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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第二章

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第44話



 私が与えられた客室へと向かい、一つ息を吐いた。

 それから天井を見上げ、背中を伸ばしていると、部屋がノックされた。


「ベルティさん……ちょっといいですか?」


 私の部屋にやってきたのは御者の子だ。

 彼女も一緒に泊めてもらっているが、食事を一緒にとることはない。

 別にいいと思うんだけど、「そんなの恐れ多くてできません!」と断っている。

 彼女の表情はどこか深刻そうだ。


「何よ。何かあったの?」

「……だ、大丈夫なんです? 明日にも、この街にホーンドラゴンが到着するんじゃないかって……言われていますよね?」

「えっ、そうだったっけ?」

「そうですよ! すっとぼけないでください!」


 もちろん、私だってそれは知っている。

 舌を出して誤魔化すように笑う。


 今日の夕食のとき、ゴーラル様がフェイクに何か言いたげだったのもそのことだと思う。

 ホーンドラゴンはおそらく明日この街へと到達する。

 それも、魔物たちを引き連れて、街へと向かってきている。


 さすが他とは一線を画する魔物なだけあると思う。ホーンドラゴンは魔物たちを従えるだけの力を持っている。

 到着はおそらく明日なんじゃないかな? って感じ。

 すでに冒険者や街の兵士、騎士たちにも迎え撃つための指令は出ている。

 街の外には今も魔法使いたちが防壁を作っていることだろう。


 私の調子が気に食わないのか、彼女はむきーっと声をあげる。


「大丈夫なんですか!? もう鍛冶は終わりそうなんですよね!?」

「うん」

「あとどのくらいですか!?」

「分からないけど、大丈夫じゃない?」

「伝えたんですよね!? ホーンドラゴンが迫ってきてるの! もう、死ぬ気で作ってもらわないと!」

「言ってない」

「なんで!?」

「だって、伝えて焦って変なのできたら意味ないでしょ? そんなの無駄よ無駄」

「む、無駄って……! 焦って作ってもらわないとだめでしょ!?」


 彼女の言葉にも納得できる部分はある。

 でも、私は伝えなくても大丈夫だとも思っている。


「フェイクは十分自分を追い込んで鍛冶をしてくれてるわ。これ以上わざわざ焦らせる必要はないの」

「じゃ、じゃあホーンドラゴンが来たらどうするんですか!?」

「私が足止めすればいいのよ。向こうだってずっと戦い続けられるわけじゃないんだから、撃退したら問題ないでしょ?」

「そ、それは確かにそうかもしれませんが……で、でもそれにしたっていつまでもつか……」

「大丈夫よ。フェイクならもう完成させてくれるわよ。だからそんな深刻そうな顔しないのよ」

「な、なんでわかるんですかぁ!」

「ふふ、根拠を教えてほしいかしら?」

「は、はい!」

「勘」

「……あっ、ははは。私の命日は近いですね……」


 御者は乾いた笑いを浮かべていた。

 そこで部屋がノックされ、私の部屋にデザートのおにぎりが運ばれてきた。

 食堂のコックに頼んでいて、いつもこの時間に持ってきてもらっていた。


「ほら、ごはんでも食べて落ち着きなさいよ」

「さっき食べましたよ!」

「デザートは別腹でしょ?」

「これ主食です!」


 御者はそう叫ぶと、部屋を出て行った。




 次の日。

 俺は朝早くから鍛冶工房へと引きこもり、鍛冶を行っていた。

 あと、少しでできるからな。

 

 今日ばかりは、一日工房にこもるつもりだ。

 ここまでくればやることは同じ。

 早く完成させたい。

 その気持ちを胸に、エスレア魔鉄の加工を開始する。


 昨日同様、エスレア魔鉄との対話だ。


「……なるほどな。それなら、これはどうだ?」


 エスレア魔鉄と話し、納得がいったところで魔力情報の書き換えを行う。

 これが結構大変だ。本当にこいつはわがままだ。

 それに、要求される技術も非常に高いものばかり。

 エスレア魔鉄の加工が難しいと言われるのは、こういう部分なのかもしれない。

 俺も、いつ技術的に足りない要求をされるかひやひやしながら加工している。

 今のところは、何とかなっている。

 この先も、順調にいってくれればいいのだが。

 作業は非常に大変ではあるがこうしてエスレア魔鉄と対話していると、次第に可愛くも見えてくる。


 手のかかる子ほど可愛いというやつなのかもしれない。

 鉄板へと熱を伝え、小槌をたたきつける。

 とはいえ、この力加減も難しい。あんまり強くするとすぐに怒ってくる。

 コツコツと確実に剣へと形を整え、魔力情報も修正していく。


「じゃあ、ここはこの強化にするから、ここは俺の意見を通してくれないか?」


 魔力情報をつたって、俺はエスレア魔鉄にお願いをする。

 お互いに譲れる部分、譲れない部分というものがある。

 俺が最重要視しているのは重さと長さ。

 

 これに関しては、持ち手であるベルティがいる関係上譲れない。

 エスレア魔鉄も誇りを持っているようで、色々と注文をつけてくる。

 その願いを聞きながら、ようやく形の調整と魔力情報の修正が終わった。


 時間は……夕方だった。

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