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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第二章

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第41話 アリシア視点


 フェイクと話を終えた私は、すぐに書庫へと向かった。

 それからやることは、鍛冶についての記録を探すことだった。

 書庫は大雑把にこそ管理されていたけど、

 歴代の当主たちが、趣味で集めた本なども多くある。


 なんでこんな本を買ったんだろう? なんてものもたくさんあった。

 私が探しているのはエスレア魔鉄の加工に関する本。

 この書庫のどこかにそれがあればいいんだけど……。


「アリシア様。そろそろ一度休憩を挟んだらどうでしょうか?」


 一緒に手伝ってくれているレフィの声が聞こえた。


「そうですよ! ここはオレたちに任せてください!」


 レフィだけじゃない。カプリたちもここにはいる。

 皆、自主的に書庫に来てくれて、こうして手伝ってくれていた。

 ……今は、私の考えをお父さんにも話して私がいない時間帯では、手の空いている人たちにお願いして書庫を探してもらっているほどだった。


「フェイクやみんなが頑張ってるのに、私だけ休むわけにはいかないから」


 レフィやカプリたちに任せて、それで見つかって……渡すのが私ってそれは絶対嫌だった。

 なにより、フェイクは今だって頑張ってくれてる。

 ……それに、元はといえばフェイクが頑張ってくれているのは私のためでもあるんだ。

 だから、私だってできることを頑張りたい。


 それからも必死に書庫を探していると、書庫の扉が開く音が聞こえた。


「アリシア様ー、手伝いに来たわよ」

「べ、ベルティ? でも、大丈夫なの……? 昼は……ホーンドラゴンと戦ってきたって……」

「うん。別にあのくらい余裕だったわ。ちょーっとお腹が空いただけだわ。それに、ちょっとは進行方向も変わったし、まだまだ時間的にも大丈夫よ」

「……ありがとう。……ホーンドラゴンは、こっちに向かってきてるんだよね?」


 夕食の席で、お父さんがフェイクに話そうか迷っていたことだった。

 ……ホーンドラゴンは、今この街へと向かって確実に進んでいる。

 ベルティが監視している限りでは、道中にいる魔物たちを従え、ずんずんと進んできているそうだ。


「大丈夫よ。いざとなったら私がいるんだしね。まっかせなさーい!」


 ばしんと胸を叩いて、ベルティは笑っていたけど……かなり無茶な戦いを繰り返しているとも聞いている。


「ベルティは、休んでて」

「大丈夫よ。人手はいくらあっても困らないでしょ? それに、私は元気なんだから」

「でも……」

「いいから。手伝わせてよ。元々は私が無茶なお願いしているんだしね」


 そうウィンクして、彼女はテーブルに並んでいる資料へと目を向けた。

 そこには、書庫内で調べた箇所にバツ印が入っている。

 ……ついでにいえば、今レフィが本の捜索を行いながら同時に整理整頓も行っている。


 長年、埃を払う程度の掃除しかされてこなかった書庫が、少しずつ綺麗になっている状況だ。

 ベルティが本を取り出し、パラパラと開いて眺めていく。

 ……本の間に変なメモなども残されていることがあり、本は中身をしっかり確認していく必要がある。

 私も本の確認作業を再開すると、


「本当にフェイクのこと好きなのねアリシア様」

「大好き」


 ベルティの言葉に、私は堂々と答えた。少し恥ずかしかったけど、本人がいないのならこのくらいは言える。

 ちらと見ると、ベルティはにやぁ、とからかうように目を細める。


「もう熱々ね。見ていて羨ましいわ、本当に」

「……ベルティはそういう人いないの?」


 これ以上この話題を続けられても困るので、代わりに質問する。


「うーん、いないわね。私は自由に生きられて、美味しいものをたくさん食べられればそれでいいし! しいてあげるなら、食事が恋人よ!」

「仕事じゃないんだ」

「仕事は美味しいものを食べるついでだから!」

「ついででホーンドラゴンも相手するんだ……」

「ホーンドラゴンのお肉って美味しそうよね!」


 きらきらと目を輝かせるベルティに、私は苦笑する。

 ……ベルティもフェイクも、中身はちょっと違うけど、楽しそうに仕事をしている。

 それがちょっと羨ましい。


「どうしたの、アリシア様?」

「ちょっと、その。眩しくて」

「え? 照明? ちょっと暗くない?」

「物理的にじゃなくて。……ベルティは、立派な夢を持ってるから」


 私には、そういうものがなかった。

 ……一生懸命で夢を持っている人たちを見ると、凄いなって思う。

 そして……だから。

 私はフェイクの夢を支えたいと思った。私にはないものだから……せめて、それを支えてあげたいって。

 少しだけ、心が重たくなってしまった。

 昔から、私は自分に自信が持てない。今だって、フェイクの隣にいてふさわしいのかなって不安になることが多い。


「え? アリシア様夢ないの?」

「……うん」

「フェイク様と結婚して幸せな日常を送ることじゃないの?」

「……え? そ、それは夢とは少し違うっていうか……よ、欲?」

「私だって食欲よ! それが夢でいいんじゃないの? 私からしたら立派で凄い夢だと思うわよ?」

「そ、そうなのかな?」


 私が首を傾げていると、ベルティはいつもの笑顔で頷いた。


「ええ、ばっちり立派な夢よ。大事にして、頑張ってね」

「……う、うん」

「結婚するときは教えてね。私も出来れば参加したいし!」

「わ、分かった」

「何か美味しいものとかも準備されるのよね!? 楽しみだわ!」

「……目的が変わってる」

「あはは、冗談よ冗談。楽しみにしてるわね」

「……ありがと」


 朗らかに笑うベルティに、私も笑みを返す。

 私は書庫の本を開き、片っ端から情報を探していった。


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