように悲観的なことばかりを考えていても仕方ない、よな。

 イヴァスとアリシアの話す姿に、俺もひとまず不安な考えを拭い去ることにした。




 一日鍛冶工房を開き、これまでに知り合った人たちには俺の事情についての説明を終えた。

 これでしばらくこの工房に来ることもなくなってしまうと思うと、少しばかりの寂しさを感じてしまった。

 

 いつも以上に念入りに戸締りをし、諸事情によりしばらく店を閉める旨の書かれた紙を入り口に張っていると、


「やあ、フェイク」


 後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 振り返ると、そこにいたのはレベルトだった。

 いつも通りの服装で、最低限の護衛を携えてこそいたが俺に対しては無警戒の様子で近づいてきた。


「レベルト? どうしたんだ?」


 彼が来る予定は聞いていなかったので、驚きながら問いかける。

 不思議に思っていると、彼はにやり、と笑った、


「いやね。キミがリールナムに行くと聞いてね。挨拶くらいはしておこうかと思ったのさ」


 まさか、レベルトまで知っていたとは。

 レベルトには、俺がリールナムに行くことは伝えていないのだが、どこから仕入れてきた情報なのやら。


 そもそも、彼が来るのは不定期であったため、わざわざ伝えるということも頭の中にはなかった。


「それでか。それにしても、俺がリールナムに行くってことどこから聞いたんだ?」


 世間話のついで程度に気になったので聞いてみた。

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